龍驤さんは鎮守府の守り神(その5)

「姉者どうした、誰か殺しに来たのか?」
 大和を見つけて開口一番、武蔵は訊ねた。
「あらぁ武蔵ちゃん、最近はさっぱりなのよ。」
「そうか、私の方もサッパリだ。」
 
「殺害から離れられへんのかあの姉妹は。」
「挨拶代わりに殺す殺すって言ってますね。」
 泥棒かぶりの葛城が言う。
 二人はハラハラしながら廊下の角から見守る。
「姉妹とも動力は150,000馬力ちゅうこっちゃけど、脳みそは陸さんのチハタンエンジン並やさかいな。」

「ちょっとお話でもしない、武蔵ちゃん。」
「たまにはいいな、姉者」
「そこ通して。」
ぶぉん
 武蔵の15cm連装副砲が空中に具現するやいなや大和の15cm連装副砲もまた瞬時に具現する。

「アホか!なんも話きいとらへん!」
「龍驤先輩、まずいですよおー!」
「アカンで、水偵が飛び出しおった。」

 両者の水偵があたりを飛び交う。
 これは大和型が戦闘状態になったときに放つ殺気のようなもので、これが飛び交い出すのは彼女らが殺すモードになった証である。

「姉者、どういうことだ。」
「ん~っとお、忘れちゃった。」

「(忘れたんかい!)」
 龍驤は小声でツッコみ、葛城は盛大にずっこけた。

「私は提督からここは誰も通すな、と命じられている。」
「私もその誰かに入るのかしら?」
 大和は整った顔にこぼれんばかりの笑みをたたえてかしげた。
 龍驤は遠目にそのかしげた顔に見とれる。

「ん??あれ、入るのか?あれ、まてよ。」

「(入るにきまっとるがな!)」
 龍驤は中声でツッコみ、葛城はさっきずっこけた姿勢からさらに海老ぞりにのけぞった。

「ん~~私は入ると思うな~」

「アホか!じゃあ聞かんといたれ!」
龍驤は大声でツッコみ、葛城は海老ぞりのまま大和達に向かって転げ出た。

「誰かいるのか!」
 武蔵の厳しい視線がふたりに注がれる。
「あ、みつかってもうた!」
「まずいです!」

「あはは、龍驤ちゃんたちいたのね!
 じゃあ撃っちゃおっか、ミーティングルーム。」
「なんでや!」
「龍驤、葛城!お前ら提督を害そうと姉者をたきつけたか!」
「ちゃうちゃう!」
「ち、違いますー!」
「えーだってさっき提督殺そうって龍驤ちゃ」
「ゆうとらんわ!!」
「ええい面倒くさい、要はおまえら全員殺せば解決ということだ!」
 武蔵の15cm連装副砲が龍驤達を狙う!
「あわわわあわわ私復員船でもなんでもやるんで命ばかりはー!」
「まてえや、武蔵!お前の任務はなんや!」
「あれ、なんだっけ・・・いきなり言われると忘れる。」
「いまのうちや、葛城逃げるで!」

「ああ、そうか。通すなとは言われたが提督を殺害から守れとは言われてないな。じゃあ別に良いか。」

 逃げる運動エネルギーを発進させていた二人は盛大に転んだ。
「いいんかい!」
 龍驤が顔を上げて叫びツッコミを入れた。

「すまんすまん、任務外の事でお前達を排除するところだった。」
「じゃあ撃っていいの?」
「うーん、砲弾は「誰も通すな」の「誰」に含まれないだろうから、別にいいのか。」
「いやいやいやいや」
 龍驤と葛城が止める。

「龍驤先輩、予想以上ですね・・・」
「以上っちゅうか以下っちゅうか・・・
 チハタンほどもあらへん、バイクの陸王くらいしかないわ、こいつらっ・・・て、あれ」

 そこには大和の46cm三連装砲が浮かんでいた。
 大和がいたずらっぽい笑顔で立っていた。
 武蔵はその美しい顔を大和に向けていた。さも感心したように。

「えーい!いっちゃえー!」
「姉者やるなあ、流石だ。」

 どおおおおおおーーーん!
 爆音と衝撃波に吹っ飛ばされた龍驤と葛城は空中で一瞬顔があった。
「チャリやった!」
「チャリでした!」

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