Big Bang Theory S1Ep6 ユダヤの成人式とDCコミックのフラッシュに北欧神話に指輪物語

この記事のタイトルは、ドラマで取り上げられているネタからつけたものです。ドラマの正式なタイトルはこちらです。

The Middle-Earth Paradigm:オタク青年とハロウィーン・パーティーの法則

ビッグバンセオリーを見ていて面白いなと思ったオタクネタで自分が知っているネタ、調べたネタをまとめておいておくために作ったものです。ざっくりとした背景はこちらもご覧ください。目次もかねて作成しています。

英語のタイトルの「Middle-Earth」とは、トールキンの指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)に登場する舞台「中つ国」のこと。劇中でレナードがホビットに扮するからのタイトルですね。

あらすじ

レナード達4人はペニーを誘って遊びに行こうとするが、逆にペニーの部屋で行うハロウィーン・パーティーに招待される。4人は張り切って仮装して参加することにする。
最初は全員が同じ仮装になってしまったので、あらためて仮装をしなおして出かけるのだが...

冒頭のシーン

ビッグバンセオリーの最初のつかみのシーンは、4人がペイントボールのガードがペイントだらけ=負けて入ってくるところから。

レナードが「勝つ時もあれば、負ける時もあるさ」とみんなをフォローした後のハワードのセリフが不思議なことになっている。

バーンスタインかブロフロフスキーか?

Howard: Yes, but you don’t have to lose to Kyle Bernstein’s Bar-Mitzvah party.
Leonard: I think we have to acknowledge, those were some fairly savage pre-adolescent Jews.

まずハワードの「Kyle Bernstein」。ググってみると、実在の人物だけれども、どう考えてもビッグバンセオリーのこのエピソードで登場してくる人物にみえない。

いろいろ調べてみて、きっとSouth Parkの「Kyle Broflovski」のことに違いない。South ParkのKyleならやりそうな感じなので、たぶんハワードの言い間違いなんだと思いますが、きっと「Kyle B」まであってたのと、たしかバーンスタインもユダヤ系の名前なのでプロデューサーもいいまつがいに気が付かなかいまま、オンエアされてしまったのでしょう。

South Parkはアメリカでは超有名な切り絵アニメ。ビッグバンセオリーもたいがいですが、こちらはもっとタブーなしで社会問題にも切り込んでいくことで人気を博し、今でも続いているはずです。

しかも、ほとんどのエピソードが無料でみられるようになっているという、なんとも信じられないような大盤振る舞い・出血大サービス展開中。

日本の扱いについては、日本人としては賛否あると思いますが、好きな人は無茶苦茶はまっているとのこと。

ユダヤ人の成人の儀式

ブロフロフスキーだとして、それに続くもう一つのセリフが、これまた日本人には意味不明。

Howard: Yes, but you don’t have to lose to Kyle Bernstein’s Bar-Mitzvah party.
(字幕)だけど相手はユダヤ教13歳軍団だぞ。

バー・ミツワー?日本語ではバル・ミツワーと表記しているようですが、「ユダヤ法を守る宗教的・社会的な責任を持った成人男性のことである。また、子供がこの責任を持てる年齢に達したことを記念して行われるユダヤ教徒の成人式のことも指す。」とあります。

これが13歳なので、字幕では「ユダヤ教13歳軍団」となっているわけですね。なるほど。字幕翻訳者の苦労がうかがえます。

また、この後のレナードのセリフがそれを裏付けています。

Leonard: I think we have to acknowledge, those were some fairly savage pre-adolescent Jews.
(字幕)思春期前の子供なのにかなり狂暴だった

原文では、「思春期前の子供なのにかなり狂暴」というよりは、「かなり狂暴な思春期前の子供たちだった」というニュアンスだと思いますが。

ちなみに、玄関から入ってきたボロボロの4人組が階段を上がるとき、全員が青色のペイントで撃たれまくっているのに、シェルドンの背中はオレンジ色のペイントボールで撃たれた跡が残っています。

チームごとに違う色のボールを使うことで判定するためだと思いますし、たぶんレナードたちのチームはオレンジ色を使っていたのでしょうから、シェルドンは背後から味方の誰かに撃たれたと思われます。

それを説明するのが、次の会話。

Sheldon: You know, we were annihilated by our own incompetence and the inability of some people to follow the chain of command.
Leonard: Sheldon, let it go.
Sheldon: No, I want to talk about the fact that Wolowitz shot me in the back.
Howard: I shot you for good reason, you were leading us into disaster.
Sheldon: I was giving clear, concise orders.
Leonard: You hid behind a tree yelling “get the kid in the yarmulke, get the kid in the yarmulke.”

