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【ダイナミックマイクのアクティブ化】

すみませーん。また、どうでもよいマイクロホンの話です。写真だけ見ていただけるとありがたいです。


最近マイクロホンをいろいろ試しています。今回はダイナミックマイクロホンです。ダイナミックマイクは大音量や超低音まで綺麗に捕れるという長所があります。ところが、どうしても音が曇って聞こえます。コンデンサマイクに比べると圧倒的に「音の明瞭感」が足りません。原因の大部分は、マイク内部でトランスが使われていることと、マイクの出力不足によります。今回は、チープな中華マイクですが、音の明瞭感を損なわないように、その性能をコンデンサマイクレベルまでレベルアップします。


先般、マイクケーブルの途中に、コネクタ式で脱着可能なアクティブアンプを作りました。マイクのゲインは20dB(10倍)です。使ってみました。高音弦の音は綺麗に捕れています。一方、低音弦の音については、トンネルの中で鳴っているような曇った音に聞こえます。原因は2つです。マイクロホンユニットとアンプ間にロスがあること。もう1つは、アクティブアンプの出力の余力、つまりアクティブアンプの「ワット数」が足りません。大きなパワーを持つ低音弦の音の場合、アンプの増幅能力の上限を超えています。大音量でも線形に増幅できるようにワット数を増やす必要があります。

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そこで、まずはアンプの入力段のインピーダンス(交流抵抗)を下げ、マイクのインピーダンスと一致させます。ダイナミックマイクは、スピーカと同じ構造です。スピーカの場合は、磁石の中に円筒形の小さなコイルがあり、電流を流しますとコイルが電磁石になります。周りにある永久磁石との間で引力や斥力が発生し、コイルが前後に動いて音を発します。ダイナミックマイクの場合は、磁石の中にあるコイルが前後に動くことにより、コイル内に音量に比例した電圧が発生します。


ところがコイルの巻き数が非常に少ないので、インピーダンスがとても小さい。通常のダイナミックマイクでは、トランスを使って、インピーダンスを600Ω(オーム)まで引き上げます。トランスを使いますと、その性質上、電圧と電流間に90度の「位相遅れ」があり、どうしても音が曇ってしまいます。SHUREのSM57のような楽器用の高性能マイクであっても、内部でトランスを使っているので、音の劣化が必ず発生します。

今回は、トランスを使わないで、コイルから直結回路とします。アンプ側の入力インピーダンスを下げるとともに、マイク直近にアンプを取り付け、その性能を上げることで、音のロスをなくすことにします。また回路で使われているFETを超ローノイズタイプに変更し、ノイズの発生を抑えます。

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アンプの電圧は48Vまで使えるので、電圧の余力は十分にあります。ファンタム電源につながる最終段のトランジスタを2段重ね(ダーリントン接続)にして、ここで10~20dBほどゲインを稼ぐことにします。アンプの出力に十分な余力ができますので、低音の大きなパワーが作用しても音が曇ることがなくなるはずです。

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これらの回路をマイクロホンのなかに仕込んで、完全にアクティブマイクにします。

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ダイナミックマイク本体とアンプ間のロスが減ったせいで、高音から低音まで綺麗に捕れるようになりました。5弦、6弦を大音量で弾いても綺麗な音です。またマイク内部で30dBほどゲインが稼げるので、マイクプリアンプのつまみは半分(12時くらい)で音量的には十分になりました。今回は、中国製の安価なマイクですが、インピーダンスをマッチングさせ、トランスなしで直近にアクティブアンプを取り付けることで音の劣化を減らし、概ね遜色ないレベルまで性能改善できました。

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