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『キリスト教国の7人の勇士たち』第1章(続き)

こんにちは。
前回分をお読みくださった皆様、本当にありがとうございます。

Noteのことをいろいろ教えてくれる友人がアドバイスしてくれたので、次回からタイトルを変更させていただこうと思います。投稿開始早々なのに変更なんて、1回目をお読みくださった方々には失礼だし申し訳ないし・・・と迷ったのですが、変えるなら早めがいいのかな、と思った次第です。次回から『7人の聖勇士の物語』というタイトルにさせていただきます。本当に申し訳ありません。

記事の書き方とか投稿のしかたもまだ不慣れで、上の友人をはじめnoteの先輩方に教えていただきながら、少しずつ上達できたら、と思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

私は複数の非常勤の仕事を掛け持ちして生活費を得ています。
数年前までは毎日仕事をしていましたが、勤務先が1つを除いて自宅から遠く、片道2時間半以上の所ばかりなので、毎日移動で消耗し、自分の時間が持てない日々でした。それで、毎年少しずつ仕事を減らしていき、今では数年前の約半分になりました。

実働時間が短いので、頂けるお給料は決して多くありません。仕事を半分に減らしたので、お給料も当然半分になりました。貯金もあまり無いので、出費を減らすことを常に考えています。収入は減ったけれど、その分自由な時間は増えたので、上手に節約しながら、物語を読むなど好きなことを楽しんでいきたいと思います。


それでは、『7人の聖勇士の物語』(原典:R.ジョンソン原作、W.H.キングストン編、原題The Seven Champions of Christendom、直訳すれば『キリスト教国の7人の勇士たち』)の続きをどうぞ。


『7人の聖勇士の物語』

第1章 聖ジョージの誕生(続き)

幼な子にはジョージという名前が与えられました。それからは、家令卿は国事の煩わしさから退き、ジョージの養育に考えをめぐらせ、注意を傾けました。彼は、ジョージのおもりをする3人の乳母を選任しましたが、名前はそれぞれ、「プルーデンス(思慮分別)」、「ファームネス(志操堅固)」、「ジェントルネス(品性高雅)」というのでした。一人がジョージの食事を用意し、次の者がそれを食べさせ、最後の一人がジョージをあやして寝かせつけました。何もかもうまくいく筈だったのですが、あいにく、もう一人乳母が必要だと幼子の祖父が言いだしまして、「ケアレスネス(のんびり屋、うっかり屋)」という名の乳母がこの家に仕えることとなりました。

念のため申し上げますと、邪悪な魔女カリブは、洞窟へやってきて魔法の角笛をあんなに激しく吹き鳴らしたのが誰なのかを、よくわかっておりました。アルバート卿が言った言葉や卿があれほど次から次へと投げかけた侮辱的な言葉は、残らず彼女に聞かれていたのです。そのため、カリブはその邪悪な心の中で復讐の思いを養っており、それを果たす都合の良い機会を待っていたのでした。ああ、怒りよ、ああ、癇癪よ、お前達はなんと分別がないのでしょう!賢い人をなんと愚かにしてしまうことでしょう!復讐よ、恨みよ、このあとすぐにわかるように、お前達も自ら仕掛けた罠にはまるのです。

邪悪なカリブは好機を待ちました。彼女は若君が生まれたことや、父君が若君をどれほど溺愛していることを知っていましたので、若君をさらってやろうと決めました。しかし、おもり役に任じられた3人の乳母のことを聞くと、とてもうまくいきそうもないと思いました。若君はすくすく育ち、とても元気でした。一日ごとにますます美しくなり、日々、高貴で勇敢な心の持ち主であることを示しました。本当に、若君は父上の誇りでした。コヴェントリー中の人々の称賛を受けるにふさわしい貴公子だったのです。しかし、「ケアレスネス」が乳母に加わったことを知ると、カリブは直ちに海岸へと急ぎました。そして、巨大な卵の殻(それは怪鳥ロックの卵の殻でした)に乗込むと、イングランドの岸辺を指して船出しました。彼女は海上をつむじ風のように疾走し、通常のどんな船よりも速く進んであっという間に陸地に到達しました。そして、コヴェントリーの近くまでやって来ると、深い森に身を隠し、若君にとびかかって連れ去るチャンスを窺いました。

しかし、カリブは長い間待たねばなりませんでした。若君の外出には「プルーデンス」が付き添うこともあれば、「ジェントルネス」や「ファームネス」がお供することもありましたが、3名ともとても注意深く若君をお守りするものですから、カリブには目的を達する機会がなかったのです。しかし、とうとう運命の日がやってきました。「ケアレスネス」が若君のお供をする番になったのです。カリブは直ちに美しい蝶に変身しました。若君はひらひら舞う蝶をビロードの帽子でつかまえようと駆け出しました。「ケアレスネス」は土手に座って眠り込んでいました。すぐにカリブは若君を森の奥まった所へと誘い込み、そして若君をつかまえました。若君は叫び声をあげましたが、カリブは魔法で作った10頭の燃えさかる炎の馬に引かせた戦車に若君を乗せて稲妻のように駆け去り、海岸に到着するとあの怪鳥ロックの卵の殻に乗り込みました。それは来たときのようにつむじ風のように旋回しながら海原を疾走しました。彼女は捕虜の若君を連れて旅を続け、「黒い森」の魔法の洞窟へと戻ってきました。カリブが銀の杖で触れると巨大な門が左右に開きました。そこには、若君がこれまで想像したこともないような素晴らしいものがたくさんありました。それは美しいコヴェントリーの町で今まで見たあらゆるものを凌ぐ素晴らしさでした。でも、若君はすぐにそれらに飽きてしまい、愛する父君と手厚く世話をしてくれる乳母達のもとへ帰りたいと願いました。やがて若君は、自分が囚われの身の上であることに気付きました。洞窟から逃げ出す出口はどこにも見つけることができず、がっしりとした門はひとたび入った者が外に出ることを妨げたのでした。

