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囲碁をやりたい人、強くなりたい人が参考にすべき囲碁教材(ブログ編その1)

こんにちは、碁バンジェリスト・羅王です。世紀末覇者の観点から、これからの囲碁界について、独断と偏見に基づいた話をしていきます。今日は、初心者から四段以下(低段者)までの人が囲碁を勉強するにはこれがよろしいんじゃなかろうかと思われる教材の、ブログ編です。

・・・の前の問題提起についてです。


囲碁のアバウトさについて

良い子の皆さんならすでにお分かりの通り、ブログは囲碁界変革のための最優先課題の一つです。プロ棋士、日本棋院、碁会所が囲碁界の三竦みであると私は定義していますが、まずもってこの「ブログ」という最高の武器に対して、あまりに主力三勢力が注力していないのが囲碁界の非常に大きな問題ではないかと私は考えています。

どういうことか?囲碁は、他のボードゲームに比べると、極めて感覚的な要素が強いゲームです。チェスの64マス、将棋の81マスに対し、囲碁はなんと361マス!もあります。つい最近まで、コンピュータ(AI)が人間に勝てなかったのもうなづけるほど、局面が多彩で複雑なゲームなのです。なので我々アマチュアとは次元の違う緻密さを誇るプロでも、「なんとなくこの辺かなー」、「だいたいこんな感じ?」、「(局面が)わかりません」といった「アバウト」な言葉を普通に口にしたりします。

もちろん、一応の「棋理」のようなものはあり、これは正しい形である、あるいはこの打ち方は形勢が悪くなるからやめておけ、といった格言があるにはあるのですが、全体としては前述の通り(良い意味で)感覚的でありアバウトなゲームです。このアバウトさが囲碁の深みの源泉であり、世界中に囲碁ファンが存在する理由でもあると思います。しかし一方ではそのアバウトさが、翻って囲碁普及の大きな障壁にもなっている、という点は把握しておくべき課題であり、見逃せない事実でしょう。


囲碁界のレジェンドの一人である趙治勲先生は、囲碁をこう表現したことがあります。

大人になってから碁を覚えて、一年で面白いと思えるようになれば、それだけで碁の才能がある

これは逆に言えば、大人ですら、囲碁の面白さを理解することは簡単ではない、ということになります。大人は子供に比べて論理的な生き物であり、自分の理解できることと理解できないことを、自分の中でロジックがつながっているか否かで判断することが多いです。囲碁はほんのわずかに存在するいくつかのルールを覚えたあと、「それではご自由にどうぞ」と言われて本番がいきなり始まってしまうゲームです。そこで重視されるのは、ロジックよりもアバウトな感覚です。よく分かっていないものをずっとハテナを抱えたままプレーする。これは大人にとっては結構ツライことであり、それなり以上に負担となります。結果、入門時点で挫折する人は、他のボードゲームより非常に多い、という問題が生じます。

子供の場合はどうかと言えば、事情が少し異なります。多くは親に半強制的に囲碁教室に連れていかれたり、その後しばらくは定期的に通ったりと、囲碁のルールを知って覚え、面白いと感じるまでの壁を他人の敷いたレールに乗ってふわりと超えていくことができます。子供はハテナを抱えたまま走り続けることに慣れており、囲碁のアバウトさや感覚性向といったものは、あまり彼らの成長の妨げになりません。日ごろから今の自分に理解できるものばかりに触れている大人と、日ごろから今の自分には理解できないものばかりに触れている子供の差は、特に囲碁道への入門時に大きく影響するのです。


囲碁界における言語化能力の欠如

さて、これらのことから言えることは何か?ですが、少し考えてみましょう。前述の通り、囲碁はアバウトなゲームであり、そのトッププレーヤーたるプロ棋士を始め、三竦み各位は多くの場合、囲碁を子供の頃からやっている、ということはほぼほぼ事実だと言って差し支えないでしょう。子供は言語化能力が大人より劣っており、「こんな感じ」とはっきりとした定義や線引きをしないまま物事を進めた方が、彼らは受け入れてくれます。

言葉で明確に定義せずとも、「こんな感じ」を100回ぐらい刷り込めば、感覚を身体知化していくのが子供の強みです。私が先日対局した5歳児は、言葉はほとんどしゃべれないものの、カラダに沁み込んだ「こんな感じ」を駆使し、私の石を20子ほどかっさらっていきました。ま、大人気なくやり返しましたけどね。(たぶん、遠からずプロの門をくぐる天才児なのではないかと思います。今のうちに勝ててよかった。。)


棋力という点に関してはこれで全然問題ないのですが、囲碁普及という面から見れば、実はこれは大きなダウンサイドです。囲碁に関わる主力選手たちが、みんな感覚でアバウトに囲碁を理解している。このことは、逆に言えば囲碁があまりロジックで言語化されていない(複雑すぎてできない)ことの証左であり、同時に囲碁界の人たちの言語化能力があまり発達していないと思われることの遠因でもあります。

