見出し画像

からくりカラアゲ

 注文が入り、レジを開けて唐揚げを作った。その横から別のお客さんが入り込んできた。
「お金が2枚飛んでいったんです」
 レジの中を探るとおかしなところに4枚の札があった。
「4枚ありましたよ」
 札を手早く引き取ると女は笑顔もなく足早に去っていった。
(しまった!)
 彼女は自分のとは言わなかった。なのに僕は思い込みから札を彼女に手渡してしまったのだ。これはすっかりやられてしまったぞ。
 だが、冷静に考えてみると自分を責めるよりも、このシステムを疑うべきではないだろうか。
 そうだ! システムがわるい!
 レジの中で作るシステム!
 横から入れるシステム!
 なんじゃこりゃー!

「帰らないのですか?」
「専務が今日あげると言ってます」
 そんな無茶苦茶な……。
「徹夜したんだから帰るべきですよ」
 みんな疲れ切った顔をしていた。
 帰ろうよ。帰ろうよ。
 僕は社内を訴えかけながらまわった。社会を帰るためには、小さな勇気が必要だ。どうなってもかまわない。覚悟を決めていこうじゃないか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?