逃亡を企てる。

「俺さ、大学行く事に決めたんだよ。」

高校生の台詞なら特に何も言う事はなく、むしろ比較的普通の事かもしれない。
でも、その台詞はもう二十歳になる頃で、ラーメン屋をやってたボーカルから発せられた。

「お?おう!それは凄いな!応援するぜ!」
とりあえず反射的にそんな感じの事を返したと思う。

「それでもうバンドは続けられないんだよね!実際金も大変だし!」

「あ、、、そうね。そしたら、そうか。次のライブを最後にしようか。ラストライブだね。」

当時は練習が出来たミヤコ楽器の前の、41号線沿いの歩道で4人の髪の毛を逆立てて革ジャン着た馬鹿が座り込んでそんな話をした。

考えるとお店にめちゃくちゃ迷惑かけてたので、お詫びしたいとこだが、もう30年くらい前の事なので時効だと思いたい。

その時点で4人の音は鳴り止んだと思う。ピタリと。深く水の中に潜ったみたいに。無音になった。

まさかパンクバンドがメンバーの進学とかの要素で解散となると思わなかったが、その前から金やら女やらで沢山揉めてたので、その結果には驚かなかった。

驚かなかったけど、何もなくなった。

どうも昔から、多分今でもだけど、ワシは組んだバンドとかに思い入れが強過ぎて、色々とややこしい事になる。

もう少しクールな部分をキープ出来てたら良いんだけど、それが出来る程アタマが良くないので、最近はもう諦めている。

さて、ともあれその時はバンドが生きがいであって、それを除けば残った自分なんぞゴミみたいなサラリーマン。

あれ?ワシはこのままつまらん仕事して安い金貰って、40年間地道に生きれよ!!安い金でなー!って感じ?

嫌過ぎる!!まさにノーフューチャー!

大体が我ながらバンドマンなので、やりたい事なぞバンドしかない。つまりバンドを組んだ時点で夢は叶ってて、解散した時点で夢が破れているのだ。

なのでやりたい仕事なぞない!!

実に、、マズイ。

そんなん新しくバンド組めばいいじゃん?って思う方も多いとは思うが、それが不思議とそんなに上手くいかないんよね。これは縁だから。

もちろん東京へ、バンドしに行くって選択肢もあったと思うんだけど、その頃はジャンル間の争いやらハコでの暴力沙汰とか、何やらかんやらでそういう世界に少し辟易していたのも事実だった。田舎過ぎたんだろうなって今なら分かるけど。

さて、それでどうしたかというと、海外へ。旅に出ることにした。

逃げる。

逃亡。

やると決める。やらないと決める。決めないと決める。さあ決めろって水戸華之介が言ってたので、決めないと決めた。人生の何かをまだ決めないと決めるわけだ。

幸いというか、何というか、根が悪者だったのでサラリーマンの仕事しながらここでは書けないような商売をして、多少の金もあった。

それを使って1年か2年。分からないけどとにかく日本から離れよう。逃げよう。現実よさようなら。

元々、子供の頃はスナフキンに憧れていたし、沢木耕太郎の深夜特急も熟読していたし、開高健のオーパ!シリーズも愛読書だったし、何よりまだ26歳になってなかった。

24くらいだったかな?

とにかく26歳までに海外へ。旅へ出なくてはならない!!

そういう言い伝えが旅の本にはよく書いてある。

ピュアなワシはモロにそれを真に受けていた。

そしてそれは、本当にその通りであって、言い伝えってのは誰かのデマカセだったとしても、騙されてみるべきだと思う。

そして飛び出して見た世界は、めちゃくちゃいい加減でテキトーで、でもそれこそ人間が人生を生きてると知る。

世界はめちゃくちゃでデタラメに見えるけど、それは豊潤って事なんだな。

もしあなたが26歳以上だった場合、36歳、46歳、56歳、66歳、76歳、86歳、96歳、106歳と何度でも線を引き直して上限を切って旅に出よう。

そういうデタラメも世界は許してくれるから凄いぞ!

騙されてみてくれ。最高だぞ。


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