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ドラゴンズ選手層再確認〜どうなるトレード補強&ドラフト戦略?!野手編

前回の投手編に引き続き、前半戦のドラゴンズの成績から7月末のトレード補強の有無や、ドラフト戦略について考えていきたいと思います。前回の投手編はこちら↓

今回は野手編です。前回更新からだいぶ時間が空き、後半戦ももう14試合も消化しておりますが、あくまで前半戦の成績を元に考えていきます。継続的に記事をアップするには、やはり体調管理は大切ですね・・。前半戦の一、二軍での打席数を球団から各選手への「投資」と捉え、ドラゴンズの選手層と補強ポイントについてnoteしていきます。野手37人をポジションごとに「捕手」、「内野手(一、三塁)」、「内野手(二遊間)」、「外野手」の4つに分けました。

杉山・桂論争に代表される若手捕手の充実。補強よりむしろ「選択と集中」がカギか

まずは捕手から。青い棒グラフは一軍での打席数、オレンジの棒グラフは二軍での打席数になります。左から年齢順に並べています。

捕手は育成の藤吉合わせ全員で8人。うち30代は武山のみでした。今季一軍では主に第三捕手として登録されることが多く、あくまで杉山桂のバックアップとして試合途中からの出場のみのため、ほとんど打席には立っていません。一方二軍ではスタメンマスクをかぶることもあったようですが、こちらもメイン起用は多くはありませんでした。

29~25歳のレンジではまず杉山・桂の成長が目立ちます。昨季途中から併用されてきた同い年の二人ですが、前半戦の全試合ではこの二人のどちらかがスタメンで起用されてきました。勝負強く打撃に分がある杉山と、リーグトップレベルの高い守備力が売りの桂と、くっきりと特徴の別れた二人の熾烈なレギュラー争いはドラゴンズファンのみならず注目に値する点です。前半戦は杉山の起用が多かったものの、交流戦あたりからは桂の出番も増え、杉山桂論争はまだまだ続きそうな気配です。

一方二軍では、松井雅と木下の二人が出場機会を分け合っている現状です。松井は打つ方はからきしですが、守備面では一定の評価を得ています。木下はルーキーながら3割近い打率に3本塁打も記録するなど打撃型。奇しくも一軍のレギュラー争いさながら特徴がくっきりと別れた二軍の正捕手争いとなっています。松井は後半戦から一軍に帯同し、武山に代わり第三捕手としての役割を果たすこととなりました。木下は一層二軍での出場機会が増え、プロの水に慣れていく段階かと思います。同じレンジの赤田は怪我で出遅れたのもあり、捕手としての出場機会は限定的。一塁での出場や代打での出場が多く、28歳ながら一軍でマスクをかぶる経験もほとんどないとなると、伸び代はあまり期待できないか。

24歳以下では加藤と育成の藤吉の2人。ともに途中出場がメインでなかなか捕手としての出場機会に恵まれません。球界でもトップレベルとされる強肩が持ち味の加藤は、まずは二軍で守備面をアピールすることで出場機会を増やしたいところです。

捕手は杉山・桂といった若い捕手が一軍で実績を積み、レギュラーとして日々レベルアップしています。また一軍での出場機会は限られていますが、経験ある武山や松井雅、昨年の社会人No.1捕手木下と人材は豊富で、かつ年齢も若いメンバーが揃っています。捕手という1人しか一度に出場することができない出場機会が限られたポジションでは、多くの選手をロースターに抱え一度に育成するのが非常に難しいのは承知の事実かと思います。個人的には昨オフの木下3位指名ですら大いに疑問を投げかけたくらいで、捕手は多くても7人、6人でも十分だという風に考えます。若い有望な選手に出場機会を優先的に与える意味でも、少なくとも今年の捕手補強はありえないのではないでしょうか。あるとすれば余剰戦力の刷新で、三十路が迫りながら一軍経験に乏しい赤田は濃厚、ベテラン武山の放出ですら十分考えられるかと思います。杉山・桂を中心に、木下を加えた「選択と集中」がなにより捕手の編成には重要だと考えます。

