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実際原価計算と標準原価計算

[要旨]

実際原価計算は、正確な原価計算ができるという長所がありますが、事後的にしか原価を把握できないという短所があります。そこで、科学的・統計的調査にもとづいて見積もって計算した原価である標準原価計算により、迅速に原価を把握できるようになります。


[本文]

前回は、総合原価計算には、単純総合原価計算、等級別総合原価計算、組別総合原価計算、単一工程総合原価計算、工程別総合原価計算など、いくつかの種類があるといことを説明しました。今回は、実際原価計算と標準原価計算について説明します。まず、実際原価計算は、実際に発生した原価を集計する原価計算です。実際原価計算は、正確な原価計算を行うことができる反面、(1)製品の原価が事後的にしか把握できない、(2)原価の発生から集計まで労力と時間がかかる、(3)不適切な原価が発生していても直ちに認識できない、という短所があります。

そこで、これらの短所を解決する方法として考え出されたものが標準原価計算です。原価計算基準では、標準原価について、「財貨の消費量を、科学的、継続的調査にもとづいて、能率の尺度となるように(中略)計算した原価」と説明しています。具体的には、「良好な能率のもとにおいて、その達成が期待されうる標準原価(現実的標準原価)」、もしくは、「経営活動に関する比較的長期にわたる、過去の実際数値を統計的に平準化し(中略)決定される原価(正常原価)」のことを指すと述べています。端的に述べれば、標準原価とは「科学的・統計的調査にもとづいて計算した原価」のことです。

では、標準原価はどのように行うのかというと、(1)製品ごとに標準原価を見積もり、設定する、(2)製品が完成した都度、標準原価を計算する、(3)実際に発生した原価を集計する、(4)標準原価と実際原価の差異を算定し、その発生原因を分析する、(5)原価差異の金額の重要性に応じて処理を行う、という手順で行います。要は、期中は見積もった原価(標準原価)で原価計算を行い、期末に実際の原価と見積もった原価(標準原価)の差を分析し、会計的な調整を行うというものです。こすることで、迅速性に欠けるという実際原価計算の短所を解決することができますが、実際原価計算よりも労力がかかるというデメリットもあります。

2022/3/28 No.1930

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