見出し画像

『ゾンビ』日本劇場公開版について

さて今回のお題は、日本劇場公開版!
私が子供の頃にポスターさえ怖くて本編を観るなどトンでもなく、その頃のチキンぶりを大人になってから死ぬほど後悔したという、曰く付きのバージョンであります。

長生きはするもんで、今はこうしてDVDとして持っていたりするわけですが、「そんなもん、どっから手に入れた!?」なんてヤボな点を追求する人は、ここには居ませんね~?そうでなくても、最近は色々と うるさいんですから。

…こほん。 さてこの劇場公開版、実際にはどのようなバージョンだったのか、例によってビジュアル山盛りで徹底検証してみるとしましょう♪ 画像は相当に見づらいですが、そのへんはホレ、アレな事情のDVDですので、なにとぞ御容赦下さいまし。

昔の映画って、よく冒頭に こうやって日本独自のタイトル文字が出てましたよね。 「おっ、本編はじまるねっ!」ってな気分を大いに高めてくれる、なかなかオツな慣習だったと思うのですが…

日本版のド迫力な墨書きのタイトルロゴのバックに、怪しい煙がモウモウと たちこめております。不気味な音楽が、「どえらい映画が始まりまっせー。覚悟はよろしい?」と、ハッタリの効いた脅しをかけて来るわけですよ。子供の頃の私なら、このタイトル出た時点でビービー泣きながら逃げてますねマジで。

これがウワサの惑星爆発シーン! もちろんオリジナル版には存在せず、日本で勝手に付け足したものです。出どころは、同じヘラルド映画『メテオ』の未使用カットだというのが定説になっておりますが、最近では「違うんじゃないか?」という説もボチボチ出て来ております。 爆発時の光の放射が、何となく円谷チックなんですよ。ウルトラマンが飛んで来てもおかしくない感じ。現時点でも真相は藪の中。ああ芥川龍之介…

これまた日本独自に挿入された、ゾンビ発生の状況を説明する字幕。
タイプラターの様なカシャコショした効果音に乗せて打ち出される説明文は、なかなかのセンス。
しかし、『ゾンビ』ってのは何の説明もなく「とにかく発生した!」って感じで、有無を言わせず大パニックから始まっちゃうのがイイんですけどね。日本の観客はマジメな人が多いので、何らかの説明は必要だと気を回したのでしょうが、「惑星の爆発によって怪しい放射能が…」という説得力ゼロの理由づけは、余計に墓穴を掘りまくってる気がします。


劇場版と言えば、ゴアシーンにアレコレ修正が入ってることで有名。「青いフィルターが入っていた」という証言も有りますが、実際に観た限りでは、見当たりませんなぁ。おそらく「サンゲリア」の劇場版と記憶が混ざっているものだと思われます。

さて、どのようなシーンが修正の対象とされたのかと言いますと…
もうひとつ、「こういう描写はNG!」という判断基準が見えて来ません。例えばウーリーが民間人の頭をフッ飛ばす強烈なショットなどは、このとおり手付かずのまま残されておりますな。

で、こっちは修正を喰らった 「ミゲルの嫁かじり」の名場面。 ミゲルが肩にガブッと行った瞬間、映像がストップモーションとなります。 数秒の静止画像の間に、ヨメはんの絶叫だけが響き渡るという演出。 案外、ズバリ見せるより怖いかも。

そんなシーンが修正される割には、例の死体置場のシーンはUS版より長いフルバージョン。 皆様、余裕でガッツンガッツン喰らっちゃってます。当時の観客、ドギモ抜かれたろうなぁ…

ドライバー・ゾンビのシーンでございます。ちょうどこの部分で止め絵になり、耳の穴からドローッと絵の具状の血糊が沸き出すカットがオミットされてますな。 さっきの死体置場に比べて、そんなにエグいかなぁ…

