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パリオリンピック女子バスケットボール備忘録[酔狂自己満籠球備忘録#31]

パリオリンピックのバスケ女子日本代表について、いつものように自己満で語ります。
やっと書きました。
読んでいただけたら嬉しいです。


1.はじめに

読者の方々が、果たして僕のことをどのように認識してくれているかはわかりませぬ。
「こいつ誰だっけ?」程度に思ってる人が殆どだと思うので、この記事を書くにあたってとても重要かつ避けて通れない要素をひとつ明確にしておきたいと思います。
僕は熱狂的な恩塚亨ファンです。

かといって、全てを肯定するつもりはありません。
金メダルを目標にしながらかすりもしなかった。どこかに大きな問題があったことは否定できない。

で、今日書きたいことは、べつに恩塚さんを擁護したり讃えたりという一方的なものではなく、ただ僕自身が恩塚亨氏と日本代表のたたかいを見てきて思ったことと、そして今後の日本女子バスケへの期待です。

自分としては、次の4年も恩塚さんに託してほしい、と思っています。
引き出しはまだまだあるはずだし、全然違うロスターもありえるから、そういうのも見てみたい。
恩塚亨はこんなもんじゃないはず。他に誰がいるんだよ、くらいに言いたいです。
しかし、だな。
しかし、結果はしっかり受け止めるべき、という考えもあります。
ヘッドコーチだけの問題ではないぜ、と強く言いたい気持ちはある。
でも負けは負け。ここはいったん区切りをつけるべきかな、と。

もし交代ということであれば、自分の乏しい知識で考える後任候補、というか希望は、マリーナ・マルコヴィッチか、萩原美樹子さんですね。

2.金メダルを目指す日々


「なにがなんでも金メダルだ!」という生き方は、なかなか苦しいものです。
と、今回のオリンピックで、いろんな競技のいろんな選手を見ていて思いました。
「最低でも金メダル、最高でも金メダル」という流行語が昔ありました。
なかなかリスクがありますね。
金メダルしかないわけないんです。「金メダルしかない!」って強く思いすぎちゃうと、そこで終わっちゃいますね、金メダルを獲れたとしても、獲れなかったとしても。
そういう人生は果たして幸せなのかな、と考えたりします。

当初からパリオリンピックの金メダルを目標に掲げていた恩塚さんは、同時に「なりたい自分になろう」と選手たちに語りかけていました。
東京大会銀メダルのプレッシャーから解放しようという狙いもあったと思います。
結局最後にそのプレッシャーを感じる結果になってしまったことは残念でしたが。

2021年のオリンピックで銀メダル。
2022年のワールドカップで日本は惨敗。
前年のオリンピックで銀メダルを獲って、前評判は決して低くなかった。
世界は徹底的に日本を研究して潰してきました。

東京オリンピックの銀メダル。
日本は世界の強豪の仲間入りを果たした。
そのときは僕もそう思ってましたよ。舞い上がっていました。
しかしワールドカップの惨敗で確信しました。
日本は強くない。
東京五輪からワールドカップにかけての勢力図に関しては日本が変わったのではなく、世界が変わった、という印象です。
世界が1年で劇的にレベルアップした、というか、オリンピックは無観客の自国開催で日本がかなり有利だったことを認めないわけにはいかない(選手たちの努力を軽んじるつもりはありません)。

そして銀メダルを獲ったことによって、世界にとっても日本は「マークしなければならない相手」になりました。
世界の強豪は日本をスカウティングして、日本用のたたかい方を準備してきて、その結果として日本が惨敗したのが、2022年のワールドカップでした。

3.ワールドカップ惨敗からのストーリー

したがって今回のオリンピックは僕の勝手な見方では、2022年ワールドカップ惨敗からのストーリーと捉えていました。
この惨敗により日本は、リオデジャネイロ五輪の頃までと同様、「オリンピック出場権を争うボーダーライン上のチーム」という、もともとの立ち位置に戻ったと思いました。

つまりチームが目標に掲げていた「パリオリンピックで金メダル」の可能性は、ゼロに近いくらいに難しい、世界はレベルが高いぞということを、ワールドカップの惨敗で痛感したのであります。
そしてそれは多くのファンもそうだし、実際に対戦したコーチ陣や選手たちも同じだったはずです。
しかし、ですよ。
銀メダルは、もうとっちゃったんですよ。
だから、「やっぱり目標をベスト8に変更します」なんて言うわけにはいかなかった。
そういう日々は、なかなかしんどかったのではないかと思います。

