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露草で描く


やはり蝶からの縁になる。ツマグロヒョウモンの羽化第一号が飛び立ったのを追いかけて散歩。普段は夕方だから、特別版。あまり通らない路で露草の青が目につき、きれいだなあと眺めているうち、白い一輪を見つけた。

以前から白い露草には憧れていたので、この邂逅はうれしく、全く蝶のお陰。
以来散歩は露草の青の新鮮な午前に変わり、二日後には別の場所で四つほどの白花を見つけた。もっとも道々数千個の青花を見続けた後である。

白い花は珍重で、お土産のそれを手にした<ふうら>も喜んだけれども、露草の魅力はなんと言ってもその青にある。昔から染料や絵具に使われてきた青、それを絵の上に乗せてみたい。ちょっとした点彩でいい。そうだ、それなら線も露草で描くのがいいだろう。

そういう順序で、色から草筆を選ぶのはこれが初めてのこと。



露草の青が欲しくて、この二三日朝の散歩。
草筆シリーズ、初めての彩色はツキクサのあを。茎を筆に使わせてもらった。青い蝶、青い花、青い人。



(Twitter 10.9 青い蝶は前日羽化したルリタテハ)



草筆を手に執ると、まずは何か文字を書いて、線質やらタッチを探る。今回は「空」「青」「朝」「露」などの一字。それから<ふうら>を描くか、石仏を描くか。草筆の基本は「ふうら画」だけれど、最近は抽象的なものへの誘惑もある。



「青のパーカッション」というタイトルが描画中に湧いた。露草の青の音。
このフレーズは若い頃の詩の中に出て来たのではなかったか。色と線でよく遊んでいた頃。



筆が弾んで、つい羽根が生えた。もう一人には黄色い花粉も着いた。「月草(着き草)」という別名は文字にも書いたけれど、青い色は本当によく着く。水や光に弱く変色もし易いというから、これらの絵もいずれ褪せるのだろう。露草の花そのものが一日で終えることを思えば、なんの憂いがあろう。青は、無常の色である。



<ふうら>が誕生した北国の川辺りの家にも露草が咲いていた。
  露草の軒端凉しき哀愁館  酔生虫
    皿一枚に豆腐半丁   草々子
俳句好きが集まって初めて巻いた歌仙の頭に、あの青い花が咲いている。

そして今年はこんな句を詠んだ。
  ある時は露草のあを狩るをとこ
  きみのそのこころのすみの蛍草





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