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リニア南アルプス工事問題ーその四、エコパーク

(写真は南アルプス荒川岳南斜面、この一帯の表層水がこんな素晴らしい高山植物の花園を作っている。この下をリニアの超大トンネルが貫通される)

ユネスコエコパークとは、生態系の保全と持続可能な利活用の調和(自然と人間社会の共生)を目的として、ユネスコが選定しています。

人間と生物圏(MAB:Man and the Biosphere)計画における一事業として実施されて、地域の豊かな生態系や生物多様性を保全し、自然に学ぶと共に、文化的にも経済・社会的にも持続可能な発展を目指す取り組みです。 ユネスコエコパークは国内で親しみをもってもらうためにつけられた通称で、海外では「BR:Biosphere Reserves(生物圏保存地域)」と呼ばれています。

南アルプスは3,000m峰が連なる急峻な山岳環境の中、固有種が多く生息・生育するわが国を代表する自然環境を有しています。 富士川水系、大井川水系及び天竜川水系の流域ごとに古来より固有の文化圏が形成され、伝統的な習慣、食文化、民俗芸能等を現代に継承してきました。

従来、南アルプスの山々によって交流が阻まれてきた3県10市町村にわたる地域が、「高い山、深い谷が育む生物と文化の多様性」という理念のもと、 南アルプスユネスコエコパークとして結束。南アルプスの自然環境と文化を共有の財産と位置づけるとともに、 優れた自然環境の永続的な保全と持続可能な利活用に共同で取り組むことを通じて、地域間交流を拡大し、 自然の恩恵を活かした魅力ある地域づくりを図ることを目指しています。

その地域に降ってわいたような核心部のリニアトンネル掘削。

日本自然保護協会では2011年7月7日に東海旅客鉄道株式会社(JR東海)が公開した、中央新幹線計画段階環境配慮書に対して、自然環境保全の見地からパブリックコメントを提出した。

意見:本配慮書のルート選定では、南アルプスを長大なトンネルで通過するとされている。南アルプス地域は、国立公園をはじめ、原生自然としての厳重な保全が求められる「大井川源流部原生自然環境保全地域」指定地も存在する、大規模な山塊の保護地域である。

大規模林道見直しの契機となった南アルプススーパー林道(一般車両通行不可)以外の道路は存在せず、以降、人為的インパクトを極力排除し、自然状態を維持してきた。

大規模な山塊で、一般車両が通行できる道路、鉄道、トンネルが全く存在しない場所は、本州では南アルプス以外にはない。これは、日本の生物多様性を支えるまさに屋台骨であり、後世に引き継ぐべき財産として、環境省により国立公園の拡大指定が見込まれている。

このような保護地域の評価が全くなされていないことは、配慮書としての要件を欠いている。また、過去にも経験してきたように、トンネル工事では、地下水文環境の大きな変化(異常出水など)、作業道路の設置・大量の排土砂による影響、斜坑の設置による地上部への影響など、大きな負荷が想定されるため南アルプスに、長大なトンネルを掘るべきではない。


意見:配慮書の「南アルプスの隆起速度は日本国内で突出した値ではない」という記述は誤りである。水準測量からみた列島の上下変動値によると、南アルプスの隆起量はその他の地域と比べて突出した高い値である(国土地理院、2002年「水準測量から求めた全国の上下変動」)。

また日本のみならず世界的に急速に隆起していることが指摘されている(静岡県HP、2010)。南アルプスでは、急激な隆起のために崩壊地も多く分布している。このため大量の土砂生産が行なわれ、流域のダム群の堆砂量は非常に多い(例えば、美和ダム)。

このように、隆起量、崩壊量とも大きい南アルプスに、トンネルを掘ることは避けるべきである。また、もし、「突出した値ではない」というのであれば、その根拠を示すべきである。

その五へhttps://note.com/rokurou0313/n/n0ebc3f11941b

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