(字幕)
シェルドン:負けたのは無能さと誰かが指揮系統を乱したせいだ
レナード:もう忘れろよ
シェルドン:ハワードは僕の背中を撃った(改めてシェルドンの背中にオレンジのペイントが見える:笑)
ハワード:君に従ってたら破滅してたよ
シェルドン:明確な指示を出してた
レナード:“小僧をやっつけろ”と叫んでただけだ

シェルドンを撃ったのはハワード・ウォロウィッツで、彼はシェルドンの指揮がめちゃくちゃだったから撃ったと言ってますが、ハワードにとってはたぶん、ダブルミーニングだったと思います。

原文の「get the kid in the yarmulke」ですが、まず「Yarmulke」とはユダヤ人の男性が被る帽子でキッパーと呼ばれているもののようです。

木の後ろに隠れて叫んでいるシェルドンのセリフは、ハワードにとっては「あのヤルムルケをかぶっている子供たちをやっつけろ」=「ユダヤ人をやっつけろ」に聞こえたことでしょう。

そりゃ、ハワード、シェルドンを撃ちたくなるわ(笑

ということで、一周回ってきてやっぱり最初のカイルはバーンスタインではなくて、カイル・ブロフロフスキーが正しいと思います。

土曜日のハロウィーン・パーティとテーマ設定(笑

このエピソードが放映されたのは2007年10月29日(月曜日)。この週の土曜日なら11月3日で、ハロウィーンにはちょっと遅いような気もしますが、ま、「こまけぇこたぁ良いんだよ」っていうことで。すでに2021年ですし。

ともかくペニーに「パーティ」で「飲んだり踊ったり」は「ノー」と言っていた面々も、ハロウィーンならということで喜び勇んで準備に取り掛かることにしました。この時、テーマは?SFとかファンタジーとか、アニメとかコミックとか?とジャンルを特定しないと気が済まないのは科学者としてのサガなのか(笑

4人がそろえた仮装コスチュームは?

4人がノリノリでコスチュームを準備して集まる。この時のシーンは大爆笑もの。

Leonard (off): I’ll get it. (He enters, wearing a Flash costume. Opens door.)
Howard (Entering at speed, also wearing a Flash costume): Bjow (They stare at each other in shock.)
Leonard: Oh, no.
Sheldon: Oh no! (He is also wearing a Flash costume.)
Raj: Make way for the fastest man alive. (Enters, also in a Flash costume.) Oh no!
Sheldon: See, this is why I wanted to have a costume meeting.
Leonard: We all have other costumes, we can change.
Raj: Or, we could walk right behind each other all night and look like one person going really fast.
Howard: No, no, no, it’s a boy-girl party, this Flash runs solo.
Leonard: Okay, how about this, nobody gets to be The Flash, we all change, agreed?
All: Agreed.
Leonard: I call Frodo!

なんでか、みんなフラッシュ、好きですよね。アローバースのフラッシュは良くできていると思います。もっとも、アローバースのフラッシュは2014年から放送開始なので、2007年にはまだなかったんですけどね。

レナードが他の仮装に変更しようと言った時のラージのセリフは、何度見ても笑ってしまいます。「4人で一晩中、一列に並んで歩けば、一人の人間がとっても早く動いているように見えるよ

ハワードが、ナンパするためにパーティに参加するんだから、自分はソロで動く!ということで結局、衣装は変えることになりましたが、いの一番にレナードがフロドをとって、まずはタイトルの伏線を一つ回収。

かくして一同の仮装は…

レナードは宣言通り、フロドに。ハワードはロビン・フッド、ラージは北欧の雷神ソーに変身。

そしてシェルドンはなんと、「ドップラー効果」という物理現象に変身(笑

ただし、ハワードのロビン・フッドはピーターパンにしか見えない(笑
おまけにラージにもこんな風に言われているし。

Raj: Really, because I saw Peter Pan, and you’re dressed exactly like Cathy Rigby. She was a little bigger than you, but it’s basically the same look, man.
(字幕)キャシー・リグビーと同じ格好だぞ 
彼女のほうが少し大きいけど。

キャシー・リグビーのピーターパンは、日本版DVDなども作られていないようですね。

なるほど、ラージのはこれにみえる。

レナードのミドル・ネーム

4人の仮装がそろったところで、レナードがシェルドンに、ペニーの前で恥ずかしいことを言わないでほしい、たとえば自分のミドルネームがリーキーとかばらしたりする様なことは避けて、とお願いする。

