倍音について
今回は倍音というものから、日本の伝統芸能について書いてみようと思います。結構難しい内容ですが頑張ってついて来て下さい!笑笑
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音楽会のAmazon五線譜
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どの楽器をするにしても基本的に楽譜って見ると思うんです。それはクラシック音楽であっても、日本のポップスにしても。
そこで使われるのが五線譜です。左にカタツムリみたいのがくっついてるあれです。
実はあの楽譜はかなり西洋音楽に最適化されたツールなんですね。
どういうことかというと
声を低いところから順に高い方へ上げて行ってもらったら分かると思うんてますが、無限に音の高さってあるんです。その中で大体この音とこの音が重要だよね、その周りは切り捨てよう、とそれぞれの国で起こります。
国によっては一オクターブ(例えば低いドから次の高さのド)の間に20個音を数えるところがあれば、6つしか数えないところもある。
けど五線譜を使うと強制的に12個に分けられます。(もちろんそこに至るまでに紆余曲折がありますがここでは省略します)
でこの12個に分けられた音は西洋、特にヨーロッパの伝統音楽を演奏するのに適しています。というかそれを元にショパンの別れの曲もリストのラ・カンパネラも作られました。
これが何を意味するかというと、よほど気をつけない限り五線譜を使う限り音楽の内容は西洋化されます。
半強制的に彼らのフィールドで試行錯誤する事になるんです。じゃあ五線譜を使わない、という選択肢を取れるかといえばこれも難しくて。
ほんとに便利だし、めちゃくちゃ普及してるんです。
Amazonが考えたルールに縛られるのはいやだ!といってもあまりに普及してるので抜けられないのに似てるかもしれません。
じゃあそもそもなんでこんなに普及したの、という疑問に一つの答えを示してくれるのが倍音の世界でした。
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1音に広がるミクロコスモス
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音楽を構成する要素として、メロディー、和音、リズムがあると言われてます。そう習いました。26年間そう信じてきました。
裏切られました笑笑
というより、もっと細く分けられるよね、という視点を今回新たに持てました。
(⭐︎ここから細かい物理的な説明に入るのでいらない人は次の星マークまでワープして下さい)
例えばラ、という音。
実は楽器などでこの音が鳴ってる場合、ラ、の音だけが鳴ってるわけではないのです!
輪ゴムをピンと張った状態をイメージして欲しいのですが、指で弾くとゴムが震えながら音が鳴りますよね?
実は、端から端までいっぱい使いながらなる音と同時に、半分で分割した時、3分割したとき、など、たくさんの波長に分かれて振動してるんです。
結果、それぞれの長さに応じて音がなっています(長さが分割されるごとに周波数は反比例して高くなり、2倍音、3倍音が鳴る)
とまぁ、ここまで物理的な所を説明して来たのですが、ぶっちゃけ分かんないですよね?笑笑
なので、簡単に覚えて帰ってください。
⭐︎一つに聴こえる音もたくさんの音が同時に鳴っている!
この一緒にたくさんなっているその他の音が倍音、と呼ばれ、その音の音色を決めています。
例えば
先日篠山で行ったバイオリンとのリサイタルのとき、リハから来てたお客さんがバイオリンの音を聴いた時
うわー、やっぱりバイオリンの音色っていいねー!
って言ってたんです(え、ピアノは?え?ピアノは?って心の中で二回聞き直してました笑)
でもそもそも僕らがバイオリンやピアノの音色を聴き分けられるって不思議じゃないですか?
実は人の耳は3-4キロHzあたりが敏感らしいのですが、人の話す声は100-300ヘルツあたりなので普段聴かないんですね。じゃあなぜこの辺が敏感かというと、この倍音を聴くためじゃないか、というのが一説としてあります。
そしてこの倍音により敏感なのが日本人で、それゆえに記譜法は五線譜のように発達しなかったんです。
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木造建築の多い日本
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一つの音には実は倍音という多数の音が同時になっていて、その倍音の構成によって音色が変わるよ、と前回書きました。
そのへんはこの動画をみるといいかも
で、この倍音、音がどこかにぶつかって反射するたびにどんどん吸収されてしまうんです。
ヨーロッパの教会とかに行くと音がめちゃくちゃ反射するんです。反射するたびに倍音は減っていくので、必然的に基音(ラだったらラ自体!伝わってるよね?笑)をもとに音楽の構成が作られていきます。
正直反対だと思ってました、ごめんなさい!
それに比べ日本は湿気が高く、さらに木造家屋が多かったためあまり響きませんでした。なので倍音が残りやすい。
結果的にこの倍音をどうにかコントロールしようという方向に楽器も音楽も進化してきました。
ここで図1を見て頂きたいのですが(なんかポクない?笑)
簡単に説明すると以前お話しした音楽の三要素であるメロディー、ハーモニー、リズムってこの右側なんです。
で、実はそこにいたるまでに音の高さを決めて、どの倍音を使う決めて、さらにどの長さにするかを決めてやっと右側を構成するための素材ができる、という事を説明してるんよ!(興奮してます笑)
西洋の楽器では、倍音の構成を変える事はあまり重視せず、右側の全体の構成に注力してきました。
言ってみれば、それぞれの音はレンガのようなもので画一的であり、それを使って大聖堂やお城などの複雑な建築物を造る感じに近いです!!
