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ハード・ワーク時代

「どつかれさまです」
 一昔前は(おつかれさま)だったが、今ではそんな生やさしいものではなくなった。そこで極度の疲れを労う気持ちから進化形として「どつかれさま」が広く使われるようになった。新しい言葉は次々と生み出されていくものの、世間は相変わらず人手不足が続き、一人一人が酷く疲れている。それが一人三職の時代と言えた。

「はい。しばらくボール遊びをしていてね」
 元気の有り余った園児に遊び道具を与え、その隙にモニターに向かう。
「4人同時に行います」
 遠隔操作で簡単なオペをさばく。結果はスピードにかかっている。5分ほどで無事にすべてのオペを終える。すぐさま画面を切り替えると私はざっと罪状に目を通す。「どうですか。皆さん、まとめます」
「懲役140年に処する!」

「先生! 一緒にあそぼーよ!」
 エプロンを引っ張られて足下の世界に帰ってきた。
「はい、はい。もう判決出たから大丈夫だよ」
「先生、かくれんぼしよー!」
「ああ、いいよ。かくれんぼしよーね」
(遊べる間にたくさんたくさん遊んでおくんだよ)
 大人は遊ぶ余裕もない。
 明日は臨時国会。
 思い切り野次でも飛ばそうかな。




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