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moto氏によるメディア売却の注目点

2021年3月30日、moto氏こと戸塚俊介氏が経営するmoto株式会社ログリー株式会社へと売却されることが発表されました。

今回moto社を子会社化したログリー社はネイティブ広告プラットフォーム「LOGLY lift」やメディア用分析ツール等を展開する企業です。
一方のmoto社は、moto氏の発信媒体のひとつである「転職アンテナ」の運営元です。

moto氏による今回の事業売却の意図や今後の注目点について、「売却額」「記事数」「両社のシナジー」の3つのポイントに着目してみていきます。

10億円の売却額

今回の売却額は約7億円+成功報酬3億円の計最大10億円です。

一般に、Webメディアの売却額はメディア売上高の1~2年分ほどと言われています。実際、Webサイトの売買を取り扱う「サイトレード」に掲載されている売買案件を見ると、売上高の1年分、ないし月間PV数×100前後の金額で取引されていることが多いようです。

これに対し、「転職アンテナ」は過去のインタビュー記事やmoto氏の発言から、月間PV数は約100万PV、売上高は約5億円と推定されます。PV数、売上高のみを考慮すれば、売却額は妥当なようにも見えます。

記事数への評価

一方、「転職アンテナ」には記事数が極端に少ないという特徴があります。2021年4月2日現在の記事数は20記事弱と、他のWebメディアと比較しても非常に少ない記事数です。さらに、この記事数は2018年の開設当初からほとんど変化していません。

少ない記事数で多くのPV数を獲得し、億単位の売上高を実現している点は評価ポイントとなりそうですが、記事数の増加がないメディアに対して一般的には懸念もあるのではないでしょうか。

ログリー社とmoto社のシナジー

では、ログリー社とmoto社は、それぞれどのような点を期待して今回の決断に至ったのでしょうか。

まず、ログリー社はプレスリリースにて、子会社化後の展望として以下の点を挙げています。

・広告プラットフォーム「LOGLY lift」を通じた転職サービス市場への広告配信
・ログリー社が保有するビッグデータ解析技術による、「転職アンテナ」のユーザー分析
・ログリー社のメディアグロースのノウハウを活用

これに対し、moto氏は事業売却の意図として以下の2点を挙げています。

・転職アンテナを継続的な事業にするため
・自分の事業への投資を行うため

ほとんどmoto氏個人で運営されていた「転職アンテナ」をさらに成長させるためにメディアを売却し、さらに新規事業として親和性の高い事業を展開すると語っています。

また、moto氏のnoteに書かれているこの一文に着目しています。

”そして出会ったのが、ログリー株式会社です。
事業だけでなく僕個人に対する理解を示してくださり、事業におけるシナジーや親和性、今後の取り組みとしてHIRED社の未来も含めて検討してくださいました。”

moto氏は「転職アンテナ」のほかにもSNSや書籍等で情報発信をしており、個人の信用度も高い印象です。ログリー社のプレスリリースにてmoto氏個人の紹介に多くの文章を割いていることからも、「転職アンテナ」自体のみならず、moto氏の将来性への評価が買収の決断に大きく影響しているように見受けられます。

「今回の買収がログリー社の事業グロースに繋がるか」「少ない記事数で運営されてきた転職アンテナをどのような手段でグロースさせるのか」「moto氏個人の活動がログリー社の事業にどのような影響を及ぼすか」等が今後の着目点になりそうです。

参考リンク


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