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人間原理

ニュートリノは電子やクォークと共に物質を構成する素粒子の一つであり
その質量は宇宙に存在する星や銀河の質量とほぼ同じであるという。
さらに驚くべきことは星や銀河、原子の塵とニュートリノ全体を集めても宇宙の全エネルギーのうち4%であと23%はダークマター、73%がダークエネルギーが占めているそうだ。

ダークマターは重力を持つが光を出したり吸収したりしないので目に見えない物質であり望遠鏡では発見できないため暗黒物質と呼ばれている。

猛烈な速度で回転する銀河や星々が外へ飛び出さず互いに位置を保つ事ができるのはダークマターの重力のお陰であるといわれる。私たち地球があり、私たちが存在できるのはそのお陰である。

私たちが認識し存在する宇宙は3次元空間と時間の4次元時空であるが5次元や6次元時空の宇宙を仮定するとダークマターの説明つくという。

ダークマターは高次元にある存在だから見ることができないが重力がこの私たちの4次元世界に働くことからその存在が予測できるということなのだろう。

この宇宙が加速膨張しているのは、ダークエネルギーの存在を仮定しなければならない。
このエンルギーがほんの少し大きくても小さくても加速膨張の過程で星や銀河が生成されず人類も存在しないとなると今の宇宙があるのは文字通り奇跡といってよいのだろう。

そこで今回のテーマである人間原理が登場する。

人間のような知的生命体が存在しないと宇宙は観測することができないからそれを認識する人間が宇宙を作りだしているというのが人間原理というものだという。

宇宙の時間が逆転する可能性だがそのような現象を人間は観測できない。人間が宇宙を観測する時、それは人間の脳に記憶として蓄積されるが、時間が逆転すれば記憶は失われていくので、観測は不可能になる。だから時間が過去から未来へと進むのは、人間がそのような時間の流れる宇宙しか観測できないからである。

宇宙論で、宇宙がどのように誕生し、どのような物理法則で成り立っているのかという問いかけに対し、人間の存在に理由を求める考え方が人間原理である。

人間のような知的生命体が存在しないと、そもそも観測されるべき宇宙は存在しないという強い人間原理と、人間の存在を必然とするような宇宙の構造を考えるという弱い人間原理がある。

これは科学というより認識論や哲学の世界で、ここまで来ると、宇宙の謎を突き詰めていくと最後は人間の存在自体の意味が問われてくるというのだ。

人間は宇宙を解釈するために生み出され、宇宙は人間を生み出すような奇跡的な条件を備え、人間出現の奇跡をそれ自体の意味づけとしているというのだ。

宇宙論や素粒子論といった最先端の物理学においてさえ人類のあり方や人間存在の哲学的な認識が必用になっており、当然、人間の主体的な行動によって起こりうる経済活動をはじめとする全ての社会現象に対してこのような考察が問い直されているのがトレンドなのだ。

様々な物理定数が今の宇宙を成り立たせるような値なのは、宇宙を観測する存在である人間を生み出すためだという考え方が現れるようになってきたのはいわゆる神に見立てたデザイナーズ論であろうか。

しかし、こう考える人も現れるのは自然だろう。

「物理定数が違った値を取る無数の宇宙が存在するのではないか」と考える人たちである。この宇宙は確かに人間が生まれるように物理定数の値が調整されているように見えるが、しかしそれは偶然で、色んな物理定数の値を取る無数の宇宙が実は存在していて、そちらの宇宙では人間(知的生命体)は存在していないのだ、という解釈である。

「宇宙がビッグバンから始まった」ということは今では広く受け入れられいる。これに関して「起こりうることは何度でも起こる」と考える人がいるのも当然だ。もしビッグバンが何度も起こっているとするならば、宇宙が無数にあるという考え方も至極当然ということになる。

「人間原理」を採用せずとも納得の行く説明が得られるようになった宇宙論であるが、人間原理」が注目される出来事をことさら追及してみれば『宇宙がなぜこのような宇宙であるのかを理解するためには、われわれ人間が現に存在しているという事実を考慮に入れなければならない』という主張である。

「宇宙は、知的生命体が生まれるような構造をしている」ということだ。「人間原理」にも色々種類があり、この考え方は、容易に「神」や「創造主」の存在を連想させる。だから、「人間原理」が提示された時、強烈な拒絶反応を抱いた科学者は多かっただろう。しかしこの「人間原理」を現在では、簡単に無視出来ないものとして捉えられているのだ。「アインシュタインのλ(ラムダ)」と呼ばれる数値に関するものだ。

私は優秀な工学者でもない全くの素人なので多くの間違いがあるかもしれないが、アインシュタインのラムダとは、宇宙は自身の重力によって収縮し、すべての物質と時空がつぶれて(ビッグクランチ)無次元の特異点に収束してしまうか、暗黒エネルギーが一定であれば、宇宙の将来は、意外にも、劇的な変化は起こらずに静的なものになるということの予測を示す方程式なのだろう。重力による収縮とダークエネルギーによる加速膨張のバランスを言っているのだろう。宇宙がつぶれないのは両者が均衡している、すなわちλ=0であるということなのであろう。

従来「λ」の値は「0」だと考えられていた。しかし実際には、「0」ではなく、極小ではあるがちゃんと値があったのだ。そしてその値を、「人間原理」の考え方を使うことで予測していた人物がいたそうだ。

ノーベル賞受賞者のワインバーグである。

彼は「人間が存在する、ということと矛盾しないために、λはどういう値であるべきだろう?」と考え、120桁もゼロが続いた後で有限な値を計算してみせた。そしてそれがなんと観測結果と一致したのだ。これは世界を驚かせた。

さらに「ひも理論(超弦理論)」が、「人間原理」の解釈をさらに広げていくことになる。

「ひも理論」の研究によって、様々なタイプの宇宙が許容され得ることが明らかになっていった。その数なんと、10の500乗以上というから驚きだ。「10の8乗=1億」だから、10の500乗というのは、1億を60回掛けてもまだ足りないぐらいの数だ。「ひも理論」は、そんな途方もない、ほとんど無限と言ってもいいくらいの宇宙像を許容する。

「ひも理論」によって、むしろ無数の宇宙が存在するということの方が自然である、ということが理解されるようになってきた。

「物理定数は何故この値なのか?」という問いから生まれた「人間原理」は、最終的に「様々な宇宙があるはずだ」という考え方を生み出していくことになり、超自然的存在が決定するとする人間論が理論物理の未来を切り開いてきた事実こそ注目されるのだろ。


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