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自由詩「サンダル」

    こんにちは。ローランです。
    珍しく自宅にいて、珍しくテレビを見ました。
    その番組では、タヌキやイタチが民家の軒先に置かれたサンダルを持っていってしまうという内容でした。
    タヌキはエサと間違えただけとのことでしたが、イタチは巣を色とりどりのサンダルで飾っていました。
    どちらも面白い生態が見られて楽しかったです。

    それで、サンダルはどんな気持ちなんだろうかと思いたち、想像してみました。連れていかれるサンダルではなく、置いていかれる側ですが。

    では、今日もお楽しみ頂けたら幸いです。


冬も花は美しく咲く


「サンダル」

私はベランダのサンダル
風が吹いても
飛んで近所迷惑にならないデザインなの
だからお値段の割りには
高性能仕様だと
自分では思っているわ
でもね、だからといって
ホントに風が吹いているときに
ベランダに置いたままは
ないんじゃない
万が一飛んじゃったらどうするのよ
いえね
確かにそういう仕様だから
飛んじゃうことはないし
放置されても仕方がないのだけれど
ひょっとして私は大切にされてないんじゃないかって感じるの
ふとしたときに
少しだけ寂しくなるのね
隣家の軒のサンダルは
夜中にタヌキが運んでいった
2軒お隣はイタチだったわ
彼らは本来の用途以外にも
必要とされている
でも私は
ここにずっと置かれたまま
お天気のいい日に
家主が私を履いて
洗濯物を干す以外
とくに必要とされていない
でもホームセンターで
「これいいじゃない」って言われて家主に買われたのだから
本来の用途では必要とされているのだろう
自分が作り出されて
いまここにいることに
誇りを持っているわ
でもそれだけなの
エアコンの室外機の横で待ってるだけなんて
寂しすぎる
わかっているわ
わかっているけど
ボディに風を通す穴が開いているからかしら
心に冷たい風が吹くの
お願い
誰か見つけてよ
私はここにいる
早く気づいてよ
ここにいるの
ここに

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