らかんノート 2 羅漢場
羅漢寺を本籍地にしたかった。
友人は富士山の頂上にしている。
してもいいんですよね、
と役所の女性に問うと、
彼女は戸惑って奇人を見るような眼をした。
生家は子供の頃に親共々追い出された。
故郷に思い入れのある場所、
気を許せる空間といったら、
らかんたちの並ぶあの境内しかない。
その羅漢場も、
昔の哀しみが哀しみとして生息する雰囲気にない。
石の心身にも、
さびしさやうれしさは日射しのように降ってくる。
嘘だと思うなら、
一人一人の顔を見てごらん。
顔のないらかんの顔をじっと見てごらん。
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