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少子化問題を解決するには、まず雇用問題改善するのが先決

(この文章は、2007年に書いたものを改訂しました。)
少子化を政府が迅速に対応しなければならない問題と始めて何年か経過している。

しかし、国民全体規模では、出生率の低下が止まらない状態で、1971年の2.16から、2006年には約4割減の1.32になっている。2016年には1.44まで回復したが、2006年は人数で見ると1971年には約200万人だったのが、90万人減って、110万人程度になっているのだ。
少子化は、女性のライフスタイルの多様化などが要因に挙げられるが、一番の問題は経済的問題だろう。

年収200万円、300万円では、辛うじて結婚できたとしても、子供を産んで、育てていくコストが捻出できない。大学まで一人の子供の面倒を見ると、少なくとも1000万円は掛かると言われている。富裕層であれば、大した額ではないかも知れないが、もし、年収200から300万円であれば、この額を捻出するのはかなり難しい。

正社員であれば、配偶者と家族がいれば、企業から家族手当や処遇改善手当が支給される場合もある。ただ、気になるのは配偶者に対する支給額の方が子どもに対する家族手当の支給額より多い会社が大半であるということだ。自分では生活できない子どもに対するよりも多く扶養手当を支給する必要があるのだろうか。

それでも、家族手当の他にも国から児童手当がもらえる分、恵まれている。家族手当が支給されない非正規社員は、児童手当しかもらえないのだから。

実際に、保育所の待機児童が問題になっているにもかかわらず、保育料の滞納者が増えているという現実がある。保育料は、収入に応じて変わる。それにもかかわらず、保育料を納められないのは、保護者のモラルの問題で片付けられるものではない。

医療面では、自治体規模で違いの大きい医療費全額免除の乳児医療制度を改革し、自治体が子供の医療費を全額負担する年齢を引き上げるだけでも、病気になりやすい子供を持つ親は救われるはずだ。

男性の育児休暇制度を積極的に認め、男女が平等に働きながら子育てをする環境を整えている企業は増えつつあるが、それは正社員だけの話であって、いつもで切り捨てられる非正規社員には、子育てに十分な制度を整えている企業は存在しないだろう。

正社員と非正規社員の格差問題は、悪しき連鎖と格差の固定化が生じる要因となる。親の収入が低いばかりに、子供が希望の学校に進学できず、低所得者の子供は、同様に低い所得にあまんじるケースが多くなるだろう。

成果主義の揺り戻しで、終身雇用制度の見直しが成され、就職の際に最終学歴の影響力が復活してきた。このような現状を考えると、親の所得が子供の教育、就職に大きく影響してくることになる。子供が望んでも満足な教育が受けられないといったような教育格差をなくすためには、奨学金の充実が急務なのだ。

以上のことを熟慮して、子供を産むか産まないかを考えれば、自分には子供がいない方が良いと考える女性、夫婦が増えてくるのは当然だろう。

子供を育てるには、とにかくコストが掛かる。それゆえに、格差が激しい状態で、さらに福利厚生が貧しい中での子育ては本当に厳しい。

まずは、非正規社員に対する福利厚生の充実、正社員雇用の増加などを企業と政府が連携して対策を講じなければ、少子化問題はどうにもならない。正社員と同様の仕事をしていても非正規社員の待遇は低く抑えられてしまうケースが多い。非正規社員に税制面での優遇制度や、能力・成果に応じた報酬制度を導入しなければ、ワーキングプア問題だけでなく、少子化問題も解決の糸口すらつかめない。

企業および政府は、アメリカの意向にしたがって、市場原理・規制緩和を闇雲に推し進めるだけでなく、日本の将来のためにも、都合良く使ってきた非正規社員に対する待遇改善、雇用条件の充実、安定化を図るべきだろう。
それが少子化問題改善の端緒になるのは間違いない。

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