ロックンロール・マイ・ディア

「探偵を廃業する」
開口一番、ホームズがそう切り出した。
突拍子もないことを言うのはいつものことだが、とりあえず「何故?」と尋ねると、ウキウキした様子で部屋の奥からエレキギターを引っ張り出してきた。
「ロックンロールだよ、ワトソン。バンドをやるんだ」
「ホームズ。クスリはダメだと言ったろう」
「失礼な。今はシラフだよ」
そうか。すごく残念だ。
「メンバーだって決めてある。ギターが私、シャーロック・ホームズ」
ホームズがギターをかき鳴らす。

「ベースがモリアーティ」
「モリアーティだって?」
私は飛び上がるほど驚いた。
「何言ってるんだ、極悪人じゃないか」
「ロックの前では些細なことさ」
こともなにげに言う。私は頭を抱えた。

「ドラムがレストレード警部」
「レストレード警部だって?」
私は飛び上がるほど驚いた。
「何言ってるんだ、この街の治安はどうなるんだ」
「ロックの前では些細なことさ」
こともなにげに言う。私は頭を抱えた。

【続く】

#逆噴射プラクティス


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