徒然草をひもといて 5章25 177段・・雨降りて後・・・

 肩書は抜きにして、中務卿宗尊親王の御所で、蹴鞠を挙行することになっていたが、折しも雨が降り、競技場の庭園、土が濡れてしまい乾かない、どうしようか?と沙汰があった。という話、まず近臣で蹴鞠奉行の佐々木隠岐入道が、鋸屑をどっさり車に積んで奉り、庭一面に敷いたので、泥土にまみれる心配なしに行事が済んだ。「おがくずを取り溜めていた用意のよさ、めったに無い心がけよ」と人々が感心した。
 ところがそのことを誰かが、語ったら、吉田中納言は「乾いた砂の用意はなかったのかね」と云われ、おがくずに感心していたわたしも恥ずかしかった。立派と思い込んだおが屑は下品で、蹴鞠の席にふさわしいとは言えない。庭の行事をとりしきる役人たる奉行が、乾いた砂を用意するのは、故実のきまりだという。
 たしかにおが屑は、やがて濡れそぼち、ぐちゃぐちゃになることだろうし、こんなときは砂のほうがいいとはわかるけれども、大量の砂を乾いた状態で保存するのも大変、
 いづれにせよ、現代でもスポーツ万端にわたり、楽しみの蔭に、裏方の準備はご苦労なことと思う。ともあれ、昨日も大谷翔平さん大活躍で満場をわかせていた・・・。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?