打力重視の両コーナー。「周平頼み」から脱却する次の一手を打つべきか

一、三塁をメインで守る選手は全部で6人。打撃力が要求されるポジションだけに外国人が守ることが多いポジションでもあるため、二遊間と比べると日本人選手の数はあまり多くはありません。35歳以上のベテランは森野ただ一人。今季は開幕から不振で、守ってはサードでエラー連発と攻守に精彩を欠いています。最近では代打での出場が主ですが、打率.133と残念な成績なのが辛いところ。福田に高橋周が台頭してきたいま、晩年の立浪のような代打屋稼業をこなせないと引退の線も濃くなってきたか。

30代の選手はおらず、29~25歳のレンジは福田、ビシエド、石川の3人。ビシエドは不動の4番ファーストに君臨し、福田は高橋の怪我で回ってきたチャンスを生かし現在一軍で活躍中。石川は福田がサードのレギュラーに定着する前に一度プロ初の一軍を経験しましたが、当時二軍で打率3割越えの好調さを発揮できずノーヒットで二軍落ち。以降は調子を落とし二軍でもなかなか存在感を発揮できておりません。

24歳以下はルーキー石岡と「竜の未来」こと高橋の2人。石岡は腰痛で出遅れましたが、二軍では主にファーストやDHでの出場機会を得ています。左利きのため内野手としての出場よりも今後は外野手での出場がメインとなるかと思いますが、今だ練習中なのか外野手としての出場は二軍でもないはずです。身体能力に優れた選手なので、まずは怪我を完治させた上で5ツールプレイヤーとして花開けるか。高橋は2011年のドラフトで3球団競合1位で入団した期待のホープ。彼の入団後は徹底してポジションのかぶる同年代のサードを獲得せず、二軍でも優先的に出場機会を与えられてきました。その「選択と集中」が実り今季前半ついに大器の片鱗を見せましたが、5月に右手骨折の影響で登録抹消。先日ついに復帰も、三振を量産しまだまだブランクが大きいように感じます。復帰後は全試合サードでのスタメン起用が続きますが、低調が続くと福田とのレギュラー争いが再燃する可能性も十分にあります。

打撃重視の両コーナーは、ビシエド(外国人)がファースト、サードを福田と高橋で出場機会を分け合う形となっており、比較的若い選手ながら一軍でも結果を期待できる悪くない状況であると言えます。一方で前述した高橋優先起用の弊害か、サードをメインで守れる若手選手がほとんどおらず、パンチ力に乏しい二遊間の選手が守ることが多い点は問題です。石川も二軍では両コーナーを守ることが多いですが、本来はセカンドとして入団したはず。下位打線で二軍のポジション穴埋めに一、三塁を守る姿を見ていると、昨オフに入団2年で戦力外となった藤澤がフラッシュバックしてあまり気持ちのよいものでありません。福田・高橋に覚醒の兆しが見えた今こそ、ドラフトでは優先順位は低いですが強打のサードを獲得すべきだと考えます。高橋と同世代の大学生、もしくは高校生でも良いのではないでしょうか。落合GM体制以降は下位指名で高校生を獲ることはないでしょうが・・。年齢構成的にも、高橋の「プランB」としても、次の一手は必要です。

小粒で決めて欠く二遊間。堂上に続くレギュラー候補の獲得が急務

続いて二遊間。30代手前の選手を中心に、比較的全世代バランスよく選手を獲得している印象です。35歳以上のベテランは荒木ひとり。前半戦では序盤から好調でしたが、47打席連続無安打のセリーグ記録に並ぶなど急失速。後半戦はベンチに控えながら途中出場がメインとなっています。

34~30歳のレンジではエルナンデスと谷の2人。エルナンデスは一軍、二軍とも一定数以上の打席数を与えられていますが、これは彼の出場機会が他の外国人選手に依存するため。先発ローテにバルデス、ジョーダンなど2人必要な際は二軍で調整し、先発ローテに余裕がある際は一軍でスタメン起用されていました。谷は二軍で無双するなど打撃力が買われ一軍に抜擢されると、しばらくの間スタメンで勝負強い打撃を披露。しかしこちらも荒木同様失速し、一軍と二軍を行ったり来たりのエレベーターボーイに逆戻り。もはや伸び代も期待できませんが、彼以上に期待できる若手選手の名前もなかなか挙がらないことが、チームの二遊間の層の薄さを象徴しています。

