月のひと


ふうらかん―月のひと

風の羅漢、旅する羅漢を、墨や陶で表現してきました。
野の旅人だからと、最初は野焼きから。塊に近い作りのものを、コントロールの効かない焼き方をするのは無謀だ、と言われながら試行錯誤。そのうち、友人の窯に入れて貰ったり、野焼きの仲間が暮らす村に薪窯が出来たりして、いろいろな焼き方で、いろいろな<ふうら>が生まれてくるようになりました。

ひとりひとりのふうらには、名前がありません。焼き上がりの妙味とかは出ても、作品として銘を付けることもしませんでした。ただ、ふうらが生まれてくる、ヒビが入っても、どこか欠けても、それでそのまま自然のふうら。それが楽しく、長くたくさん作ることになったのだと思います。

そんな中で、ただ一人、愛称を持ったふうらがいます。
白いふっくらした体格、やさしそうな風貌に、幻想好きの友人が
「月のひと」
と呟いたのです。野焼き仲間で、幻想動物や人形オブジェなどを製作する舞踏家。彼の一言で、このふうらは月のひととなり、ゆったりした白衣は月の光の色合いに感じられるようになりました。


さて、明晩は十五夜。
待宵の心持ちで「月のひと」を取り出し、夕刻、表に出てみると白く丸い月がぽっかり。せっかくなので記念撮影。塀に登って貰って、なんとか構図を確保しましたが、望遠で月を引き寄せるなどの芸当は出来ません。
パシャリ、とやってくれたのはiPhone4S。
出来栄えは問わず、月と月のひととの初めて(!)のセッションを珍重しましょう。




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