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Look for the silver lining

昨日、ようやく日曜日に放映された『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』の録画を見た。その中で、宮沢氷魚さん演じるトランペット奏者の森大輝が、『Look for the silver lining』を歌って奏でるシーンがあった。イントロを聴いた瞬間、あっ、チェット・ベイカー!と、画面にくぎ付けになった。ふんわりとした歌声がさらっと入ってきて、なんかよかった。

そう、私はチェット・ベイカーが大好きなのだ。大学生の頃買った『チェット・ベイカー・シングス』をどれほど聴いただろう。頼りなげで、どこか不安定な歌声とクールなトランペットは、ハッピーな曲も少し物憂げに感じられて、でも沁みてくる。

『Look for the silver lining』は、『 Every cloud has a silver lining 』(どんな雲も裏は銀色に輝いている)というイギリスのことわざから来ていて、どんなに厚い雲も裏側は太陽が照らしてるんだよ、雲が薄くなって銀色に輝いてるところを探してごらん、悪いことばかりじゃないんだよ、という感じの応援歌。チェットが演奏すると、励まされてるけど、押しつけられてない、その感じがとてもいい。

チェットと言えば、私は、1987年5月、大阪のフェスティバルホール(だったと思う)での来日コンサートに行ったのだ。今思えば、今の私よりも若かったはずのチェット・ベイカーだったが、20代半ばの私からは、ずっとずっとずっと年上に見えた。それでも、あいかわらずの儚さとクールさは想像通りだった。バースから始まった『I remember you』を歌ったときの顔は今でも目に浮かぶ。その翌年に死んでしまうなんて思わなかった。

そして、チェットと言えば、つい先日、森野しゑにさんの note の記事を読んだのだ。

この記事を読んだことで、私のチェット・ベイカー愛が再燃したと言っても過言ではない。

そして、またまたチェットと言えば、今日歯科医院の診察台の上で聴いたのだ。私の通う歯科医院では、BGMにジャズボーカルが流れている。あ、これはナットキングコール、これはメロディがわからんほどフェイクしてるからビリー・ホリデイかも、この曲は『You don’t know what love is』などなど思いながら診察台で大きな口を開けていたら、チェット・ベイカーの『My funny Valentine』が流れたのだ。朗々と歌う、フランク・シナトラもいいけど、この淡く儚く頼りない歌声がやっぱり好き。

明日からまたチェット・ベイカーを聴こう。そして『Look for the silver lining』銀色に輝く雲の切れ目を見つけてごらん、と言う歌声に少しだけ励まされたい。

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