2017放射線科専門医試験(一次試験)治療分野 解答・解説

・このnoteは放射線科専門医試験(一次試験)のうち、放射線治療分野のみに関して解答・解説しています。診断分野・核医学分野に関しては解説していませんのでご注意ください(問題番号1-4、86-105)

・主として放射線科専門医試験(一次試験)を受験する診断科の先生を対象としています。診断科の先生にとって放射線治療は馴染みのない分野であり、正直面倒なところでしょう。
・放射線治療医の立場から、ただ知識を暗記するのではなく論理的思考により答えを導き出せるよう解説しております。ただしどうしようもない選択肢もありますが…
・個人が調べた範囲の解答案ですので、誤植や間違いはご容赦ください。なお適宜アップデートしていく予定です

ご自身で調べるより、noteを購入していただいた方が費用対効果は高いはずです。

1
加速分割照射は小細胞肺癌に用いられる治療法です。というかこれ以外に加速分割照射をしているがんは経験ありません。重要なのは6時間以上開けて1日2回照射する、トータル45Gy/30回、CDDP+ETP(エトポシド)併用。6時間以上間隔をあけるのは、脊髄の亜致死障害からの回復を待つためです。答えはbです。

2
Biological effective dose(BED)= nd(1 + d/[a/b])です。過去の専門医試験をみるにつけても、この式を覚えておくのは最低限のようです。
これを変形すると =n(ad+bd^2)となりますから、正解はdですね。全部覚える必要はありません。最低限だけで良いのです。

3
半数致死線量は、投与した動物の半数が死ぬ量とのこと。放射線の場合は4Gyで半数、7Gyで全部です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E6%95%B0%E8%87%B4%E6%AD%BB%E9%87%8F

そんな放射線量は知らなくてもよいのですが、試験会場で必要なのは全身に放射線を浴びた場合に弱い臓器はどれか、という知識です。人体で一番放射線に敏感な臓器は造形系ですから、答えはaになります。

全身に4-12Gyを照射することを全身照射といって、骨髄移植前などに行われます。厳密には肺や水晶体をブロックしますが、目的は白血病細胞の死滅と免疫の抑制です。ですから骨髄はすごくダメージを受けるわけで、全身照射の目的を知っていれば回答できます。

4
ちょっと難しい問題です。下記の該当項目を読めば理解できます。
https://www.jsgs.or.jp/cgi-html/edudb/pdf/20100041.pdf

「また,細胞周期で 放射線感受性が異なるため,分割照射を行うと, 当初,放射線抵抗性であった S 期後半の細胞が, 感受性が高い G2 M 期に分布するようになる.こ れを再分布と呼ぶ.一方,酸素に富んだ細胞は, 放射線感受性が高いため,照射によって先ず死滅 し,腫瘍径が縮小する.それとともに初めは血管 からの距離が遠く,酸素分圧が低くて放射線抵抗 性であった細胞は,分割照射の期間中に腫瘍径が 縮小して血管に近づき,酸素化され,放射線感受 性が高くなる.これを再酸素化と呼ぶ」

ゆえに答えはb.d ですね。

a: がん細胞は正常細胞より分裂の再開が遅く,再増殖能が低いと考えられているが,治療休止などにより治療期間が延長すると,治療後半のがん細胞の再増殖能が加速される(加速再増殖)ために,がんの制御率が低下することが知られている.
c: 小細胞肺癌の脊髄の話です
e: 正常組織の方が,がん細胞に比べて回復力が強く,少量ずつ分割して放射線を照射すると,照射と照射との間に正常組織はかなり回復する.

86
この中で感受性が低いのはcとなります。
https://www.jsgs.or.jp/cgi-html/edudb/pdf/20100041.pdf

あまり難しく考える必要はなく、放射線治療が治療選択肢ではない=感受性が低いと考えて問題ないでしょう。甲状腺癌に対して外照射で治療することはまずありません。感受性があまりないとされているからです。

同様に腎癌、尿管がん等に対しても放射線治療が行われることはほとんどありません。これも感受性があまり高くないとされているからです。

平滑筋肉腫などのsarcomaも同様です。ただし手術以外には良い化学療法もないためか、上述のがんに比べると放射線をやる機会は多いかもしれません。

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