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STEAM教育の開発5~中学生レベルから

機械の動く仕組みを学ぶことは、STEAM教育においても重要となります。
例えば、次の図に示すような円筒から人形が頭を出しているとき、円筒の側面から出ている棒を回転させたときに、人形の頭を上下に動かすためには、?の部分にどのような動くしくみ(メカニズム)を作ればよいでしょうか?

もちろん、答えは一つではありません。自由な発想でアイデアを出してみてください。できれば、実際につくるときの材料や加工法なども考えながら。

頭を上下に動かす人形のメカニズム

答えはいくつも考えられると思いますが、ここでは考えられるものを2つ紹介します。

カム
カムは円形や楕円形、卵形などをした部品であり、その輪郭に沿って、従動することで、回転運動を上下の往復運動に変換します。輪郭の盛り上がる距離で上上下能動距離も決まります。カムが円形の場合には輪郭が上下に変化することがないため、中心にある軸の位置を少しずらすことで、上下の変化を生み出します。

カム

クランク
クランクは棒をコの字に曲げたような形をしており、同じく回転運動を往復運動に変換できます。上下に移動する距離は、コの字の曲がる部分の距離で決まります。

クランク

いかがでしたでしょうか。この2つのどちらかでも思い浮かびましたか?もし浮かばなくても、このような課題を考えることが楽しかった人は機械設計のエンジニアにある素養があると思います。実は円筒から出ている棒の端部も曲がっていてクランクになっています。このハンドルの形がなかったら、棒をそのままつかんで回さないといけないので大変ですよね。また、鋭い人は自転車をこぐ部分にもクランクが使われていることに気づいたことでしょう。

さて、それではせっかくなので、クランクを用いた機構モデルを作ってみましょう。

往復スライダクランク機構の設計・製作
機械の運動の基本は、往復運動を回転運動に変換することです。ただ形を真似るだけでもよいですが、ピストンの上部が描く軌跡である行程容積を50~60cm3にするという条件で製作すると、機械設計の課題として取り組むことができます。

使用するもの
・厚紙 ・丸棒(直径10mm)・接着剤 
・糸のこ ・はさみ ・カッター ・コンパス

往復スライダクランク機構モデル

下記の動画のような動きをさせることができたでしょうか?

実はこの機構模型は私が工業高校に勤務しているときから題材としているもので、これまでに5000人ほどの生徒が取り組んできました。このYouTube動画のアクセスが多い(現在2.8万アクセス.2022/12/1)理由は、製作できた後に「このメカニズムが実際に用いられている機械を調べてきなさい」というレポート課題が出されるため、往復スライダクランク機構と検索してたどり着いたものと思われます。

今回初めてこの課題に取り組んだ皆さんもぜひ考えたり、調べたりしてみてください。自動車好きの方はもう気が付きましたね!

さて、実際に作ってみるのが一番おもしろいのですが、最近はとても便利なソフトウエアが無料で使用できるようになっていて、この往復スライダクランク機構をコンピュータ上で作図して、実際に動かしてみることができます。

学生・教職員は無料で使用できるAUTODESKのFusio360という3DCADを活用してモデリングを行い、実際に機構シミュレーションを行ったものを紹介します。作図手順もFabbleに詳しく紹介しているので、意欲のある方はぜひチャレンジしてみてください。実際に動くと楽しいですよ。

往復スライダクランク機構のモデリング

Fabble


ここまでで、設計では数学M科学S(物理)を活用しながら、や工作E技術Tの要素をフル活用したことでしょう。ところで芸術Aの要素はどうしましょう。この点については最初の課題に戻って考えてみてください。人形の頭の部分をモノに変えてみたり、色を変えてみたりすることで、まさにARTと結びつきます。

私がこの機構模型を20年以上取り組んだ中には、1つの機構では物足りなくて2つのシリンダにした生徒や、クマのプーさんみたいにしたいといって、オレンジと茶色の厚紙で製作して、頭部をプーさんにした生徒など、強者がいました。今頃、どこかで活躍していることでしょう。

というわけでは、これは長年、技術教育に取り組んでいる私の思いで深い、定番の題材です。このたび、STEAM教育の題材としてまとめることができて嬉しく思います。各地に広がるといいな。


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