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話の続きがききたくて

「あのサー。私ちょっと行ってみたい店あるんやけどそこでいい?韓国料理の店なんやけどなんか美味しそうな気がするって旦那といってるねん。そのあとちょっとお洒落な若者の集いそうなバーにでもいったらええやろ。どんなん来るかわからへんし、久しぶりに美味しいもの食べて喋ろうよ!」

先輩がおっしゃった。

「わかりました。お願いします。」


そして私は韓国料理を4人で食べていた。久しぶりにあう酒豪の先輩夫婦と、あと先輩の旦那さんが会社で見つけてくれた彼女のいない男性と。

これと言った特徴のない人だった。
質問したら応える。
ただこのような場所で仕事の話をしないのは珍しい。
こちらにも聞かないし、あっちも言わない。

こちら3人はちょくちょく顔をあわせているのでこの人緊張してるのかな?そう思った私は聞いてみた。

「休日は何されてるんですか?」

たいていゴルフとか映画鑑賞とか「へー」ってなるやつだ。

「姪っ子に会いに毎週実家に帰ってます。」

「?!」
私は驚いた。平和すぎないか??

あとはなんにも覚えていない。

ただ最後のシメの石焼きビビンバの焦げたご飯をとるのがうまかった。

どこも欠点はなかったけど、特別どこにも惹かれなかった。
片道2時間かけては付き合わないだろうなと思った。

ただこのように人を紹介してもらったあとは、マナーとしてメールなどで数回はやりとりするものだ。

あとは仕事で忙しいなどとのらりくらり「こちらも残念感」を繰り出してゆけば失礼なくフェードアウトできることを私は知っている。


やれやれ。月曜日から残業だ。
家に帰って
私はお礼メールを作成した。

ザ⭐︎定型文+残業でお礼が深夜になったお詫び。

エイ 送信📤

返事が返ってきた。

「大丈夫です。出張で移動中なので起きてました。昨日はありがとうございました。」

なんか短いな。仕事出してきたぞ。ちょっとめんどくさい。これで終了していいのかな。よくないな。

「それは良かったです。どんなところですか?」📤

「泊まる宿には犬がいて、自動ドアを自在に操るネコもいます。」

?!

「ユニークな宿ですね!」📤

「浴衣は靴の柄で、ベッドは小さくて足がはみ出ます。」

?!

「変わった柄の浴衣ですね。そんなの見たことないです。面白いです。もっと他には何かありますか?」📤

「最上階に大浴場があるので、朝入ることにしています。階段を登っていくのですが、階段にはホテルの家族の洗濯物が干してあります。そして大浴場に入ると子どもが入っていることがあります。」

?!

「それはそのホテルの子どもなんですか?」📤

「わかりません。」

「ちょっと、明日また子どもがいたかどうか続きを教えて下さい。」📤

「わかりました。おやすみない。」

「おやすみなさい。」📤


どうしよう?ネコと犬と子どもとホテルと全部気になって眠れん!!

友達でもない人からこんな話聞くのは私はじめてだった。

かくして私はもっと面白い話はないか3日にわたって彼にメールをし続け、(勤務時間が全くよめないので全部メール!)ヘンテコなホテルにむちゃくちゃ詳しくなった。読めば読むほどおかしなホテルだ。

4日目に出張先から帰ると書いてあって私はメールを送った。

「新幹線からの乗り継ぎ駅で
ご飯でも食べませんか」📤

問題はこれといった特徴のない彼の顔を全く覚えていないことだった。

とても短い時間だったけど
私は彼の話を生で聞けたことが
大変嬉しかった。

その夜私がきいて心に残ってる話はこうだ。

新幹線の中で、隣の紳士が弁当🍱を食べはじめた。
それは秋の味覚弁当だった。
紳士はいかにも美味しそうに味わいながら食べ進めていって
最後に栗の甘露煮を食べた。

「よし!」って思ったよ。
(俺も栗の甘露煮をデザートとして最後に食べると思ったらしい)

みつけたよこれが私の王子様🤴

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