このレナードの以来へのシェルドンの返答が、日本語字幕ではあと一歩、情報が足りていない。字幕では「偉大な人類学者のルイス・リーキーにちなんだ名前だ。“おねしょ(リーキー)”じゃなく」としか書かれていないけれども、原文ではこうなっている。

Well, there’s nothing embarrassing about that, your father worked with Louis Leakey, a great anthropologist. It had nothing to do with your bed-wetting.
いや、何も当惑するようなことはない。君の父さんは偉大な人類学者のルイス・リーキーと一緒に仕事をしたからだ。おねしょとは何の関係もない。

ルイス・リーキーはこちらにある通り、偉大な人類学者でレナードの父親が一緒に仕事をしたことがあるなら、それは父親も一流の人類学者である証なのだと思います。が、ミドルネームにつけるなら

ですが、ルイス・リーキーにちなんで名前を付けるなら、Louisでも良かったし、ルイス・リーキーの本名が「Louis Seymour Bazett Leakey」なので、「Seymour」でも「Bazett」でも良く、「おもらし」とか「おねしょ」を思い浮かべてしまうような単語にしなくても良かったんじゃないかとは思います。

7時のパーティへの訪問時刻

さて、7時開始のパーティに4人そろってペニーの部屋を訪れたのは7時5分。いわゆる「少し遅れていく」マナーにちなんだものでしょうが、ペニーはまだ誰も来ていないという。

Penny: Well, yeah, when you start a party at seven, no-one shows up at, you know, seven.
Sheldon: It’s 7:05.
(字幕)
ペニー:7時開始の場合 普通は誰も7時に来ない
シェルドン:もう7時5分だ

これ、どうするのがアメリカの社会としては正しいんでしょうね?

シェルドンのドップラー効果

シェルドンが気合をいれた「ドップラー効果」の仮装については、もうノーコメントで。パーティーが始まった後も、いろんな人にドップラー効果の仮装を説明しようとして、さんざんに言われていたし。(汽車ポッポとか、イカれた汽車ポッポとか、学習障碍者をディスるって最低ね、とか)

あ、いや一つだけ。彼はドップラー効果で賞を獲得する気満々だったのね。

Sheldon: Yeah, so the judges can give out the prizes for best costume, you know, most frightening, most authentic, most accurate visual representation of a scientific principle.
(字幕)
賞が用意されているんだろ
怖いで賞
“科学の法則を正確に視覚化してるで賞”

じっさい、こんなTシャツまで売っているとは知らなかったです。

オーディンが認める味と水曜日の関係 ついでに雷神ソーと木曜日

いざ、ハロウィーン・パーティがスタートしたけど、周りとなじめず相変わらず4人で座っている。ラージがお菓子を食べているのですが、セリフからするとこんな感じのお菓子のセットのようです。

Raj: Mmmm, by Odin’s beard, this is good Chex Mix.
(字幕)オーディンも認めるおいしさだ

字幕ではオーディンも認めるとなっていますが、「オーディンの髭にかけて、これはおいしいチェックス・ミックスだ」とは、なんかこれぞ英語の表現っぽいですね。

ところで、オーディンの髭ってどんなものかなと思ったら、面白い記述がありました。写真を見れば髭については説明不要かと思います。

タキトゥスは『ゲルマーニア』(97年 - 98年)において、ゲルマン人の最も尊崇する神をメルクリウスと呼んだが、これはギリシア・ローマのヘルメース/メルクリウスと同じく疾行の神であったゲルマンの神ヴォーダン(オーディン)を指すものと推測される[4]。オーディンはメルクリウス同様、知恵と計略に長けた神であり、ローマ暦で「メルクリウスの日」にあたる水曜日はゲルマン諸語では「オーディンの日」と呼ばれる[5]。例えば、水曜日は英語では Wednesday、ドイツ語では Wotanstag (通常はMittwoch)、オランダ語では woensdag、デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語では onsdagとなる。

水曜日=Wednesdayがオーディンからきているとは、ついぞ知りませんでした。中学の時、英語の先生になんでWednesdayが水曜日か聞いたけど、先生も知らなかった。一つ勉強になりました。