もちろん、囲碁界にも様々な本が存在しており、対局の後には感想戦や検討り、物事を言語化する機会が、少ないわけではありません。中には話すのがとても上手な方もいます。それでも、多くの囲碁パーソンを見るにつけ、他の業界の人たちと比較すると著しく言語化能力には劣るなというのが、様々な業界を見てきた私の正直な印象です。(その分、脳内は一体どうなってんだと思うぐらい優秀かつ複雑です)

そのせいでしょうか?囲碁を言語化した生産物、すなわちブログについても、あまり理解しやすく面白いと思えるものを読んだ記憶がありません。詳しくはまたどこかで書きますが、脳内でどれだけ緻密な計算をして壮大な構想を描いているかといった知の質と、それがどのように言語化されて発信されているかは全く別の次元の問題であり、前者の質は後者の質を必ずしも担保しません。

ご参考までに、ブログとは異なりますが、史上最年少で名人位を獲得した芝野虎丸九段のインタビューを見ても、「史上最年少で名人位獲得という大事件」がどれほど凄くてヤバくてありえないことなのか、囲碁界以外の人にはほとんど伝わらないのではないかと思います。彼の頭の中には人類史上最高峰のスーパーコンピュータが搭載されており、常人が100年努力しても追いつけないレベルの傑物なのですが、じゃあそれがインタビュー越しに外界の人に伝わるか、というと、なかなか難しい。囲碁を少なからず知っている身としては、この飄々とした感じで偉業を成し遂げるところが、芝野九段の本当に恐ろしいところなのですが。(たぶん、今後10年は彼を中心に囲碁界が回るでしょう)


ブログを業務として義務化、なんてどうかしら?

話を戻すと、囲碁界の人はプロ棋士、日本棋院、碁会所の三竦み含め総じて物事を言語化するのがあまり得意ではなく、それが囲碁関連のブログの質や量にも表れている、というのが、私がこれまで短く浅いながら囲碁界を見てきて感じた課題です。情報化社会において、これはあまりに大きなハンデであり、囲碁普及を大きく遅らせる直接の原因にもなっています。

囲碁の面白さを、目の前の人に一生懸命伝えるのは、そんなに難しいことではないのかもしれません。しかしそれでは囲碁の価値を伝えようとするたびに直接顔を合わせる必要があり、それはビジネス的に考えればスケールしません。昔流行ったCMで、「英語が話せると10億人と話せる」というキャッチフレーズがありました。これを真面目に計算した奇特な人がいて、10億人と直接話すには、どれぐらいの時間が必要かと計算したそうです。曰く、10億人と話そうとすると、一生をかけたとしても、1人あたり2.5秒程度しか話せない、というオチにたどり着いたんだとか。

ブログなら、10億人に情報を届けることも、ワンエントリでできます。日本棋院の皆様におかれましては、プロ棋士、棋院本体、碁会所各位に、「囲碁の仕事したいなら全員ブログ書くべし」とブログを義務化するぐらいの勢いがほしいところなのですが、まぁなかなかそうはいきませんね。死活が苦手なら詰碁をしこたまやるしかないのと同様、言語化能力が足りないならばしこたまブログを書く以外にありません。(ちなみに、これもいずれ書こうと思いますがツイッターではよほど意識して頑張らなければ、言語化能力はほとんど磨かれません。ツイッターはあくまで情報伝達のいち有効な手段です。)


囲碁界は過去に比べてその競技人口を大幅に減らしており、そこにメスを入れてかつての隆盛を取り戻そうとするならば、囲碁という競技の言語化、囲碁界のトリビアあれこれに関する言語化、そういったことを成すための基礎となる言語化能力の強化が必須となります。そしてその生産物としてのブログは、業界全体の最優先課題と捉えても差し支えないほど重要かつ注力すべき「急場かつ大場」であり、一方で不思議なほど誰も注意を払っていない分野なのではないかと私は考えます。

・・・と、以上が業界全体にまつわる問題認識なのですが、当たり前のことながらこれは全体の傾向値に過ぎず、中には囲碁普及に寄与するだろうなと思われるブログを書かれている面々も何人かはいらっしゃいます。次回のエントリでは、私が知っている範囲のみですが、おすすめブログをいくつか紹介したいと思います。

なお、動画があるじゃないか、という意見については、私も同意です。ただ、動画は文章を代替するものではなく、相互補完の関係にあるものです。また、動画は動画ゆえに情報量が少なく、やはり多くの情報を搭載するには文章の方が優れています。(多くの人は、話すスピードより読むスピードが多い。また、話し言葉と書き言葉では情報の濃度が違う)よって、文章すなわちブログの存在意義は、やはり変わらずめちゃくちゃデカいと思うわけです。囲碁Tuberも出てきているので、それはそれで流行るかもしれませんが。


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