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屋根屋さん

あれから10年にはならないと思う。
チャイムに応答して
外に出ると作業着の男性がいた。
「ちょうど裏で屋根の工事をしています。」
「どうもお宅の屋根は漆喰が傷んでいるようです。」

あー。知ってる。

「ちょうど工事のハシゴがありますのでよかったらちょっとついでに無料で点検しますよ。」

えー!
めんどくさくてほったらかしにしていた。
いいのー?!
「いいんですか?気になってて。」

男性は会社の名前が入った作業着をチラッとみせて
連絡用に我が家の電話番号を聞くと
「ほなまた明日来まっさ。」
と帰って行った。

こんなラッキーなことあるんだ。
嬉しくて旦那に電話した。

「へぇ!じゃあさ、うらの物干しの波板の屋根も一緒にみてもらえよ。大風のときちょっとあやしいんだ。」

「わっかりましたー!裏で工事してるっていってたからちょっと行ってくる!」

いいことばっかし♪
私は裏の通りを見に行った。

あれれ?


どこも工事していない。



もう一本裏かな?



だーれもいない。




あれれ?詐欺かな?

どうしよう。
名刺も何にももらってない!


消費生活センターに電話しました。
「どうされました?」
「いや、まだどうもなってないんですけど。」

「…。ちょっと調べてみましょうか。」
私は作業着に書かれた名前を思い出して伝えた。

しばらくして消費生活センターの人が折り返し連絡をくれた

「県内ではなかったんですが大阪の方で同じ会社名がありました。ちょっとトラブル多いみたいです。お断りしたほうがよさそうですね。電話番号を伝えましょう。」

「まだ騙されていないですし、本当にうちの漆喰はちょっとはがれているので、もしかしたらいい人かもしれません。でも断ったほうが良さそうですね。電話番号をお願いします。」

「…ちょっとあなたそんなことでは断れなさそうですよ。」
「よければこちらで断りの電話を入れます。それでいいですか?」

「それではよろしくお願いします」

しばらくしてまた電話がかかってきた。屋根屋さん。
「消費生活センターから今さっき電話ありました。疑われて残念です。でも本当に屋根の漆喰傷んでます。点検して下さい。」なんか悔しそうな声だった。

「本当に傷んでるのは知ってます。ちょっとね、裏に探しに行ったけどいなかったのと、名刺も何にももらってなかったのが引っかかってしまいました。点検するようにしますね。ありがとうございます。」

私は電話を切った。

多分いつもは詐欺なんだと思う。
ただ、今日は本当に役にたつ仕事ができたと思って嬉しかったんじゃないかな。この人は。

悔しそうな声がそんなことを私に考えさせた。
けどまぁ、ちょっとゴマカシスタートは良くない。
私も残念だよ。
普通に名刺くれたら
良かったのになぁ!

以来あんまりインターホンがなっても、見知らぬ業者さんがモニターにうつっていたら、外にはでないことにしている。

なんのはなしですか

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