そんな中でも日本は最終予選を勝ち抜いて本大会出場を決めました。
惨敗したワールドカップから、高さを捨てたラインナップを組み、ツーガードを主流として。
アジリティとスリーポイントに振り切ってオリンピックの出場権を勝ち取った最終予選のたたかいは、この3年間でいちばんのハイライトでした。
そこからのさらなる進化が本大会でいまひとつ見られなかったのは残念だったけど、とても難しいたたかいだったはずの最終予選を勝ち抜いたという事実は高く評価されるべきだと思っています。

4.戦術あれこれ

恩塚メソッドを否定できるだけの知識を持ちあわせていないので、この項はサラッと書いて終わりたいと思います。

・オフェンスは、もっと個の優位性を活かして、スピードで1対1を仕掛けてほしかった
ドイツ戦の後半で宮崎早織選手のアタックが効いてた場面が多々ありましたが、宮崎選手はすぐ交代になってしまいました。
恩塚メソッドでは個の優位性は否定していない。
すぐに交代になってしまったのは、そういうたたかい方を準備していなかったからだと受け止めました。

・ディフェンスは遊び心がほしかった
ドイツ戦は相手エースに想定以上にやられてしまいましたが、ディフェンスのシステムが大きく変わることは最後までありませんでした。
ひとりの選手にやられても他を止めれば勝てるという考えだったと思います。
たとえば赤穂選手や宮澤選手を相手エースにフェイスでつかせるなどの遊び心というか、そういうのも見てみたかったなと思います。
そういうディフェンスを出さなかった理由は、そういうたたかい方を準備していなかったからだと受け止めました。


・リバウンドはもっとチーム全体でとりにいく姿勢が見たかった
最終予選でもリバウンドは課題となりました。
あの時は準備期間が短かったこともあって、リバウンドは捨てていたような印象もありました。
本大会に向けては当たり負けしないように体をつくって臨んでくるのかなと思ってたんですけど、そういう感じでもなかった。
リバウンドの数では3試合とも圧倒的に負けました。
恩塚メソッドでは、リバウンドをとれない原因は高さではないはず。従ってこの結果はまったく言い訳はできない。
赤穂ひまわり選手の随所のオフェンスリバウンドなど良い場面もたくさんありました。が、リバウンドに関しては個で頑張るということ以外にあまり策がないように感じられたことはすこし残念でした。
いつもヴィッキーズを見てるからそう感じたのかもしれませんが。

・スリーポイントの成功率40パーセント以上は、どんな状況、どんな相手であろうと達成するための想定と準備が必要
成功率40パーセントは世界のトップレベルでは驚くような数字でもなくなっています。
サイズのない日本は絶対にクリアしなくちゃいけないラインだと思います。
厳しくチェックされたらそこをかわしてレイアップなりゴール下を狙うということに、理論上はなっていたはずなので、それでも決めきれなかったのは、想定が甘かったか、準備が足りなかったか。


5.ロス五輪とその先に向けて

3年間の集大成として臨んだオリンピックで惨敗し、世界との実力差が明確になりました。
采配や人選がどうとかいう問題ではないと感じてます。
誰がヘッドコーチで誰を選んだとしても、同等か、もっと厳しい結果になったはず。僕はそう思っています。

間違っても「4年後にもういちど金メダルを目指す」なんて言わないでほしい。
組織として、もっと長いスパンで世界との差を埋めて行くことを考えるべきで、あと4年でどうこうなるものではない。
もちろん、1戦1戦チャレンジする中で期待以上の好結果が出るのは良いことだと思いますが。

「2040年のオリンピックで金メダル」
そのへんが妥当ではないかと勝手に考えました。
2040年のオリンピックで金メダルを目標にして、ここから積み上げていってほしいというのが、個人的な願いです。
Wリーグ以外見てない自分が言うのもなんだけど、ユース世代の代表メンバーを見ても高身長で期待を持てそうな選手は多くはないようなので、今の小学生世代の伸びしろに期待するのが賢明かなと考えました。
というわけで僕の願望は、「2040年のオリンピックで金メダル」。それに向けて、若いビッグマンや180以上のシューターがどんどん育ってくる未来。

2038年のワールドカップを誘致して、そこで金メダルってのも良いですね。


ところで、「大きくて速い選手が必要」という恩塚氏のコメントが物議を醸しました。
そこだけ切り取るのも違うと感じますが、バスケは身長が高い方が有利だし、この考えは当然だと思います。
恩塚さんが理想としている大きくて速い選手がいなかったから、スモールラインナップに振り切って挑んだオリンピックでした。
批判もあるようですが、大きな意義のある挑戦だったと思います。組織全体で今後に活かしてほしい。

