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5月11日(土)|桃山鈴子×森田真生「庭とイモムシ」

《オンライントークイベント》

桃山鈴子×森田真生
「庭とイモムシ」

【出演】
桃山鈴子×森田真生

【日時】
5/11(土)
19:00-21:00(開場 18:50 予定)
*途中10分程度の休憩を挟みます。
対談終了後には質問を受け付け、可能な限りお二人にお答えいただきます。

【参加費】
4400円(税込)

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 鹿谷庵の裏庭に小さなレモンの木がある。もともと周防大島の友人の中村明珍さんにもらったレモンを絞ったあとに長男が種を植えたもので、もう五年目になろうとしているのに背丈は低く、まだ果実ができたこともない。
 それでも毎年、春や秋にはアゲハチョウがここで産卵をして、イモムシが育つ場所になっている。 

昨日(5月2日)のレモンの木。今年もイモムシたちが動き出している。

 春にこのレモンの木にアゲハチョウが卵を産みにくると、いよいよイモムシの季節が始まる!と楽しみな気持ちになる。今年は庭や散歩道でどんなイモムシに出会えるだろうかとワクワクするようになったのは、桃山鈴子さんのおかげだ。

 『わたしはイモムシ』と宣言してしまうほどイモムシを愛する桃山さんと話をしているうちに、僕もイモムシにどんどん興味が湧いてきている。庭で新たなイモムシを見つけるたびに、桃山さんに報告をする。そしてどんな蝶や蛾になるのか、なにを食べるのだろうかと、彼女に薦められて買った『イモムシハンドブック』を開く。

イモムシ好き必携の『イモムシ ハンドブック』(文一総合出版)

 私にとってイモムシは「確かなもの」なのだ、と桃山さんはいう。

 人は笑うかもしれないが、私にとってイモムシは「確かなもの」なのだ。春のキャベツにモンシロチョウ、夏のミカンの木にアゲハチョウ、秋のクズの花にウラギンシジミ、冬のエノキの落ち葉に越冬中のオオムラサキ。夜空を巡る月や星のように、毎年、この時期になればこの木にはあのイモムシ、あの草花にはこのイモムシが現れる。それは季節や時間と共に巡ってくる確かな喜びだ。

桃山鈴子『わたしはイモムシ』(工作舎)

 「おとうさん、すごいよ! ほら、アゲハのイモムシ!!」
 新しい季節の訪れを喜ぶ子どもたちの声を聴いていると、僕は桃山さんの言っていることがよくわかるような気がする。この季節に、ここにまたイモムシが生まれた。せっせと葉を食べ、すくすくと育とうとしている。どんな衝撃的なニュースよりも「確か」ななにかが、いま目の前で起きている。

 たとえば、イモムシがお尻を高く持ち上げ、尾脚を伸ばし、バッティングセンターにあるピッチングマシンのように、ポーンとフンを遠くへ飛ばす。ケムシが自分の長い毛の手入れをしている。それを見て、ぷっと吹き出し、我に返る。あんなに思い詰めていた自分がイモムシを眺めている間は、悩みのない世界にいる。

桃山鈴子『わたしはイモムシ』(工作舎)

 5月11日(土)に、鹿谷庵に桃山鈴子さんをお招きして「庭とイモムシ」と題して対話をします。昨年の9月以来の桃山さんとの対話です。

 今回はまず素直に、イモムシの魅力についてゆっくり桃山さんのお話を伺う予定です(前回は僕がちょっとしゃべりすぎました!反省)。これからたくさんのイモムシと出会える季節がやってくるその前に、桃山さんがこれまで観察してきたたくさんのイモムシについて、桃山さんの視点からたっぷりお話をしてもらいます。
 
 対話の後半では、イモムシの力を借りながら、「庭」のイメージを少し膨らませてみたいと思います。いま発売中の『すばる』(6月号)に寄稿したエッセイ「再生する庭」でも提起してみたテーマですが、僕はいま、「庭」という概念を少し膨らませてみた先に、なにか新しい風景が開けないだろうかと模索しています。庭をめぐる僕自身の現在進行形の思考を、桃山さんにも投げかけながら、後半の対話を進めてみたいと思います。

『すばる』6月号。ロングエッセイ「再生する庭」を寄稿しました。

 なによりまずは、この日いらしてくださったみなさんにとって、桃山さんを通して知るイモムシの広やかな宇宙との出会いをきっかけに、日常に新しい爽やかな風が吹きますようにと願っています。こんなに近くに、こんなに広い宇宙が広がっている……そのことに気づけるだけでも、きっといつもより少し呼吸が楽に、深くなると思います。

 ご縁がありましたら、ぜひお立ち寄りください。
 一期一会のひとときを、みなさんとともに分かち合えること、いまからとても楽しみにしています。

2024年5月3日 森田真生

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開催に寄せて(桃山鈴子)

 生まれて初めてイモムシと出会ったのは、父の仕事の関係で7才まで住んでいたNY郊外の庭です。樹の下に吊ったハンモックで昼寝をしている時、シャクトリムシが布の縁を歩いてたのです。夏が近づくとこの庭で母と蜘蛛の巣に引っかかったホタルを救助してまわりました。カエデの木の洞にはアライグマの親子が住んでいたり、花の蜜を吸いにハチドリがやって来ました。秋には落ち葉の山に飛び込み、冬は積もった雪の上に背中から倒れて手と足を動かし、天使の形 ーsnow angelを作って遊びました。

 東京に帰国して不登校になった私は、庭で多くの時間を過ごしました。ニューヨークとは比べものにならない狭い庭でしたが、オオスカシバの幼虫に出会って飼育してみたり、アシナガバチの巣を拾って蜂の子を育ててみたり、アリの観察をしたり、カエルとキスしてみたり、いろんな葉っぱを焼却炉のふたの上で熱して、おせんべいのようにパリパリにしてみたり、想い出は尽きません。子どもの私にとって、外といえば庭のことでした。その庭の外は街道と環状線が交差していて、とても遊べるような場所ではなかったのです。庭は守られた安全地帯でした。借景は高層ビルで、そのビルの谷間に植物の植わった庭があり、そこにふさわしい昆虫が暮らし、野鳥も訪れてくれました。低学年の頃はハンミョウまで庭に住んでいたのです。

 今、その敷地は幼稚園の校庭になっています。テニスのクレイコートのように緑色に舗装されてしまいましたが、桜の木だけは健在です。あの木の下に椅子を並べ、家族や親戚と花見をした春の日がありました。

 現在、私は庭のないマンション暮らしです。その代わりにいつも歩く散歩道のあちこちに名前を付けています。トカゲロードとか桜の丘、夏の竹林といったふうに。知らない虫に出会えば、図鑑にはないあだ名を付けています。キラキラした緑の甲虫には「キラみど」、真っ赤な幼虫には「イチゴちゃん」といったように。

 森田さんがご自身の庭についてお話しになる時、不思議なことにそれはいつの間にか皆が共有できる庭となってゆきます。私の想い出の庭も開かれた庭になるかもしれないと今から期待をふくらませています。これまでに出会ったイモムシたちの魅力についても、たっぷりお話しできたらと思っています。

2024年5月3日  桃山鈴子

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【お申し込み方法】
当イベントは「Zoom」ウェビナーによるオンライン配信イベントです。
ご参加ご希望の方は下記URLよりオンラインチケットのご購入をお願いいたします。ご購入をもってご予約は完了いたします。

オンラインチケットご購入ページ↓
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イベントの開催についてご不明な点がございましたら、
こちら[attuning.books@gmail.com]まで。担当:鎌田
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