持続化補助金は目的ではなく手段
前回に引き続き、小規模事業者持続化補助金(以下、単に持続化補助金と記します)について説明します。私は、持続化補助金について、必ずしも消極的な評価はしていませんが、これまで、持続化補助金だけに限らず、他の補助金を申請して採択された方のお話などから、申請にあたって、採択されることを最優先すべきではないということを感じています。というのは、本来は、事業活動のために補助金を受けようと考えるべきところを、補助金を受けることを優先し、採択されやすいように事業計画を作ったところ、採択された後に、申請した事業計画に着手しないままになってしまったり、着手はしたものの、結果として、その費用が補助対象にならなかったりしたという方もいました。
とはいえ、このような事例があったことは事実ですが、割合としては少ないと感じています。ただ、補助金の主旨と、自社の事業方針が一致していないと、せっかく労力をかけて補助金を申請し、また、それが採択されたとしても、それらは無駄になってしまうということもあります。すなわち、持続化補助金など、補助金は積極的に活用すべきとは思いますが、自社の方針と、補助金の目的に乖離がある場合、無理をして補助金を活用しようとすることは、必ずしも得策になるとは限らないということにも注意が必要です。
ちなみに、持続化補助金の公募要領によれば、補助対象となる取組事例として、新商品を陳列するための棚の購入、新たな販促用チラシの作成・送付、新たな販促用PR(マスコミ媒体での広告、ウェブサイトでの広告)、新たな販促品の調達・配布、ネット販売システムの構築、国内外の展示会・見本市への出展・商談会への参加、新商品の開発などがあげられており、これだけを見ると、それらを実践することは、それほど難しくないと考えられがちです。
しかし、これらの取組は手段であり、「販路開拓等の取組や、業務効率化の取組を通じて、どのように生産性向上につながるのか」が、最終的な目的です。そして、補助金の申請にあたって、前述のような取組を行う結果、生産性向上が見込まれるということを、事業計画書によって説明し、それらの効果が十分に見込まれなければ、補助金の申請が採択されません。
そこで、補助金の申請にあたっては、多くの会社は、新たな独自性の高い事業を行うことで、生産性を高める事業を計画するわけですが、ここで採択されることを意識し過ぎて、実践が難しいことを計画してしまうと、採択後に実践できなくなってしまう可能性がでてきます。そこで、補助金の申請にあたっては、実践できる範囲で計画を立てることが重要になります。一方で、持続化補助金などの制度を活用することをよい契機とし、難易度の高い事業に挑もうとする姿勢も必要であると、私は考えています。この続きは、次回、説明いたします。なお、この記事の内容は、行政当局の見解ではなく、私個人の見解ですので、ご注意ください。
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