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Puma Jones at Musical Planet






ピューマ・ジョーンズ(Sandra Puma Jones)

 絵・音座マリカ
 文・泉井小太郎


One Live

嵐のようなバンドがやって来て
嵐のような男が吠えている

黒雲と
稲妻と
どこかに
ぽかりと開いた青空と

雨は降る
風も吹く
びしょ濡れに泣いたら
塵や芥は洗われていった

嵐の眼で
女(女神)は踊り
この世になく歌い
この世の魂を天へ巻き上げた


   ♪


ピューマ・ジョーンズはソロ・シンガーではない。レゲエのコーラス・グループ「ブラック・ユフル-」の紅一点。アメリカ生まれでコロンビア大学を出た才媛。ジャマイカへは社会福祉の勉強で訪れたのが、なぜかマルーンでラスタ・ダンスを習ったり、ナイヤビンギ・バンド(ラス・マイケルのサウンド・オブ・ニガス)のバック・コーラスで歌ったりするうちに、メンバーを探していたコーラス・グループに誘われた。
当時、コーラス・グループは男性トリオばかり。そこへ、女性、それもジャマイカ人ではない彼女が新風を吹き込んだ。レゲエは黄金期から成熟期へ、さらに前衛へと向かったのが、最強のリディムを生み出すスライ・ダンバー~ロビー・シェークスピアをバックにしたブラック・ユフル-だった。

黒い歌の塊のようなリード・ヴォーカルのマイケル・ローズ、クールで寡黙なダンスのダッキー・トンプソン。そして、キュートで、突飛もないくらい甲高い声を出すピューマ・ジョーンズ。
1984年のライブ・アンダー・ザ・スカイで来日。ハービー・ハンコックも、ジャコ・パストリアス酩酊のギル・エバンス・オーケストラも流して、ただブラック・ユフル-のライヴに酔い痴れた。
マイケル・ローズの怒涛の歌唱、スラ=ロビのたった二人でも会場を揺るがす音の繰り出し、ピューマは名前通りの黒豹のようなしなやかさ。可憐で、野性溢れて、それでどこからか花びらのような声がする。

ピューマ・ジョーンズは、不思議な魅力・魔力の女性である。小柄に見える。目と目の離れて広くやや垂れ気味の甘いキュートな顔。ダンサーにしては、柔らかそうな、ふっくらの肌。意表をつかれるような高い音域。彼女がダブタイムで時折披露するラスタ風ダンスは、他に踊れる者がなかろうというほどユニークで、イマジネイティブだ。
本来ならブラック・ユフル-の登場だけれど、ここにあるのはピューマ・ジョーンズ一人の絵。ソロで歌ったことはあるのだろうか。あの声は、どんな歌になるのか。いくつもの既成の枠をこともなく破ってこれた彼女なら、またまた新鮮な驚きを与えてくれると思う。空想ライヴ・スポットだから可能な夢の出来事である。


   ♪


ピューマ・ジョーンズ(Sandra Puma Jones)1953 - 1990
レゲエ最盛期のコーラス・グループ、ブラック・ユフルーのメンバー。
ミリアム・マケバや、ナイヤビンギ・バンドでもバックコーラス担当。
ワイルドな音塊の中に舞う花びらのような高音と、しなやかなダンス。

愛聴盤(アナログ盤):
◯ Ras Michael and The Sons Of Nigus : Movements (Dynamic Sounds)
◯ Black Uhuru : Show Case (Bkack Rose)
◯ Black Uhuru : Sinsemilla (Island)
◯ Black Uhuru : Red (Island) 
◯ Black Uhuru : Anthem (Island)



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