29~25歳のレンジではやはり堂上の活躍が目立ちます。開幕当初は内野のユーティリティとしか考えられていなかったのが、打撃開眼と堅実な守備で一気にベンチの信頼を獲得。レギュラーとして打席数を与えるにふさわしい選手に成長しました。対照的に、昨季から続くレギュラーとしての期待に応えられなかったのが亀澤と遠藤の二人。特に遠藤は開幕3番ショートとして今季谷繁ドラゴンズのひとつの目玉でしたが、やはり経験のない2年目選手にはプレッシャーだったか。ショートのポジションだけでなく持ち前の長打力も失い、谷・亀澤と共にどんぐりセカンド軍団の仲間入りとなってしまいました。個人的にはセカンド転向という目先のコンバートよりも、守備負担の少ない外野で打撃力を生かす方向性の方が、本人にとっても良かったのではと思います。ルーキー阿部は怪我で出遅れた影響で二軍での打席数もそこまで多くはありません。ただ好調時の固め打ちは特筆すべきものがあり、堅実な守備と共に好調時は一軍に引き上げてみたい選手です。

24歳以下では溝脇の二軍での優先起用が目立ちます。主にセカンドを守り、打順も上位を打つなど首脳陣の期待の大きさが表れています。守備走塁に光るものを見せる一方で打撃面はまだまだ一軍レベルになく、それが彼を二軍に留めているボトルネックとなります。打撃でもう一皮剥けない限り、二軍優先起用枠すら失うのももう間近か。2014年にトレードで加入した三ツ俣は、昨季は二軍のショートのレギュラーの座を掴んでいたものの、今季は一軍のユーティリティに転身。一時緊急時の捕手も任されるなど若くして便利屋の座に甘んじています。

二遊間を守る内野手は、ショートのレギュラー堂上と出場機会が限られる助っ人エルナンデスを除くと、荒木含め飛び抜けたレギュラー候補がいないのが現状。谷、亀澤、遠藤と決め手に欠き、ルーキー阿部や若い三ツ俣・溝脇もまだ一軍レベルにないなど、一軍の打席を投資するに値する人材に乏しい、選手層の薄さが辛いところです。最優先課題である先発投手と同様に、上位で二遊間を守る即戦力内野手の獲得が必須でしょうか。今オフのドラフトでは、大学ショートBIG2と呼ばれる日大・京田陽太、中京学院大・吉川尚輝の大物二人に注目です。

レギュラー流出に備え、若手に出場機会を!ベテラン外野手のお役御免が先決?

最後に外野手の分析に入ります。ほぼファーストでの出場が続くビシエドを除き、外野手登録されている選手は総勢14人。うちほぼ半数となる6人が30代以上で青グラフの割合が多いのを見ると、他のポジションより経験豊富な選手への負担が大きいポジションと言えます。

35歳以上は育成選手の多村を含めて4人。多村は入団当初は二軍で動ける姿を見せれればすぐ昇格する見込みでしたが、蓋を開けてみれば怪我での離脱。育成選手との支配下登録の切り替えは7月末までなので、現在も実戦復帰が叶わない多村の今季中の支配下登録は絶望的と言ってよいでしょう。満身創痍に見えますが、本人は来季も育成選手として現役続行希望とのこと。今季ほぼレフトのレギュラーを守り抜いているナニータは、守備でのマイナスをシュアな打撃でカバーすることに成功。ムラはありますがチームの貴重な得点源となっています。藤井、工藤の両ベテランは代打・代走・守備固めをこなす一軍の控え。昨オフ国内FA権の行使に悩みに悩んだ藤井は前半戦大不振に陥り、レギュラー奪取の好機を生かすことができませんでした。工藤は昨オフの戦力外候補筆頭から今季は攻守に目覚ましい活躍を見せています。

残る30代は野本と大島の2人。野本は昨季一軍での出場機会がほとんどなく、戦力外濃厚と囁かれていた立場から一転、代打の切り札として活躍。しかし好調は続かず、一ヶ月以上ノーヒットが続いた後に二軍降格となりました。守備走塁のツールに欠ける分、こちらも森野同様代打の切り札として突き抜ける道しかもうないでしょうか。大島は不動のセンターとして攻守に活躍。ややムラがある打撃にフロントの評価(というか批判?)が集中しているように見えますが、守備での貢献は球界トップクラスの声も。センターでの守備力があと何年持続するかは一考すべきですが、生え抜きレギュラーの彼を正当に評価し、17年オフのFA流出に備える必要があります。(*報道では16年中にFA件を取得するという話がありますが、個人的には制度上ありえないのではと考えています)

