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[西洋の古い物語]「親切なゴブリン」

こんにちは。
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
今日は、イングランドの森に現われる親切なゴブリンのお話です。
ご一緒にお読みくださいましたら幸いです。

※ 白い百合は大好きなお花です。百合は「野の貴婦人」とも呼ばれるそうです。素敵な画像をフォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございます。
 
「親切なゴブリン」
 
イングランドの王国の深い森の真ん中に塚があります。古の時代には、騎士たちやその従者たちは、狩りの後で疲れて喉が渇くと、そこを度々訪れたものでした。仲間のうちの一人が「喉が渇いた!」と叫ぶと、すぐにゴブリンが朗らかな顔つきで飛び出してくるのです。ゴブリンは深紅のローブに身を包み、差し出した手には黄金や貴重な宝石で豪華に装飾された角製の大きな杯を持っており、その杯には何かはわかりませんが、この上なく美味しい飲み物がなみなみと入っておりました。
 
ゴブリンは喉の渇いた騎士にその角の杯を渡します。騎士はそれを飲むとたちまち気分爽快になり、ひんやりと気持ちよくなるのでした。杯がからっぽになると、ゴブリンは口を拭うようにと絹のナプキンを渡します。そして、お礼を言う間も与えず、その不思議な生き物は現われたときと同じく突然姿を消すのでした。
 
さて、あるとき、一人のつむじ曲がりの騎士がおりました。彼は一人でその地域で狩りをしておりました。喉の渇きと疲労を覚えたので、彼はその塚を訪れ、叫びました。
「喉が渇いた!」
すぐさまゴブリンが姿を現し、角の杯を手渡しました。
騎士は杯の美味しい飲み物を飲み干すと、杯を返すかわりにそれを懐に投げ込み、急いで馬を駆って立ち去りました。
 
彼は自分がやったことをあちらこちらで自慢しました。彼が仕える封建領主はそれを聞き及ぶと、彼を縛り上げて牢獄へ投げ込ませました。そして、領主は、自分も例の騎士の盗みと恩知らずの共犯になることを恐れ、宝石で飾られたその杯をイングランド王に差し上げました。王は杯を王室の宝物に加えて大切に保存しました。

しかし、あの親切なゴブリンは、二度と森の塚へと戻ってはきませんでした。
  
「親切なゴブリン」はこれでお終いです。

つむじ曲がりの騎士のつまらない行いのために、二度と親切なゴブリンは森の塚に現われなくなったとのこと、本当に残念なことですね。

でも、ゴブリンには人間を嫌いになってしまわず、疲れたり困ったりしている人にどこか別なところで親切にしていることを、私としては祈りたい気持ちです。

最後までお読み下さり、ありがとうございました。

このお話の原文は以下の物語集に収録されています。

お陰様で100回目を迎えることができました。
いつも応援してくださる皆様に、心より厚く御礼を申し上げます。
これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。
次回をどうぞお楽しみに。

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