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中華マイクNEEWER NW-800の高性能化

【コンデンサマイクの高性能化】(ハイライト)アマゾンで買った2300円のコンデンサマイクです。この中華マイクには、安価なECM(エレクトレット・コンデンサマイク)ではなく、15mm口径の「本物のコンデンサマイク」が使われています。残念なことに、なかに組み込まれたプリアンプ回路に問題があり、そのままでは雑音が入るようです。ノイズの原因を除去しまして、生ギター用の高性能マイクとして使えるようにしました。どうぞ写真をご覧下さい。

NEEWER NW800コンデンサマイク図0


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【以下は長い説明です。興味の無い方は読み飛ばして下さい。】
コンデンサマイク「NEEWER NW-800」です。ファンタム電源駆動の本格的なマイクですが、価格はたったの2300円(送料込み)です。通常の電子機器には「コンデンサマイク」を謳いながらも、実際には本物のコンデンサマイクを使っていません。高価な機器も含めまして「ECM(エレクトレット・コンデンサマイク)」です。安価で小型のコンデンサマイクチップに、安価なFETが組み込まれたものが使われています。どんなに高価な機材でも、そのなかで使われている部品の単価は高々20円程度です。マイク本体の口径が小さいので、高音は綺麗ですが、楽器の超低音をうまく捕捉できません。回路の性能が良いので、クリアに聞こえるますが、ライブハウスなど大口径のスピーカで鳴らすと、その違いがわかります。

図1

驚くことに、この安物の中華マイクには、15mm大口径の「本物のコンデンサマイク」が使われています。ところが、なかに組み込まれたプリアンプ回路に問題があり、そのままでは雑音ばかりで使い物になりません。販売サイトにも悪評が沢山書かれています。今回は、ノイズの原因を除去しまして、生ギター用の高性能マイクとして使えるようにします。


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ファンタム電源は48ボルトもの高い電圧です。昔は高性能なアンプが無く、コンデンサマイクの駆動にはこの電圧が必要でした。しかし、いまの電子回路は数ボルトで動きます。このマイクに仕込まれたプリアンプも、実際には6~8ボルト前後の低い電圧で動きます。そのためファンタム電源から送り込まれた48Vを、低い電圧に下げる回路が組み込まれています。


48Vを急激に8V前後に落とすため、回路がその「落差」を吸収できずに、電源に大きな変動が発生し、それがノイズになります。普段の暮らしでも、小さなコップに大量の水を入れたら溢れますよね。おそらく、コップが一杯になったら、瞬間的に空っぽのコップに交換すれば良いはずです。ところが、コップを交換する動作がわずかに遅れるので、まわりが水浸しになってしまいます。電子回路の場合は、あふれた水はすべて熱になります。「サー」というノイズは、熱によるノイズです。


具体的には、ノイズの原因は2つあり、1つは電解コンデンサであり、もう1つは電圧降下用のツェナーダイオードです。この2箇所を交換すれは、高性能な本物のコンデンサマイクに生まれ変わります。


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中身を開けました。ECMではなく、確かに本物のコンデンサマイクが使われています。また、マイクユニットの初段の増幅用に2SK596という銘柄のJFET(接合型電界効果トランジスタ)が使われていました。この素子は、コンデンサマイクのドライバ専用に(かつての)三洋が開発した高性能FETです。ソースとゲート間に「150GΩ(1500億オーム)」という巨大な抵抗値のバイアス抵抗が入っています。優れものです。NEEWERさんはおそらく良心的なメーカーと思われます。(通常のECMにもこの150GΩを入れればよいのですが、単体の部品では超高価になってしまいます。)

図2

まずは、電解コンデンサという電気を蓄えるパーツ(写真の円筒形)を、ニチコンのオーディオ専用電解コンデンサ「FWシリーズ」に交換します。

図3

図4

つぎに、基板を裏返しますと、「サー」という大音量のノイズの原因となる「ツェナーダイオード」が使われています。小さな部品です。これを半田コテで外しまして、もとの電圧を再現できる固定抵抗に差し替えます。抵抗値は5~8kΩです。手元にあった金属被膜抵抗に交換しました。

図5

図6

図7

図8

また、コンデンサマイクユニットのまわりに防振材をつめました。これで作業終了です。部品代は、コンデンサが2個で70円、抵抗が1円、防振材が20円位で、合計91円でした。(今回は扱っていませんが、おそらく、マイク筐体のなかに、ふわふわした吸音材等を詰めると良いはずです。マイクのことは詳しくないので、よくわかりません。)

図9

【自分でも試してみたい方へ】ノイズ対策としましては、ツェナーダイオードの交換のみで大丈夫です。コンデンサの交換はしなくても良いでしょう。なお、部品につきましては、秋葉原の「秋月電子 akizukidenshi.com 」、「マルツ www.marutsu.co.jp 」等で購入できます。また工具類につきましては、半田コテがダイソーで330円、電子部品用ハンダ、ピンセット、ラジオペンチ等も同じくダイソーでそれぞれ110円で入手できます。なお、慣れないと失敗もありえます。本サイトは責任を負いかねますので、ご自分の責任で実施願います。

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ベリンガー(BEHRINGER)製のモデリング・マイクプリアンプ「MIC800-MINIMIC」につないでみました。ゲインを一杯にあげてもノイズはありません。非常にクリアな音です。低音も綺麗に採れています。これを、改造したコンデンサマイク→ベリンガーのプリアンプ→iRig→iPhoneのように繋ぎまして、動画撮影時に使ってみようと思います。