邪悪なカリブは若君の悲しみを眺め、彼の父君がもっと悲しんでいることを知って、復讐をとげたことを喜びました。カリブには彼女の意のままに働く大勢の手下がおりました。その中に、不格好で醜い侏儒(こびと)が一人おりました。この侏儒が若君の世話を任されたのですが、他にすることがない時はいつでも若君を殴ったりいじめたりするようにと命じられておりました。高貴な若君はあらゆる辱めを平静に機嫌良く我慢し、復讐心を抱くどころか、哀れな侏儒にいつでも親切にしました。というのも、侏儒自身、邪悪なカリブからとりわけひどい扱いを受けていたからです。侏儒の名前は「ねこ背」といいました。哀れな「ねこ背」の体は、怒り狂ったカリブにひどくなぐられていつも痣だらけでしたし、食べ物も休息も満足に与えられていなかったので頬はこけてやつれていました。

そんなある日、カリブが留守のとき、「ねこ背」は若君に話しかけました。
「実はね、親切な坊ちゃん、私は妖精なのですが、姿を変えているのです。私の魔力は残忍なカリブほど強くはないのですが、それでも、カリブのすることを妨げることはできます。あなたは優しくて気立てが良く、カリブの命令とはいえ私があなたに加えた無礼を許して下さいましたので、私は心から感銘を受けました。これからは力の限りあなたにお仕えすることを誓います。このことは私達二人の秘密にしてカリブには知られないようにしましょう。辛抱強く好機を待ち、様子を見ていましょう。」

若君は妖精に感謝し、ここから逃げ出すことができるかも、と望みを取り戻しました。でも、長い間待たねばなりませんでした。その間、カリブが留守のときはいつも、見かけは侏儒の妖精は、若君が立派な騎士に成長するよう、騎士にふさわしいあらゆるわざを教えました。当時はあまりはやらなかった書物から学問を学ぶことも、決してないがしろにされることはありませんでした。妖精は輝く剣を若君に握らせ、それを誰も抵抗できないほどの力で振るう方法を教えました。若君は、人間が跨がったことがない炎の馬に乗り、手に槍をもって、幻の騎士達を相手に槍試合をすることを教えられ、激戦の末いつも幻の騎士達を倒しました。その結果、若君が成人する頃には、ヨーロッパ中にこれほど鍛え上げられた騎士はおりませんでしたし、美徳でも武勇でも若君を凌ぐ者は誰もおりませんでした。

一方、家令卿は将来有望なご子息を失ったことを激しく嘆いていました。若君を見つけるため世界中に使者を送りましたが、何の首尾もありませんでした。とうとう、「使者を遣るより自ら赴け」という古い諺を思い出し、自ら探しに出かける決心をしました。黄金や宝石を携え、忠実な従者ド・フィスティカフただ一人をお供に連れて、家令卿は出発しました。あちらこちらさまよっているうちに何年も経ち、卿の髪は銀髪に、髭は薊の綿毛のようになりました。卿の心臓は弱り、かつては強靱だった膝は震えていました。そんなある晩、卿はボヘミアのとある修道院の門前にたどり着きました。従者が呼び鈴を鳴らして修道僧に助けを求める暇もなく、卿はその場に崩れるように倒れました。門番がドアを開けると、イングランドの家令卿は最期の息を引取り、哀れなド・フィスティカフは敬愛する主人の死を悲しみ、異国の地でこんなふうに一人残された我が身の辛い運命を嘆きました。修道僧達はアルバート卿をすぐ近くに葬り、お墓の上に記念碑を建立して卿の宝石で飾り、残った宝石は葬儀の費用をまかなうためにとっておきました。

修道僧達はド・フィスティカフに、もし修道僧になることを望まないのなら、故郷へ帰るよう奨めました。修道僧になることは名誉なことでしたが、彼はそれを辞退しました。故郷で貞節な妻グランカルダが彼の帰りを待っていたからです。というわけで、彼は主人のお墓に暇乞いに行きました。すると、お墓を飾っていた宝石は魔法でガラスに変わっておりました。ド・フィスティカフは旅路につきました。幸運なことに彼は、邪悪なカリブのために用意していた贈物の一部をまだポケットに入れて持っていました。そのおかげで、正直者のブリトン人らしく帰路の費用を支払うことができ、生まれ故郷に泥を塗るようなことはありませんでした。ド・フィスティカフには骨の折れる旅路をたどるにまかせて、私達はカリブの洞窟へと戻ることにいたしましょう。


今日はここまでです。
お読みくださりありがとうございました。
次回をどうぞお楽しみに。

続きはこちらからどうぞ。



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