【音楽レビュー】Staind/14 Shades Of Grey
Bon JoviのBounceを購入した当時は14歳だが、部活の野球や音楽以外で熱中しているものがあった。アメリカのプロレス団体であるWWEだ。中学2年の時の同級生に大ファンがいたのでそこから僕も影響を受けた。こちらもケーブルテレビのSkysports(現在のJsports)で放映していた。僕が見始めた当時はWWFからWWEへ名称が変更となる変革の時期だったようで、RAWではTriple H(現在のCOO)が長期政権を敷いており、SmackDownではBlock LesnerとKurt Angleが激しい勝負を毎週のように繰り広げている時期だった。特にSmackDownが面白くて中学3年生、2003年の5月頃から本格的に僕は熱中して友達と3人で2005年2月にさいたまスーパーアリーナでのTV収録(2020年時点では唯一の日本収録)にまで足を運んでしまうわけだが、WWEは月1回のPPVで必ずテーマソングが存在する。その時に特に意識をしたのがこのStaindの「Price To Play」という曲だった。
WWEはその後も僕に刺激的な曲を届けてくれた。Traptの「Headstrong」、LimpBizkitの「Eat You Alive」、Metallicaの「Saint Anger」、それにSevendustの「Enemy」やDrowning Poolの「Step Up」などがそれにあたる。その中でもStaindは一番最初に見たPPV「Vengence 2003」のテーマソングということもあり、当時のKurtとLesnerの抗争を思い出すことも相まって良い曲だったという印象だ。
このアルバム、900万枚のベストセラーとなった前作「Break The Cycle」の次に制作されたものということで、全面グレーで包まれたジャケットとなっていたことから「Beatlesのホワイトアルバム、Metallicaのブラックアルバムに続く名作だ。」というレビューを持って発売された。(売上は22万枚と前作を大きく下回るが、それでも全米1位を獲得は立派。)最初の3曲が素晴らしく、上述の「Price To Play」はヘヴィな中にAaron Lewisのクリーンな声が響きメロウな雰囲気がある。サビはおそらくオクターブのパワーコードをかき鳴らしているのだろう。切ない歌メロと重なって爽やかさを感じることが出来るサビだ。2曲目の「How About You」は深いモジュレーションの掛かったエレキに加えてアコースティックギターの音色も柔らかい。ヘヴィバラードというやつだろうが、こちらもメロがいい。そして3曲目の「So Far Away」。これもバラードだが、WWEとタイアップしており、確かKurt Angleが脚のケガをした時、復帰を待つ際のPVに使われたのではないかと記憶している。(Coldplayの「Clocks」でも同様に首に大きな怪我をした際の復帰PVがあった。)「自分はここにいて、自分を許す。今日の自分を恥じない。」そんな内省的な歌詞だが、アトランタ五輪の金メダリストであったKurtがWWEでも輝いたあとに突如訪れた怪我との闘いで苦悩する姿と重なり、アメリカ人の心に刺さったのだろうなという感想だ。
そんなわけで上位の3曲だけでも大分お腹はいっぱいになる。むしろ4曲目以降も似たようなバラードでありアルバム全体としては飽きてしまう印象だ。この辺が前作や次作「Chapter V」と比べて売上が少ない要因かもしれない。だけども3曲目だけでもリピートする価値はあると思うので、思い入れのあるのアルバムの1枚である。ちなみにおまけだが、前作「Break The Cycle」は「900万枚売れているアルバムなのでぜひレンタルして聞きたい。」とTSUTAYAのリクエスト用紙に書いたら後日仕入れてくれた。「店員さん、意見を聞いてくれてありがとう。」と自分を受け入れてもらったことを思春期ながら嬉しくなったことを今でも覚えている。
■Price To Play
■So Far Away(Acoustic Version)