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道草知らず

 自由な犬が道草を食いながら歩いていた。1日分の道草を思う存分楽しむように、熱心に食って回る。本当はもっとゆっくりと食いたいのだったが、先を行くご主人様が歩みを止めないので、そうゆっくりもしていられないのだ。少しは立ち止まり深呼吸でもすればいいのに、後ろを気にせずどんどん先に行ってしまうため、自由な犬はゆっくりと留まって道草を食うことができなかった。
 名残惜しい道草を食い食いしては、先を行くご主人様の背中に続く。
(まさか本当に自分を置いて行ってしまうのではあるまいな)
 自由な犬は不安から道草に集中できない。興味深い道草を食いかけた時も、ご主人様はその魅力にあまりにも無関心のようだ。道草が足りない。けれども、自由な犬は少し太り気味なのだった。





前進にとらわれている人の背に今日のところはくっついていく

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