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ダサい魚の刺繍

久しぶりに母の夢を見た。

設定は今の僕の状況で地元小樽に帰省しているといったものだ。

随分と長いこと帰ってなかったのにも関わらず
友達は家族のなにがし、会社のなにがしで
全く遊んでくれず
弟も店の仕込みがあるからとさっさと寝てしまい
不完全燃焼というか
空振りに終わった久しぶりの帰省。
福井に戻る朝、
母と少しこの空振りの話を愚痴りながら話した。

「そりゃあんたみんないい歳だし色々あるからしょうがないよ」
みたいなことを母は笑いながら言った。

そして、あ、そうだそうだとおもむろに奥に行き
クローゼットからセーターを出し僕に手渡した。

「お父さんのだよ」とだけ母は言った。

特になんの迷いもなく僕は袖を通してみる。

それはわざわざあつらえたかのようにぴったりなサイズだった。

なんとなく父と肩を並べたような心持ちで僕は嬉しくなったが

唯一のツッコミどころとしてびっくりするくらい
このセーターにはダサい魚の刺繍が施されていた。

あんたに似合うと思ってと言った母の顔は真剣だった。

僕は苦笑いしつつもありがとうとだけ言って
それを着たまま家のドアを開けた。

ここで夢から醒めた。

全く意味がわからない夢だが久しぶりに母とたわいもない話ができたのは
嬉しかった。

母は僕が20歳の時に他界した。
つまり今40歳の僕は母と過ごした時間の倍生きたことになる。

ちなみに父は僕が7歳の時に他界している
(いつの間にか当時の父の歳を僕は超えている)

なぜ急に母の夢をみたのかわからない。

最近、妻と母の話をしたせいなのか、家族の話のドラマを見たせいなのか、、、

僕は新しい家族と今は暮らしている。
妻と妻のお父さんとお母さん、そしてホッケ(猫)

10年一緒に住んでいるとなんとなく慣れて家族になってきたなと感じることがある。

まともな構成の家族というものを経験した記憶がほとんどない僕にとって
できなかったことを今させてもらっているのだろうと思う。

そんな新しい家族ができ、ちょっとだけ大人になった僕に母は会いにきてくれたのかもしれない。

時々でいいからまた会いにきてください。
聞いてみたい話もたくさんあるし、報告も色々ある。
お酒なんかも少し飲みながらでも。

ではまた。

追伸
今度ダサい魚の絵が入ったセーターを見つけたら買おうと思っています。

2021/4/20 


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