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顧客との信頼関係で地域貢献!ガソリンスタンドのSWOT分析に基づく新たな取組みの事例

1.戦略の基本的な考え方:SWOT分析とは?


 実行不可能な取組みや、実行できても効果が薄い取組みを防止するためには、自社の現状を把握し、それを踏まえた取組みを立案する必要があります。現状を分析するための考え方は様々ありますが、基本的なものとしてSWOT分析があります。

 これは、下図のように強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を洗い出した上で、それらに基づく取組みを検討する考え方であり、それぞれの頭文字をとってSWOT分析と名付けられています。

 以下では、SWOT分析で洗い出す各要素の内容について見ていきます。

2.SWOTの内容

(1)内部環境

 企業の内部環境は以下の経営資源から構成され、強み(Strengths)は好ましい経営資源、弱み(Weaknesses)は好ましくない経営資源の状況を指します。

  • 人的資源:経営陣や従業員の経歴・キャラクター・保有している資格、従業員の数など

  • 物的資源:店舗の立地や敷地面積、品揃えやサービスの豊富さなど

  • 財務的資源:借入の余力、内部留保など

  • 情報的資源:受発信している情報の質と量、保有しているノウハウなど

(2)外部環境

 企業の外部環境のうち、機会(Opportunities)は自社を有利にさせる追い風であり、脅威(Threats)は自社を不利にさせる逆風です。外部環境は様々なものがありますが、最低限、顧客動向と競合動向は押さえておく必要があります。

  • 顧客動向:商圏人口、購買行動、顧客ニーズなど

  • 競合動向:競合の数、戦略、規模など

3.SWOT分析のポイント

 SWOT分析は、これらの要素を洗い出して現状を把握し、有効な取組みを策定することに役立てますが、多くの場合、強みと機会を活用する取組みを構築します。そのため、弱みと脅威は捉え方によって強みや機会にならないかという観点から洗い出します。

 例えばガソリンスタンドにおいて、立地が悪くて客数が少ないという弱みは、1台1台に時間をかけた丁寧な接客ができるという捉え方をすれば、強みになり得ます。また、新型コロナウイルス感染症の拡大を脅威と捉えた事業者もいれば、オンライン通販の機会を得たと捉えた事業者もいます。

 なお、洗い出した弱みを克服する方向で戦略を検討する場合は、次の点に留意する必要があります。

 弱みは競合よりも劣っている経営資源なので、それを克服して成果を出すには、いったん競合のレベルに追いつき、そこから追い越す必要があります。これに対して、強みを活用・強化する方向はすでに差別的優位性を構築しているので、競合に差をつけやすいと言えます。よって、弱みの克服よりも成果が出やすいと言えます。

 これらを踏まえて、新たな取組みを見出したガソリンスタンドの事例をご紹介します。

4.そのガソリンスタンドのSWOTとは

 今回、事例としてご紹介するのは、顧客との信頼関係を活かした新事業で地域貢献を目指すガソリンスタンドです。同社は1店舗展開で、創業30年近くが経過しようとしていました。経営者は4代目で、従業員は3名であり、現状は以下となっていました。

【強み】

  • 多様な車両メンテナンスに対応できる技術力があること

  • 多くの既存顧客情報を把握していること

  • 顧客との信頼関係が構築されていること

【弱み】

  • 収益性が低く店舗改装や設備更新に充てる資金捻出が困難なこと

【機会】

  • 近隣の競合はセルフサービス店に転換した結果、車両のメンテナンスサービスが不得手になっている

【脅威】

  • 燃料油の需要が低下しており、価格競争が激化している

5.SWOT分析に基づく戦略

 同店は、長年培ってきた技術力と顧客との信頼関係という強みと、競合が車両のメンテナンスが不得手になったという機会を活かし、既存顧客へ電話によるアプローチをすることにしました。

 電話では、洗車やタイヤ交換などの車両のメンテナンス状況を伺い、引き取り・納車サービスの積極的な展開に乗り出しました。それに加え、電話時や訪問時に把握できた情報を踏まえて、自宅補修や庭の草むしり、チケット代行などのカーライフ以外の困りごとにも幅広く対応しました。

「自宅まで来てけるのさね」

 この取組みのポイントは、顧客との信頼関係を基盤とし、単に油外商品の御用聞きをするだけでなく、生活での困りごとを丁寧に聞き取り、対応する点です。

 この新事業は、地域住民の生活を支える存在を目指し、ガソリンスタンドの新たな可能性を示すものと言えるでしょう。

6.まとめ

 本記事では、ガソリンスタンドが顧客との信頼関係を活かした新事業で地域貢献と収益向上を目指す事例を紹介しました。

 この事例から、以下のことがわかります。

  • SWOT分析は、自社の現状を把握し、強みと機会を活かした有効な戦略を策定するのに役立つ。

  • 顧客との信頼関係は、新たな事業展開の基盤となる。

  • 地域住民のニーズを把握し、カーライフ以外のきめ細やかなサービスを提供することで、地域貢献と収益向上を両立することができる。

 ガソリンスタンドに限らず、あらゆる企業にとって、SWOT分析は経営戦略策定の重要なツールとなります。自社の強み、弱み、機会、脅威を正しく把握し、それらを活かした戦略を策定することで、持続的な成長を実現することができるでしょう。

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