PG 馬瓜ステファニー
SG 奥山理々嘉
SF 赤穂ひまわり
PF 渡嘉敷来夢
C 梅沢カディシャ樹奈

オーバー180ジャパン。
こんなメンバーも見てみたい。

ただビッグマンオンリーの選考になってしまうと、小さい選手たちが希望を持てなくなってしまうおそれもありますね。
ポイントガード大国なので競争も激しくなります。
代表選手じゃなくても、夢や希望を与えられる存在になれるよ、というところを示したい。
リーグの活性化と、裾野の拡大に期待したいです。


6.Wリーグに望むこと


将来、WNBAのようなプロリーグを日本で観たいと思っている。
これはずっと言い続けていきたい。
Wリーグプロ化論者としてこれからも僕は語っていきますぜ。

それはまあ置いといて、このオリンピックの結果を受けて、とにかくすぐにやってほしいと思ったのは外国籍枠の緩和ですね。
留学生+アジア枠で2、その他に外国籍1、オンコートは合わせて2、でどうだ!

国際試合は短期決戦なのに、高さやフィジカルに対応するのに時間とエネルギーを使いすぎているのがもったいない。
男子大学生と練習試合してたって実際の感覚とは違うさ。
普段の練習やリーグ戦からそれを体感できるメリットは大きいです。

長年、男子代表が歩んできた道と同じように、日本人ビッグマンのプレイタイムが失われる問題は当然起こりうる。
だけど本当にすごい選手はどんな環境だろうと突き破ってくるよ、と言っておきたい。
そして、多様性を認め合いたい時代に、いつまで鎖国してるんだい?って話でもありますね。

知ってますよ、日本リーグ時代は女子にも外国籍枠あったんです。
それを撤廃して日本人ビッグマンに実戦経験の機会を増やしてきた歴史がある。その集大成が東京2020の銀メダルだと思ってもいます。
だけどさらに上を目指すんだったら、当然そこはぶっ壊していくべきだろう、と思うんです。世界はものすごい速さでレベルアップしていきますからね。

もちろん海外で活躍する日本人選手が増えればそれでも良いのだけど、Wリーグが進化して活性させていくことも当然不可欠だし、単純に、もっと面白いリーグが観たい、という個人的な願望でもあります。

7.恩塚亨の1076日


「勝たなければいけない」
「金メダルをとらなければいけない」
「笑顔でプレーし続けなければいけない」
「バスケで日本を元気にしなくちゃいけない」
そんな「ねばならないバスケ」は誰も見たくない。
結果が出なかったことで、そんなふうにも見えてしまったことがとても悔しい。
果たして選手たちはオリンピックを楽しめたのか。

「東京で銀メダルはとったけど、世界はさらにレベルアップしてる。私たちは常にチャレンジャー。先を見ずに1戦1戦出し切っていこう。」
きっとそういう話はしていたはずなんだけど、それはもっともっと、我々に届くくらい強く語られるべきだったかな、と、何様でもないけど思う。
オリンピックになると、オリンピックしか観ない人たちが湧いてきて、無責任な期待をしますね。
そういうものに押しつぶされてしまった感じが拭い去れないのが、とても残念だし悔しいんだよな。

恩塚氏が強くこだわってきたマインドセットは間違っていたのか。
最後はファン全開で語ってしまうけど、そうではないと思いたい。
そもそも実力差がありすぎたので、勝敗に関してはマインドがどうこうの問題ではないですね。

もし、選手たちが今回のオリンピックを楽しめていなかったのだとしたら、それは前回大会で銀メダルを獲ってしまったことに起因しているとしか思えない。
それをプレッシャーに感じる必要なんてなかったし、ディフェンディングメダリストとして受けに回る必要もなかった。
そういう話はチーム内でしていたはず。だけどそれは簡単に払拭できないくらい大きなものだった。
と、いうのが、今回のオリンピックの感想です。



パリオリンピック3試合目のベルギー戦が2024年8月4日。
恩塚さんが実質的にヘッドコーチに就いたのは2021年のアジアカップからでした。
その強化合宿がスタートした2021年の8月24日から、1076日のたたかいでした。
果たして続くのか、これで終わるのか。

いろんな見方があるけれど、僕は自分がファンであることを差し引いても、恩塚さんの3年間の功績は、日本のバスケの未来にとってとても大きいと思っています。
本気で勝ち筋を見出して本気で挑んだ日々の価値を、次に繋げてほしいです。

そしてただの恩塚亨ファンとして、これからも恩塚亨さんの人生を応援していきます。


今日もありがとうございました。

最後に1曲お聴きください。
Mr.Children 『GIFT』

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