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試行錯誤を繰り返した後に、最適解をみつける

答えのない世界で生きたことがない世代は、とにかく教えられた答えを覚えて吸収しようとする。学校で答えを教わる教育ばかりを受けてきたから、手探りで失敗を繰り返しながら答えを導き出す習慣がほとんどない。だから新聞に書いてある情報やテレビが流す情報を、すべて正しいものだと思い込んで覚えようとする。
                               -大前 研一

医療の世界は不確実であり、これをすれば絶対という治療はありません。
もちろん、医療の質を調べるためにエビデンスを構築をしていますが、確実性の高いと言われている治療、薬でも100%というのはなかなかないと思います。
そこに患者さん側の事情もあり、エビデンスをベースにしながら患者さんと医療の方向性を決める必要がでていきます。

以前、私は宗教上の理由で輸血を拒否されている吐血、胃潰瘍の患者さんを担当したことがあります。
貧血も進行しており輸血は必要と考えましたが、輸血は教義上できないと言われました。その場合は、患者さんの人生観を尊重して、内視鏡処置を念入り(止血処置後の内視鏡チェックを2回した)にして対応しました。

現在、患者さんとよく話し合い、医療のプロセス、ゴールを共同で意思決定することが増えました。
エビデンスベースのEBMは正解があり、受験をしてきた医師には親和性が高いですが、それに加えてNBMが重要になりつつあると最近は感じています。
NBM(ナラティブ・ベイスト・メディスン)とは、全人的なアプローチ手法とされ、以下は日本救急医学会のHP から引用しました。

NBM
Narrativeとは物語の意であり,個々の患者が語る物語から病の背景を理解し,抱えている問題に対して全人格的なアプローチを試みようという臨床手法である。NBMの特長として,①患者の語る病の体験という「物語」に耳を傾け,これを尊重すること。②患者にとっては,科学的な説明だけが唯一の真実ではないことを理解すること。③患者の語る物語を共有し,そこから新しい物語が創造されることを重視することが挙げられる。EBM(evidence based medicine)偏重時代の中で,NBMはEBMを補完するためのものであり,互いに対立する概念ではない。

エビデンスはすぐに情報を引き出せますが、物語は患者さんと対話しないと引き出せません。
抗がん剤治療・緩和ケアの治療をしていると、EBMだけでなく、NBMの重要性がますます高くなってきていると感じる今日此頃です。



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