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白夜

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ノールケープの岬では、みんな、静かに沈まぬ太陽を眺めている。深夜2時。太陽は灰色の中空に浮かんだまま沈もうとしない。最北端を示す標識がある。北緯71度10分21” 秒東経25度47分40。“ついに来たぞ”日本語の落書きをみつける。6月20日、バイカル湖からすでに3週間経過していた。旅に出ると自由がどれほど大事なことかわかる。レニングラードからフィンランドのヘルシンキに到着したときの快感は、晴れ渡る北欧の夏空も加わって、味わったことのない開放感を今でも覚えている。40年たっても70年たっても世界では紛争が続く。争いは絶対なくならない人の性、生き物の性のようだ。旅人は国境をこえ、行きたいところにゆきたい。見たい所に行く。好きなときにゆく。国境も、宗教も、経済も政治も旅人には関係ない。唯一旅人が世界を解放に導く。旅人が増えれば増えるほど自由が広がって行く。開かれた旅人の時代が来たと思うといつの間にか去って行く。残念ながらこの繰り返しだ。自由はいい。ただ危険もとなりあわせだ。自由は自己責任を要求する。旅人は危険に勝利しなければならない。いま、太陽が1日中沈まない白夜の空をみあげている。4か月にわたって白夜は続く。そんな景色も、次に暗黒の冬が来る。極夜と呼ばれる。私はここには住めそうにない。


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