一気に飛んで、ザラトゾムの盛大なヤンチャ・フェスティバル。ここから先はもう修正の嵐です。まずはネグリジェ・ゾンビの首チョンパ。 この部分で止め絵になります。もうひと頑張りして首筋ギリギリまで見せてくれたらイイ感じだったのに…

サビーニ師匠が、ゾンビの首筋にナイフをブッスーと突き刺すショット。このシーンで白目をむくゾンビ、何度観てもトボケてていい感じです。しかし ここまで見事に刺さった所で止め絵にしても、あんまり意味ないような…

イヤッそうな顔して 首切られてるお姉ちゃん。 このカットでは首にナタが刺さりっ放しで 例の「直前ストップモーション」が使えないので、なんと画面の端にズームしてゴマかしてます。
これはアレですね。昔なつかし洋物ポルノ映画で、結合部からちょっと離れた お尻の肉あたりまで不自然にズームさせてたのと同じ手口ですな。 どうせなら、切られてる首のあたりに花瓶とか合成すれば良かったのに。
つっても、今のコには分かんないか。洋ピンでは、どう考えても不自然な部分に、花瓶やイスを合成して結合部を隠しておったのです。ボカシより手間要らずなのかな?

ピッツバーグ産の極上肩ロース、いっただっきま~す♪なショット。コレまた、この部分で止め絵ですな。

はい。『ゾンビ』の中でも残酷度ではレッドゾーンの、内臓ズルズルシーンであります。ここでは止め絵を連発! もっとも、一番ヤバい物は思いっきり映っちゃってるので、それを止め絵にした所でどうなろうってモンでもありません。むしろ、じっくり見せることでエグさもパワーアップ♪ という結果。(笑)

そうかと思えば、骨をガツガツ喰らってるシーンは素通りなんだよな。うーん。映倫の基準が分からん。 ちなみにこのショットは、DC版の公開時の目玉シーンとして写真をよく見掛けましたが、ホレこの通り、数十年前の日本公開時からキッチリ存在しておりました。

他の変更点としては、ラストのエンドロールがバッサリ切られ、モールの屋上を飛び立つヘリコのシーンでもって、ブッたぎるように終わってたりします。 余韻もヘッタクレもあったもんじゃないです。上映時間を短縮したかったのかもしれませんが、『ロード・オブ・ザ・リング』みたいにエンドロールが10分も20分も続くワケじゃなし。 何故にカットしたのかは 全くの意味不明であります。

そんな感じで、これが『ゾンビ』日本劇場公開版の、大まかな変更点でありまする。 観ていてつくづく思うのが、わざわざ修正を加えることで、結果的にはエゲツなさが余計にUPしてるってこと。ショッキングなシーンを、日常シーンと変わらない演出でサラリと見せ続けることで、観客の神経をマヒさせて行くロメロの方法論は、もちろんこの修正のせいで台無しになっております。

エグいシーンの度に、「ほれほれココがエグいシーンですよおぉ!うーわっ!なんてエグいんでしょ!おーヤだヤだ!」と、いちいち強調されてるう感じ。 ショック・シーンで「バーン!」とか「ドジャーン!」とか音楽を入れるような、安っぽいホラー映画のような下品さが漂い、オリジナルよりよっぽど残酷な仕上がりとなっておりますな。 モザイクが入ることで、余計にワイセツ感が増してるAVと一緒。ほんま、いつの時代もお上のやる事は…

ちなみに「このDVD、どこで手に入るっすかぁ?」というご質問は、恐縮ですがお控えくださるようお願い申し上げます。イジワルしたいわけではないですが、ほれ、タテマエって物が…
皆さん、ウサン臭いDVDには、手を出しちゃいけませんよ。大切な物が汚されて行っちゃいますよ。さぁさ、みんなで御唱和を!

私は、観ない。
私は、買わない…

【2022年7月8日 追記】
このバージョンは2019年に日本公開40週年を記念して、復元リバイバルされております。Blu-rayソフトは、クラウド・ファンディングのリターン品として限定リリースされましたな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?