洗車プリペイドカードで売上アップを実現！実証研究が解き明かす「ストック効果」の威力
１．はじめに
洗車プリペイドカードは、顧客が事前に一定額を支払って購入することで、金額に応じた割引や特典が受けられるものです。この販売は、洗車収益が恒常的に上昇する効果が研究で明らかになっています。
洗車プリペイドカードをなんとなく販売するよりも、その効果を明確に認識しておくことで、販売力は高まります。そこで今回の記事では、この効果を明らかにした研究の内容と、効果的な販売方法について解説していきます。
これは、エステサロンなどの回数券、飲食店でのボトルキープなどにも当てはまるので、ガソリンスタンド以外の業種に携わる方にも参考になると思います。
２．イリノイ大学研究が解き明かす「ストック効果」の威力
2002年、イリノイ大学の研究チームは、消費者が製品をまとめ買いすることによる心理的な効果を解明する研究結果を発表しました。
この研究では、被験者を2つのグループに分け、それぞれ異なる数量の同じ製品を配布しました。
グループA：1回に1個の製品を配布
グループB：1回に10個の製品を配布
その後、被験者全員に製品の消費状況を記録するよう依頼し、8日間のデータを比較分析しました。その結果、1回に10個の製品を配布されたグループBは、グループAに比べて、2倍の速さで製品を消費していることが判明しました。つまり、多くの製品をまとめて入手したグループは、短期間でより多くの製品を消費していたのです。
この現象は、ストック効果と呼ばれる心理的なメカニズムによって説明できます。ストック効果とは、消費者が製品をストックしている状態にあると、使用機会を意識しやすくなり、実際に使用頻度が高くなることを指しています。
つまり、洗車プリペイドカードを購入していただくことは、洗車のまとめ買いをすることになり、都度払いよりも洗車をする頻度が向上することが期待できると言えます。
このように洗車プリペイドカードは、ガソリンスタンドの経営にポジティブな影響を及ぼしますが、販売にあたり以下の留意点が挙げられます。
３．洗車プリペイドカード販売の留意点
（１）種類を多くし過ぎない
コロンビア大学ビジネススクールでマーケティング心理学を研究するシーナ・アイエンガー教授は、世界的ベストセラー「もっと大きく考えよう：なぜ人は選択に迷い、後悔するのか」で、人は選択肢が多すぎると、脳の情報処理が過負荷状態になり、意思決定が困難になってしまうことを主張しています。
ジャム実験と呼ばれる有名な実験では、店頭で6種類のジャムを並べた場合と24種類のジャムを並べた場合を比較しました。その結果、24種類のジャムの方が試食客の数は多かったものの、実際にジャムを購入したのは6種類の場合の方が多かったことがわかりました。
【24種類のジャムを並べた場合】
試食をした人の割合：60%
試食後に購入した人の割合：3%
全体の購買率：1.8%
【6種類のジャムを並べた場合】
試食をした人の割合：40%
試食後に購入した人の割合：30%
全体の購買率：12%
この実験は、選択肢が多いほど、人は購入を迷い、最終的に何も買わない可能性が高くなることを示唆しています。
ガソリンスタンドで洗車プリペイドカードを販売する場合は、カードの種類をあまり多くせず、せいぜい3つ程度に絞ることが効果的と言えます。「松竹梅の法則」に基づいて、一番売りたいプリペイドカードを真ん中に配置する構成が理想的です。
（２）割引率を高くし過ぎない
あるガソリンスタンドでは、2,200円分の洗車プリペイドカードを2,000円で、また、5,500円分のものを5,000円で販売していました。ですが、洗車収益を向上させようと、2,200円のプリペイドカードを1,000円で、5,500円のものを2,500円で販売しました。
【2,200円分】→定価2,000円のところ、1,000円で販売。
【5,500円分】→定価5,000円のところ、2,500円で販売。
これにより、多数の顧客が洗車プリペイドカードを購買し、数枚まとめて買う顧客もおりました。
結果として、同店の当月における洗車収益は一気に跳ね上がりました。ですが、翌月・翌々月と洗車収益が向上しません。なぜなら、洗車プリペイドカードの残高がなかなか減少せず、新規購入が促進されなかったからです。
このように、割引率を大きくしすぎると、その場は売れても消化が進まないことになります。よって、割引率は高くとも20％程度に留めておくことをお勧めします。
４．まとめ
今回の記事では、実証研究に基づいて、洗車プリペイドカードが、ガソリンスタンドの経営にもたらすメリットを述べました。ただし、販売時には、種類や割引率に注意することが必要です。これによって、より効果的に顧客を獲得し、売上をアップすることが期待できます。
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