ついでに言うと、木曜日=Thursdayは「雷神トールの日」という意味のようです。

木曜日を意味する英語 Thursday やドイツ語 Donnerstag などはトールと同一語源である[3]。

ハワードのナンパ作戦=ミラー効果

パーティーもたけなわとなり、ハワード、ナンパ開始。ラージからどんな作戦でいく?と聞かれて曰く、

Howard: I’m going to use the mirror technique. She brushes her hair back, I brush my hair back, she shrugs, I shrug, subconsciously she’s thinking we’re in sync, we belong together.
(字幕)
ミラー効果を使う。相手の動きをマネして、僕と通じ合ってると思わせる

ハワードは心理学の専門誌とかネットでこの方法を学んだらしいのですが、ミラー効果のあからさまな使用のデメリットは学ばなかったようです。

これがあからさまであったり不自然であった場合は、逆に相手に疑念感や不快感を持たせてしまうこともありますので注意しましょう。

相変わらず女性に話せないラージだったが

べろべろによった女性がやってきてラージのとなりに座り、ラージが話そうがどうしようが関係なく、一方的にしゃべっている。

これがきちんと後で伏線回収するのもすごい。

ペニーの元カレ登場

そうこうするうちに、ペニーの元カレ、カート登場!

第1話でテレビを取り返しに行って、ズボンを取り上げられた彼です(笑
うちで扱ったのは、クリンゴンネタだけだったので記事には書いてませんでしたが、背も高けりゃ筋肉もごついです。

そんな彼に、「情報化時代の今なら、自分たちこそ優勢だ」といって突撃するレナード。このセリフ、コメディと思って聞いているけど、いいんか?

ほんとにビッグバンセオリー、攻めるよなぁ。この辺はうちのネタじゃないので、回避しときます。

レプラコーン

レナードに言い負かされたカートは、「レプラコーンめ」と捨て台詞を言ってその場を離れます。

レプラコーンとはアイルランドの緑の妖精のことを言うんですね。

アイリッシュパブで、緑色の小さな小人があちこちで使われているのですが、ようやく意味が分かった。

例えばこちらは東京

そしてこちらは大阪

大阪のブラー二ー・ストーンはクリックしないと見えませんが、どちらも緑の小人がデザインとしてあしらわれています。

ホビットのやり方

レナードとシェルドンが部屋に戻った後、ペニーがやってきて、ダメ男とつい付き合ってしまうと泣いて打ち明けるのを慰め、パーティーに戻らせるレナード。部屋の扉のところでペニーがレナードにキスして戻るところをカートが階段で見ていた。

そのカートに向ってのレナードのセリフ。

Leonard: That’s right, you saw what you saw. That’s how we roll in The Shire. 今ので分かったろ ホビットのやり方だ。

The Shireについては、日本語のウィキペディアでこんな風に説明されている。

これ、本当に指輪物語とかロード・オブ・ザ・リング知らないとついていけないですね。さすが「The Middle-Earth Paradigm」というタイトルで作ったエピソード。

中つ国で力弱きホビットがパラダイム変換を起こすみたいな感じでしょうか。

そして〆はインド出身の北欧神ソー

パーティーも終わった後、ハワードがラージを探してシェルドンとレナードの部屋を訪ねてくる。シェルドンとラージの会話が傑作。

Sheldon: He’s not here. Maybe the Avenger summoned him.
Howard: He’s not the Marvel comic story, he’s the original Norse God.
Sheldon: Thank you for the clarification.
Howard: I’m supposed to give him a ride home.
Sheldon: Well I’m sure he’ll be fine. He has his hammer.
(字幕)
シェルドン:アベンジャーズに呼ばれたんじゃないか?
ハワード:彼は北欧神話のトールだ
シェルドン:ご説明どうも
ハワード:送っていかなきゃ
シェルドン:大丈夫さ。ハンマーを持っている。

太字部分。字幕ではこれだけですが、ハワードのセリフはもう少しきちんと説明しています。「仮装はマーベルコミックの主人公じゃない。オリジナルの北欧の神だよ」

そんなことは知っていると言わんばかりのシェルドンですが、彼はハンマーがあるから車で送っていかなくても大丈夫っていうのは、やっぱりマーベルのマイティーソーと誤解していると思いますけどね。

北欧神話のトールのハンマー・ミョルニル(ムジョルニア)には空を飛ぶ能力はなさそうですし。

そんなハンマーを持っているインド出身の雷神トール=ラージは、「聞き上手」な才能を生かして話上戸になってしまった女性となかよくしていましたとさ。

今回はたぶん今までで最長の投稿になったと思います。

改めてたった20分ちょっとのドラマに、多数のネタが仕込まれていることがわかりました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

本エピソードで他に見落としているネタがありましたら、コメントいただけると嬉しいです。

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