一方、日本の場合は、左側の一音を作るまでを重要視します。楽器も倍音を変えやすいように改良されてきました。
言ってみれば、それぞれの細かいところが重要な意味を持つ一方、全体として強く訴えかける事はしない、枯山水的なものをイメージして頂ければ嬉しいです!!(喩えが決まったと思っています笑)
囲まれていた環境によってもこれだけ違いが出てくるのですが、さらに、言語においても倍音の扱いは違いました。
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母音中心の日本語と子音中心の諸外国
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英語などヨーロッパ系の言語を勉強し始めた時、聴き取りに苦労しませんでしたか?
どうやったって聞き取れない音、そもそも発音出来ない音。
その苦労は日本語の成り立ちに依るんです。
日本語の場合、発音の組み合わせでも必ず母音がくるんですね。
しゃけ sha/ke であったりタラ ta/raであったり。
英語などヨーロッパ系の場合子音だけで音を構成します
トゥレイン train や コンポーゼル composer
だから日本語表記で発音を示せないんです。
必ず子音の後に母音がくるため同音異義語が多くなります。
橋 端 箸 木 気 黄
でも僕ら文脈がなくてもかなりの精度で聴き分けますよね?それは僕らの耳が細かな倍音の変化を聞き取るために発達しているからなんです。
さらに、非整数次倍音というものを使って意味を足します。この音はガサガサなどものが擦れる時に発するのですが僕ら母音の上でも使いませんか?
あ゛ーー とな わ゛ーーとか。
意味をなさないのに何かが起こってると感知する。それらは日本語が母音中心だから音の響きを発達させ聞き取らないといけなかった、という背景がありました。
さて、いよいよ、五線譜についての話に戻ります笑(なげぇわ!)
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対普及凡庸ツール、五線譜(エヴァ風)
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ここまで、西洋と日本における音の扱い方を見てみました。
西洋
・倍音が響きにくいので音量やリズムで表現する
日本
・倍音が大事なので音色やその場の"間"を大事にする
で、どちらがデジタル化しやすいか(はっきりと数値に置き換えやすいか)というと断然西洋なんです。
五線譜を見て貰えば分かりますが、どの高さを弾くか、どのくらいの長さ続けるか、どのくらいの大きさで弾くべきか、数学的に導き出せます。
一方、例えば古い尺八の楽譜は、音量も長さも書いておらず、ただひたすらどのような音色を出すか(どの運指を使うか)が示されています。長さ、音量などをどのように扱うかは音色をきちんと知ればおのずと分かる前提で書かれています。
しかし、そこの阿吽の呼吸は地域が変わればどんどん変わる。一方ラの音をテンポ4分♩=60であれば地球上どこにいってもラの音を1秒演奏すればいい。めちゃくちゃ複製、伝達が容易なんです。
こうして16世紀の活版印刷革命が起こった後は全ヨーロッパ、そして現在は全世界に五線譜は拡がりました。
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日本の強み
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五線譜は音色や空気感という曖昧な要素をバッサリ切り落とした事でどこでも通用するようになり、凄い勢いで普及しました。
これって最近だとclubhouseに似てませんか?
ただ喋るだけでアーカイブもない。かなりの精度の低遅延という無駄な要素を削ぎ落とした結果、シリコンバレーから凄まじい勢いで外に飛び出していきました。
じゃあ日本のプロダクトが全然ダメかというと、そんな事はなくて。
先日能を観てきました。誰もが惹かれる煌びやかな舞台装置があるわけでも、絢爛豪華な音楽が鳴るわけではなかったです。
しかし、言葉を伸ばし、音響で感情に訴える表現方法や、出だしの抑圧された動きから生まれる後半の迫り来る迫力。圧巻の一言でした。
でもそういった文化って持ち出すのにめちゃくちゃ苦労する。あまりに目に見えないものを背負い過ぎていて、機動力が遅いし近付き難い。
でも宮崎駿さんのもののけ姫や千と千尋、高畑勲さんのかぐや姫は見事にそのハンデを乗り越えて、むしろ武器にして世界に乗り出して行ってる。音楽でいえば伝統音楽を見事に消化して打ち出した武満徹さんなどがいる。
300年間の鎖国を乗り越えて(家康さんありがとうございます!)出てきた作品ってさっぱり感慨深いなぁ、と倍音について調べながら気付かせてもらいました。
今回の内容は中村明の倍音という本を元に書きました。ほんとに綺麗で深いのでおすすめです。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
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