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管理不能支出とな(「インベスターZ」より)

代表の山本です

もう1月も末に近づいてきたのでちょっと前の話になりますが、年末年始にドラゴン桜で有名な三田紀房さんの漫画『インベスターZ』がKindleでセールしていたので買って読みました。

単なる株式投資のテクニカルが題材なのだと思い込んでいたのですが、いやはや、投資とは、お金とは、経済とは、会社経営とは、ベンチャーとは、組織とは、国力の発展とは、後継者選びとは….いろんな経済テーマが書いてあって、「すごぉ…」を連発しながら読みました。投資部の初代主将の龍五郎、スゴすぎです(気になる人はどうぞ読んでください)

それで、今日は僕が一番印象に残ったシーンを紹介するのですが、それがかなりの脇役の人々しか出てこないシーンでして。久保田さん(さくらちゃんのお母さんですね)が経営を譲ってもらった喫茶店で、お客さんの斎藤さん(貯金ができないと嘆く主婦)と貯金についてやりとりするシーンなのですね。18巻の後半あたり。マニアックすぎるでしょう?メインストーリーから傍に逸れた箸休めみたいなストーリーなんですが、なぜか通しで読み終わっていま思い返すと、そこに一番心をえぐられたと感じたんですね。貯金って、もうそれ投資関係ないじゃんって感じはしますが。でも印象深いものは仕方がないので、ちょっとお付き合いください。

まず久保田さんが「お客様にこんな上から目線で言ってしまっていいのか…」とか予防線を張りつつグサッと言い放った数々のセリフに悉く僕の心はえぐられたわけなのですが、まず事の発端としては、窪田さんは貯金がうまくできないとボヤく斎藤さんにお金を貯める極意が書かれた本田静六氏の名著を貸すんですね。その後日、久保田さんが斎藤さんにもう読みましたか?と聞くと斎藤さんは「読もうとは思っているんだけどまだなのよね」的なことを言うわけです。その後回しにした斎藤さんに久保田さんは言い放ちます。

「そもそも借りた本をすぐに読まない人にお金は貯められません」

まずこれで完全にやられました。グサッ。夏休みの宿題で毎日コツコツする訓練を子どもの時からやってきた人が貯金ができる、と久保田さんは斎藤さんにさらなる追い討ちまでかけます。グサッ。

で、続くセリフで久保田さんは斎藤さんはいわばお家ではCFOなのだから、CFOとして家計支出を「管理可能支出」と「管理不能支出」に分けましょう、と言い出すのです。

管理可能支出
"食事や洋服代 趣味の費用など財布から出て行き月によって金額が増減するお金"

管理不能支出
"家賃や自動車・住宅ローン 携帯や光熱費の基本料金などは契約で支出金額が固定され主に銀行口座から引き落とされる"

インベスターZ 18巻 credit 160より。 ""囲んだ部分は原文ままの抜粋です

どうでしょう。そして久保田さんは「管理不能支出を徹底的にリストラしましょう」というわけですね。食事や家族のお小遣いなんかの管理可能支出を削るやり方では必ず失敗すると。ストレスが溜まり家庭の空気を壊してしまうと。リストラとは削るのではなく「やめる」。そしてやめるのは管理不能支出だというわけです。その後のやりとりの具体例として、車売っちゃって大胆にカットしましょうと。生命保険、医療保険も解約しちゃえと。(生命保険についてはこれまでの掛け金が無駄になることに関しての損切りが言及されていたのでやはり投資の話とつながっているなとは思いましたが)

どうですか?僕は情けないことに、コストには管理可能支出と管理不能支出がありますと久保田さんが最初に言った時、なんとなく管理可能支出を削っていくんでしょ、と瞬時に思ってしまったんですね。読み進めて見事に裏切られたわけです。

補足すると、この斎藤さんが悩んでいるシーンというのは息子さんが海外の大学に留学したい、そのためにあと半年で1年分の授業料200万円くらい貯金で貯めるには、みたいな話の文脈なのです。結構シビアな貯金プロジェクトなわけですね。なるほど管理不能支出は「不能」だからこそそもそも止めちゃいなさい、と。聖域なきコストカット。ぐうの音も出ないですよね。

以上が漫画の中の概要なんですが、なぜ僕に取ってここが印象に残ったのだろうと考えてみると、僕のこれまでの常識の中には「変動費/固定費」とか「ないと困る/なくてもいい」とかのラベルしかなかったというのが大きいです。どうしても僕は会計かぶれているのでよく変動費・固定費という言葉には出会うのですが、そもそも会計用語における変動か固定かというのは、売上が1単位変動するにあたって比例して変化する性質のコストを変動費、そうでない固定的なものを固定費と呼び、いわば管理会計での話の中でよく出てくる単語(概念)ですね。もちろんこれはこれで中堅〜大企業を中心に必要な経営管理です。ただ、中小企業の経営者にとってのコスト管理の感覚としては久保田さんのいう管理可能か管理不能かの区分けのほうがよほどしっくり来るな素直に感心したんです。また、コスト項目を「ないと困る/なくてもいい」に分けるのも判断する人の主観になりやすいですし、実際、作中で「やめるべき」と久保田さんがバッサリと提案した自家用車などは、甘めに考えると「ないと困る」に分類されてしまいますから、そうなると削るのは難しいねとなります。これでは貯金(会社だと利益創出?)はできないよと言われているようで、グサッっと来た、というのが根底にあるのかなと分析しました。

もちろん、企業活動は売上を上げるためにコストをかけるわけなので、収益を産むことを想定していない家計のコストのように単に切り詰めればいいという話ではない、同じ目線で論じるのはナンセンスだというツッコミはあるかもしれません。でも思い出してください。昨今はクレカ決済によってSaaSツールをサブスクすることも増えました。知らない間に久保田さんのいう管理不能支出が積み上がっているというシーンは枚挙にいとまがありません。肝に命じるべき金言ではないでしょうか。「管理不能支出を徹底的にリストラしましょう」

さあ、いますぐクレジットカードの利用明細をチェックしましょう

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