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A の意味、 The の意味

中学生の受験英語

実にくだらない話を聞いたことがあります。

ある英語の試験で、和訳しなさいという出題があったそうです。

Could you call a TAXI for me please?

この英文に対して、「私のためにタクシーを呼んでいただけませんか?」
という回答をしたところ採点は △ だったそうです。
理由は、”一台” が抜けていたためだそうで、正しくは
「私のためにタクシーを一台呼んでいただけませんか?」
なのだそうです。

これ、A Taxi を ”一台のタクシー” と訳さなければいけないという、ある意味で間違った理解を生徒に押し付けているようにしか僕には思えませんでした。
こんなことをやっているから日本の英語教育は・・・
と言いたくなる話です。
でもこれが受験英語なのだと言われてしまえばそれまでなのでしょう。

実社会との乖離

この英文、Could you call a TAXI for me please? を、例えば海外のホテルで使ったとしましょう。
フロントの人にタクシーを呼んで欲しくてこの英文を使ったとします。
A Taxi と言っていますし、そんなに大勢いるとも思っていないので二台も三台も必要だとは思わないでしょう。
ところが、こちらはグループでホテルを利用していて、外出するメンバーが5、6人ほどいるとします。
それでも Could you call a TAXI for me please? の言い方は必ずしも間違いではありません。
単にタクシーを呼んでもらいたいという意思は伝わるからです。
ホテルマンが気を利かせて、
2台呼ぼうか、それとも3台の方が良いかな? 
そう思えばホテルマンの方から、必要な台数をこちらに聞き返してくれるでしょう。
つまり、タクシーを呼ぶということが主であり、必ずしも台数を特定も限定もしていないのがこの言い方です。
現実社会では必ずしも額面通りに会話が進むわけではないのです。

『A 〇〇〇』 と 『The 〇〇〇』の違い

前述のように、”A” が付くと 1 という数を意味する場合もありますが、”何でも良いので” という意味合いで使われることがあります。
これが ”The" との大きな違いと言って良いでしょう。

Back To The Future という映画の中で、こんな場面がありました。
主人公のマーティーは、ドクという科学者に呼び出されて、タイムマシンであるデロリアンの実験に立ち会います。
愛犬のアインシュタインをデロリアンに乗せると、ドクはリモコンでデロリアンを走らせます。
その様子をマーティーが撮影するためビデオカメラを持っています。
マーティーは撮影をせずにドクに話しかけたので、ドクがマーティーに
『The car! The car!』 とデロリアンを指さしてデロリアンを撮影するようにと促します。
前出のA Taxi では、『どの会社のどの車か』はまったく特定も指定もしていません。
どんな色のどんな形のタクシーでも良い、だから A Taxi です。
でも、このデロリアンでは、この一台しか対象にしていませんので A car とは言わずに The car となるわけです。

The Moon
The Earth
月も地球も宇宙の中に一つしか存在していませんから A Moon にも An earthにもなりません。

I want to ride a bike.
どんな自転車でも良いから、漠然と自転車に乗りたいという表現です。

I want to ride the bike.
既に会話の中で、目の前に置かれている自転車など、どの自転車なのかが特定されている場合にこのように表現します。

A とか An の場合は対象物が定まっていないので 不定冠詞
The の場合は対象物が定まっているので定冠詞
そんな風に習うのは正しいことではありますが、願わくは、試験のためじゃなくて、実用できるように教えて上げて欲しいなと、僕は思うのでした。


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