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水タバコの思い出

アメリカ同時多発テロ事件の後
世界には「ちょっとイスラム教ってよくわかんなくて怖いかも」って空気が蔓延してた。

そんなある日、サンちゃんから電話がかかってきた。

「久しぶりー!元気?新しく見つけた店でちょっと行ってみたいとこあるんだけどさ。飲みに行かない?」

サンちゃんは酒豪の女友達だ。
こたえはもちろんYES!
行くに決まってる。

「どこ行くの?」



「トルコ料理屋!」



サンちゃん…今ですか?




私はそう思ったけど
言い出したらきかないのが
サンちゃんだ。


それに世界三大料理のトルコ料理を
私は食べたことがない。
これを逃せばいつ食べられるかわからない。


「わかったー🩷」



小綺麗なお店だった。
なのに911の影響でお店は貸切。
私たちは心ゆくまでトルコ料理とお酒とおしゃべりを楽しんだ。


何を食べたかは何にも覚えていない。美味しかったことだけを覚えている。


サンちゃんは物知りで、おしゃべりそれに興味津津ガールだ。おまけに物怖じしないので、サンちゃんについてゆくとちょっとヒャッとすることはあるけれど、今日はこの店にこれて良かったなと私は思った。



そしてお店のご主人がデザートを持ってきてくれた時のこと。

いい感じに酔ってるサンちゃんは口を開いた。


「お料理とても美味しかったです。ところで911のテロリストについてどう思われますか?同じイスラム教徒として。差し支えなければ教えて下さい。」


「マジですか?」
私はびっくりした🫢。


でもさらにびっくりなことにお店のご主人は
椅子に座って話し始めた。

「よくぞ聞いてくれた!」

そんな感じである。


911とイスラム教は直接関係ないのになんとなくイスラム教自体が嫌厭されている空気は確実にあった。
それでも宗教の話はタブー。
誰もが巧妙に避けていたその話題をサンちゃんは質問した。
実はこれはお店のご主人にとってとても嬉しいことなんだった。


彼の話すのは辿々しい日本語であったけれども
とても情熱的だった。


イスラム過激派のテロリストのやっていることはイスラムの教えのコーランにはどこを探しても書いてないこと。
宗教の話題がタブーみたいになってるから誰も聞いてくれなくて、こちらから話しても変だし、この質問が嬉しかったこと。
お店も商売あがったりで、食材店などの仲間も困ってること。
とにかくコーランを一度読んでほしい。誰が読んだって何も悪いことは書いていない。


サンちゃんはそれをきいて、なんか例え話をしていた。知らないまんま、いろいろ決めつけるのは無責任だ。怖かったらめんどくさがって目を逸らさないで、ますますじっとみなくちゃいけないみたいな感じ。


私は酔っていたのであんまり覚えてないけど、今日来て良かったなと思った。
異国の地において理解してもらえるチャンスがないというのはキツイ。お店のおっちゃんがここで話せるのはいいことだ。例え私達2人がなんの権力も持たない人間であってもだ。


熱心に耳を傾ける私達を
おっちゃんは気に入った。
そして空になったデザート皿を下げて水タバコを二つ持ってきた。

とても嬉しかった気持ちを
表現したい。
是非これを吸ってください!


これ断ったら
おっちゃん
ガッカリするやつだ!!


私達は水タバコに
挑戦することにした。


ゴクリ



水タバコはタバコというよりは
アロマの蒸気を愉しむものだった。

思い込みっていけないなあー。
そんなことを象徴する
水タバコを心ゆくまで味わって
私達はその店を去った。


なんのはなしですか

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