29~25歳のレンジは6人。人数は多いものの、前半戦一軍で活躍したのが今オフ国内FA件取得の平田のみと寂しい状況です。松井佑、古本、友永の3人は二軍でも優先的に打席数を与えられていますが、一軍切符を勝ち取るほどの信頼感はまだ得られていないようです。怪我と不振で出場機会を減らしてしまった赤坂と井領は、後半戦の奮起が求められます。

24歳以下は今季開幕時は育成選手だった近藤と渡辺の2人。うち近藤は持ち前の長打力でアピールし、前半戦終了後に支配下登録を勝ち取りました。左打者の多いチームの外野陣において不足がちだった右のスラッガー候補は、ドラフトを待たずして近藤に白羽の矢が立ちました。8月に入り早速一軍切符を勝ち取ると、プロ初出場初安打。さらに猛打賞まで重ねて、父親譲りの衝撃デビューを果たしました。ルーキー渡辺も1年目ながら、二軍では比較的多くの出場機会を与えられています。直近のライバルは同じ左打者の古本や井領、友永らとの競争に勝ち存在感を高めていけるかどうか、です。

一軍でのレギュラーがほぼ固定されている外野手は、その脇を埋める控えの選手として30代以上のベテラン選手が配置されることがほとんどでした。結果として若手選手の出場機会が奪われ、今オフの平田、来オフの大島流出に備えた出場機会の「投資」が十分に行われていないのが現状です。考えられる対策としては現在藤井や工藤が担っている控えの役割を近藤、友永らに渡し出場機会を与えることと、ベテラン勢を脅かす即戦力外野手の獲得を行うかの二択があるかと思いますが、個人的にはまず前者に取り組むべきと思います。「使った分だけ育つとは限らない」というのは若手選手の優先起用のジレンマでもありますが、一方で「使わないと育たない」のも事実です。まったく育成期間を必要としないままレギュラーを勝ち取る選手はほんの一握りで、ほとんどの選手は一軍と二軍での行ったり来たりの中から試行錯誤を繰り返し、本当の実力を得るのだと思います。広島独走で優勝がかなり厳しくなった今、ベンチには若手選手の起用増を望みたいと思います。彼らの働き次第では、今オフの即戦力外野手獲得の優先順位も変わってくるのではないでしょうか。

ドラゴンズ選手層まとめ:先発と二遊間が特に手薄。今オフのドラフトでは上位3巡目までに確実に補強したい

以上前半戦の成績を基に、ドラゴンズの選手層を俯瞰してみました。今季中のトレードはもうなくなりましたが、改めて今オフのドラフト戦略について以下のようにまとめたいと思います。

ドラフト優先順位:
先発投手>>二遊間>>>一三塁=外野手>>>中継ぎ>>>>>>捕手

先発投手: QSが期待できる日本人投手が若松大野吉見小熊の4人しかおらず、即戦力の獲得が急務。上位3巡目までに少なくとも2人は即戦力の先発投手を獲得したい。

二遊間: ショートのレギュラー堂上、ベテラン荒木に続く選手の伸び悩みで選手層の薄さが顕著。上位3巡目までに即戦力となる大型内野手を獲得したい。

一三塁: 高橋・福田の台頭があるも、次の世代の獲得が必要。中位〜下位で将来性に期待できるロマン砲を獲得したい。

外野手: 現在在籍している若手外野手の将来性をどう見るかにより、ドラフトの優先順位が変わってくる難しいところ。獲得するなら中位〜下位で平田の後釜に右のスラッガー型外野手を獲得したい。

中継ぎ: 若く質量ともに充実した選手層を抱えるため、ドラフトの優先順位は低い。下位で即戦力となる、大卒・社会人の投手を1人程度獲得するくらいか。

捕手: レギュラー併用で結果を出している杉山桂に加え、昨年社会人No.1捕手の木下が控えるなど十分に層は厚い。武山、赤田に育成の藤吉も戦力外にするようならドラフトでの指名もあるが、優先順位はもっとも低いか。


シーズンも早いもので100試合を消化し、CS出場に向け大事な試合が続きます。我らがドラゴンズは後半戦直後の失速で優勝争いからは完全に脱落した感がありますが、今後は来季以降も見据えた戦い方が必要になるのではないでしょうか。今週末には夏の高校野球も開幕しますし、10月のドラフト会議に向けてより一層、ドラゴンズの戦い方には注目していきたいと思います。

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