見出し画像

【音楽レビュー】麻枝准×熊木杏里/Long Long Love Song

 高校時代や浪人時代に夢中になった麻枝准のシナリオと音楽だが、大学に入ってからはすっかり他のものに夢中になっていた。社会人になってからも同様だったが、2019年頃に小説に挑戦しようと思った。それは彼のシナリオや音楽に心動かされたことを思い出したからだった。

 その後2020年になりコロナ禍で時間が出来たこともあったからだろうか、久々に小説を書き上げた。80000字、文庫本で言うと90ページ。なかなか辛かったが、その中でモチュベーションになったのだ彼の音楽であり言葉だった。文学賞に応募した結果は一次選考落選だったが・・・。

 「リトルバスターズ!」を最後にシナリオ業を引退したという認識であったが、「Angel Beats!」や「Charlotte」といったアニメではシナリオを描き、Angel Beats!のゲームでもシナリオを描いていたようだ。その中で音楽活動は継続しており、この「Long Long Love Song」は、Love Songシリーズの3作目ということだった。初代「Love Song」についてはCDを持っていたが、特にいいアルバムだという印象はなかった。しかし、アマゾンのレビューや彼のラジオを聴くとかなりの名盤ということだった。おそらく僕はこのアルバムよりもサウンドトラックのほうが素晴らしいという想いが強かったのだろう。

 この「Long Long Love Song」は彼が心臓の病気で生死を彷徨うことになる前後にできたアルバムだそうだ。その話自体は少し聞いたことがあるかもしれない。そんなアルバムを2020年の夏ごろに購入した。購入したときにはその直前にやっていたニコ生の映像を見たりして気持ちを高めた。新品のCDを買うこと自体がかなり久しぶりだったこともあり、心が躍った。

 CDが届くと、まずは制作日誌のボリュームに驚いた。彼が入院する前後の話を中心に繰り広げられていくが、いろいろなことに悩んでいることが見える。彼の人間性が見れてとても共感が出来るし、応援したくなる。これだけでも初回限定版を購入する価値があるだろう。

 まず2曲目の「Bus Stop」。これは麻枝准本人も言っていたが最大のキラーチューンだ。「燃え尽きぬ情熱と、永遠に追った青春と、ささやかな恋心と、きみと」。こんな淡い歌詞を書けるのは彼しかいない。「乾きえぬ焦燥と、あの日覚えた悔しさと、両手に積んだ幸せと、君と」このフレーズも美しい。「Last Regrets」に近い書き方をしていると言っていたが、むしろそれよりも美しくか弱さの中に意志の強さを感じることが出来る。感想のアコースティックギターも美しい。大サビ部分はウッドベースを使用しているのあろうか。6曲目の「きみだけがいてくれた街」は鬱展開の問題作と言われているが、アコースティックギター一本の美しい曲。9曲目の「銀色世界」はまずタイトルからして美しく、雪国に拠点を移したであろう少女が過去を忘れこの街で一生生きていくことを決意する。12曲目「Supernova」はトランス系の切ない曲、そしてラストトラック「Love Songの作り方」は幸せを手にした希望の詰まったフィナーレとなる。

 「Bus Stop」「銀色世界」の2曲がとても素晴らしいアルバムだ。このアルバムを出した3年後の2020年に「神様になった日」が放映になった。あまり評価が高くなく、それが理由なのか麻枝准は失踪してしまったが、彼の復活にまた期待していきたい。

Bus Stop

銀色世界


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?