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新北市立永和国民中学を訪問してきました

2017年9月、国民中学における教科「生活科技」と自造者教育の取り組みに関する理解を深めるため,新北市立永和国民中学を訪問させていただきました。学校が所在する新北市は台湾の首都・台北市を取り囲んだ衛星都市であり,ここは台湾最大の行政区である。1968年に創立されたこの国民中学は全校生徒が約3300人の大規模校であり,各学年は約40学級,1学級の生徒数は30名程度です。なお,校長,教頭ともに女性,「生活科技」の教員も10名中4名が女性でした。校舎内を見学した後,「生活科技」の教育内容と自造者教育の取り組みについて,詳しく伺うことができた。

街中の学校でしたが、校舎内に大きな鳥がいました。最初は置物かと思いました。

自造者教育について

3Dプリンタが並んでいます。

大型のレーザー加工機が2台もあります。

この学校では2014年より,これまでの手わざを中心に学ぶ教育内容だけでなく,デジタルファブリケーション機材を活用した自造者教育にも取り組んでいます。「生活科技」の必修内容ではまだあまり活用されていないようでしたが,学内には3Dプリンタが約10台,大型のレーザー加工機が2台あり,弾力的な学習時間において活用されはじめています。これらの取り組みは日本でいう新学習指導要領に相当する十二年国民教育科技領域課綱草案の実施を踏まえて,自造者教育の拠点校としてこれらの機材を活用した教員研修が連日開催されています。具体的にはレーザー加工機や3Dプリンタの基本操作実習、デザイン思考を重視したLEDスタンドやスマーフォンの音声を増幅する木工作品などがありました。なお,活動の様子はFacebookの公開グループ「永中 I make」「永和國中自造教育及科技中心」にて,積極的な情報発信が行われています。(この訪問後、この施設はより立派になったようです)

中学「生活科技」の教育内容

この学校での「生活科技」の単位数は,各学年1単位の合計3単位です。各学年で学ぶ内容を次に紹介します。なお,台湾の国民中学では日本の中学1~3年に相当する学年を7~9年で示します。

国民中学7学年の前期には,立体を投影図に表す製図を学んだ後,椅子や机などの小型模型を紙や木材で製作します。後期にはゴム印製作や手作業による製本,スクリーン印刷などに加えて,3DモデリングソフトウエアであるSketchUpを使用して部屋の間取り図などのモデリングを行います。8学年の前期には7年次の模型製作を発展させて木材加工による実用的な家具やおもちゃの製作を行います。また,銅腐食版画や磁石で付くプラスチック製品なども製作します。後期には厚紙や段ボールなどで橋を製作して,耐えられる荷重を競うブリッジコンテストを行います。9学年の前期には,乗り物をテーマとしてソーラーカーや水ロケット,紙飛行機などの製作を行います。また,クランク機構やカム機構で動くオートマタの設計を行い,木材で製作行う内容もあります。後期には電気回路の基礎を学び,交流の照明機器や直流のLED照明機器の製作を行います。

それぞれの設計・製作においては,丁寧に時間をかけてものづくりの技能を高めることよりもイノベーティブなアイデアを生み出して,素早くプロトタイプを作るデザイン思考が重視されている。問題解決能力を高めるこの取り組みは,STEM教育にも通じると考えられる。

最後に皆さんで記念撮影をしました。謝謝。

校庭も広く、大きな学校でした。



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