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学習塾が経営課題の解決に経営革新計画を活用した事例

1.学習塾の経営課題とは


 少子化が進む中、新型コロナウイルス感染症の拡大は、学習塾の経営をより厳しいものにしてしまいました。コロナが第5類になった今でも、生徒の確保が厳しい学習塾は多いのではないでしょうか。

 多くの学習塾は教室を活用して対面で講義を行います。ですが、メインとなる塾生は学生であることから、平日夜や週末に教室の稼働が集中し、平日日中は教室が遊んでいるケースがほとんどです。

 教室の稼働率に関わらず、家賃は毎月一定額がかかりますので、平日日中の稼働率をいかに向上させるかという点は、学習塾の経営課題のひとつとして挙げられるでしょう。

 この記事では、もともと英会話教室だった学習塾が、平日日中限定の英会話で実施するカルチャー教室というテーマで経営革新計画を策定し、経営課題の克服に取り組んだ事例をご紹介します。

2.この記事で学習塾の事例を取り扱う理由

 弊社は、埼玉県川越市で経営コンサルティングを提供していますが、そのコンサルティングのメニューには、行政の中小企業支援策のひとつ「経営革新計画」の策定支援があります。

 これは新規事業の計画であり、都道府県の審査を経て、承認を取得することによって、銀行の低利融資や補助金の審査で有利になるなどの特典を得ることが出来る制度です。

 これは、全都道府県で実施されている制度であり、以下のリンクは、全国で一番承認件数を輩出している埼玉県の当制度紹介ページです。

 弊社はかつて埼玉県内の商工会から要請を受け、ある学習塾の経営課題解決のために経営革新計画を策定したことがあります。この記事では、多くの学習塾の経営に革新をもたらすヒントとしていただくために、この事例をご紹介することにしました。

3.同社の概要

 同社は、20年前に代表が自宅で地域の子どもに対して英会話を教え始めたことが、起源となっています。これが高い評判を得たことから、徐々に業容を拡大し、現在では英会話だけでなく、幅広い科目で中学・高校を受験する生徒をサポートしています。

 同社も平日日中の稼働率をいかに上げるべきかという経営課題を抱えており、地域の商工会に相談へ行ったところ、専門家派遣制度を利用した経営革新計画の策定を提案されました。これは、商工会の会員であれば、商工会が派遣した専門家を無料で活用しながら、経営革新計画を策定することができるというものです。

4.経営革新計画の内容

 商工会から要請を受けた弊社が作成をご支援した経営革新計画の内容は概ね以下となりました。

(1)現状

 計画書には自社の現状を盛り込みましたが、その主な内容は①企業の基礎情報や経営理念などを説明した「会社概要」、②内部資源や外部環境の分析結果を示した「現状分析」の2点です。

 特に現状分析において、代表者の持つ高い英会話能力に基づく日本在住の外国籍人材との人脈が豊富であること、20年に及ぶ事業展開によって地域における知名度が高く、代表者と同じ立場の母親との人脈が豊富であるという強みを盛り込み、これを活かした取組みを計画化しました。

(2)目標

 同社は、売上高や利益といった数値で表すことのできる定量的目標、「このようになっていたい」という数値で表せない定性的目標という2種類の目標を盛り込みました。

(3)新規事業の内容

 同社は、地域の主婦や高齢者など平日日中に時間の取れる方をターゲットとして、英会話のカルチャースクールを実施することとしました。これは、ヨガ、体操、ダンス、料理などのアクティビティを英語でレクチャーするものです。

 受講者は英語力がなくても、講師の動作を真似るだけで各コースをマスターすることができ、楽しみながら英会話に触れることで、自然と英語力を向上させることができます。このアプローチにより、平日日中の教室稼働率が向上するだけでなく、受講者の子どもや孫が同社運営の学習塾に通うきっかけとなり、生徒数の増加も期待できます。

 なお、これらアクティビティの講師は、代表の人脈を活用して依頼することが可能です。

 同社はこのような新規事業をテーマとした経営革新計画を策定し、県の審査を経て、承認を得ることが出来ました。これにより、アイデアレベルで新規事業を立ち上げるのではなく、現状分析、目標・課題設定、新規事業の具体化、マーケティング、売上利益計画、資金繰り計画といった内容が明確になり、戦略的な取組みが可能となりました。

5.学習塾が経営課題の解決に経営革新計画を活用した事例のまとめ

 この事例からわかるように、学習塾が直面する経営課題を克服するためには、自社の強みを活かした新たな事業モデルの導入が有効です。同社は、平日日中の教室稼働率を向上させるために、主婦や高齢者をターゲットとした英会話カルチャースクールを立ち上げました。

 また、経営革新計画を策定し、県の承認を得ることで、戦略的かつ計画的に新規事業を進めることができました。経営課題に直面している企業の皆様にとっても、この事例が新たな取り組みのヒントになれば幸いです。ぜひ、自社の強みを見極め、戦略的な経営革新に取り組んでみてください。

 なお、今回の記事を踏まえ、新規事業に取り組みたい方は以下のリンクからお問い合わせください。弊社ホームページのお問い合わせフォームへ移動します。


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