私募債を活用する3つの理由
[要旨]
日本レーザーの近藤社長は、(1)会社のイメージアップができる、(2)金利や償還方法が有利である、(3)個人保証が不要であるという理由で私募債による資金調達を行っています。私募債は、手続きが難しいというデメリットもありますが、それ以上に得られるメリットが大きい資金調達方法と言えます。
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今回も、日本レーザー社長の近藤宣之さんのご著書、「倒産寸前から25の修羅場を乗り切った社長の全ノウハウ」の中から、私が気づいた点について述べたいと思います。近藤さんは、銀行からの資金調達にあたって、私募債を活用しているそうです。私募債は、資金調達のひとつの方法ですが、融資と違って、資金調達する側の会社が発行する債券を投資家に発行し、投資家から資金を受け取る方法です。この会社が発行する債券は社債といい、社債のうち、特定の少数の投資家を相手に発行する社債を私募債といいます。
そして、融資は、銀行に預金されている預金者のお金を、銀行を通して間接的に事業者に提供している間接金融であるのに対し、社債は、直接、投資家から資金の提供を受ける、直接金融と言えるでしょう。ちなみに、株式発行による資金調達も、投資家から、直接、資金の提供を受けるという面からは、直接金融に分類されます。ただ、中小企業が社債を発行するときは、そのすべてを銀行が引き受ける例が多いので、形式的には社債であっても、実質的には、銀行からの融資と同じと言える面があります。
しかし、やはり、融資と私募債には違いがあり、近藤さんは、その私募債の特徴があるからこそ、あえて、私募債を活用しているそうです。その理由のひとつめが、会社のイメージアップができるからということです。というのは、私募債は、一定の要件を満たした会社でなければ発行できません。例えば、東京信用保証協会の信用保証制度を利用する会社の場合、純資産額3,000万円以上、自己資本比率20%以上などの要件があります。このことは、私募債を発行している会社は、ある程度、優良な会社であるということを、社外にアピールできることになります。
2つめの理由は、低利で安定的な資金調達ができるからだそうです。私募債は、優良な会社が発行できるわけですから、金利も、その信用力を反映して低利となります。金利も、固定金利が一般的です。また、償還については、私募債は、一般的には、償還期日に一括して償還するので、それまでは社債利息のみを支払うだけですみます。3つめの理由は、経営者の個人保証を条件としない資金調達方法だからだそうです。担保と保証については、場合によっては、場合によっては担保を求められることもありますが、個人保証はほとんどもとめられることがないようです。
また、私募債のような経営者の保証なしの資金調達を行う実績をつくっておくと、それ以降は、銀行は、同社に対して社長の個人保証は求められなくなることを狙っいるということです。とはいえ、私募債による資金調達は、一般の融資よりも難易度が高いものであることは間違いありません。でも、前述のようなメリットを考えると、私募債の活用は、近藤さんと同様に、私は得策であると考えます。もし、安定的、かつ、有利な資金調達を考えている経営者の方は、ぜひ、私募債の利用をご検討されることをお薦めします。
2022/1/9 No.1852
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