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ガソリンスタンドのアルバイトスタッフが危険物の資格を取得したくなるモチベーション向上方法

1.アルバイトスタッフが危険物の資格を取得するメリット


 乙種第4類危険物取扱者とは、ガソリンスタンドで販売する商品を取扱うために必要な国家資格です。消防法では、一定数量以上の危険物を貯蔵し、または取扱うガソリンスタンドなどの施設には、危険物取扱者を置かなければならないとしています。

 ガソリンスタンドにおいて、この資格は正社員が保有しており、アルバイトスタッフは保有していないケースが多い印象があります。ですが、アルバイトスタッフがこの資格を持つメリットとして、以下が挙げられます。

  • 店舗の営業を任せることができるため、正社員の負担が軽減される

  • 危険物の取扱いに関する知識や技能が向上することで、安全性や信頼性が高まる

  • スタッフ自身のキャリアアップに繋がる

「あたしは危険物の『四角』を持っているのだが。。。」

 とはいえ、ガソリンスタンド業務を本業としていないアルバイトスタッフが、この資格取得に挑むことは、以下のハードルがあります。

2.資格取得のハードル

 一般社団法人 消防試験研究センターによると、令和5年4月~令和6年2月の乙種第4類危険物試験の合格率は31.9%となっており、決して広き門とは言えません。

「なかなかのハードルだのさ」

 また、本業がある中、アルバイトをしながら試験勉強をすることは、時間的にも精神的にも大きな負担となります。そのため、スタッフが危険物乙4試験に合格するためには、高いモチベーションが必要となります。

 では、どのようにしてスタッフのモチベーションを高めることができるでしょうか。

3.アルバイトスタッフの資格取得が相次いだ事例

 7:00~23:00まで営業していたあるガソリンスタンドでは、正社員だけが危険物乙4の資格保有者でした。彼らが早番として朝7:00~16:00、遅番が13:00~23:00まで勤務し、忙しい時間帯にはアルバイトを配置するシフトを組んでいました。

 ただし、20:00以降は油外商品がほとんど売れない状態でしたので、正社員を20:00までのシフトとし、20:00以降の運営はアルバイトスタッフに任せることにしました。

「あとはお任せします」

 そのためには、アルバイトスタッフが危険物乙4の資格を取得する必要があります。そこで、店長はこの資格を取得する以下のメリットをアルバイトスタッフに訴求しました。

  • 資格を取得するための教材費や受験料は全額会社が負担すること

  • 危険物乙4の資格を取得すれば、優先的にシフトに入れること

  • 閉店業務を任せることができれば、時給がアップすること

  • 20:00以降の店舗運営に関する権限を与えること

 これらによりアルバイトスタッフのモチベーションが向上し、危険物乙4の資格を取得する方が相次ぎました。このことは、モチベーション理論のひとつであるマズローの欲求段階説で説明できます。

4.マズローの欲求段階説とは

 マズローの欲求段階説は、アメリカの心理学者アブラハム・マズローによって提唱された理論であり、人間の欲求を以下の5つの段階に分けています。

「5つの段階な」

1. 生理的欲求:生命を維持するために必要な欲求で、食事や睡眠、性欲などが含まれます。これは最も基本的な欲求であり、満たされることで次の欲求段階へ移行します。

2. 安全の欲求:安心して暮らすことや身の危険を守ることへの欲求です。事故や災害から身を守り、経済的な安全も含まれます。

3. 社会的欲求(所属と愛の欲求):集団の一員でありたい、社会から必要とされたいという欲求です。愛情もこの階層に含まれます。

4. 承認の欲求(尊敬の欲求):誰かに認められたい、尊敬されたいという欲求です。自己評価と他者からの評価の両方が含まれます。

5. 自己実現の欲求:理想の自分になりたいという欲求で、個々の能力を最大限に発揮し成長することを目指します。

 前述の店長が示したアルバイトスタッフが危険物乙4の資格を取得することによるメリットは、マズローが提唱したこれらの欲求に対応しており、アルバイトスタッフのモチベーションを向上させたと考えられます。以下で詳しく見ていきましょう。

5.資格取得のメリットと欲求段階の関連

  • 危険物乙4の資格を取得するための教材費や受験料は全額会社が負担することにより、「2.安全の欲求」が満たされていないスタッフへのモチベーションに対応できたと考えられます。金銭的な負担というリスクのない状態で、危険物乙4の資格を取得することができるためです。

  • 危険物乙4の資格を取得すれば、優先的にシフトに入れることにより、「2.安全の欲求」「3.社会的欲求」「4.承認の欲求」が満たされていないスタッフへのモチベーションに対応できたと考えられます。優先的にシフトに入ることが出来れば収入が増加し、また、会社から必要とされていることを認識できるためです。さらに、優先的にシフトに入れることは、資格未取得のスタッフからは一目置かれるためです。

  • 閉店業務を任せることができれば、時給がアップすることにより、「2.安全の欲求」「3.社会的欲求」「4.承認の欲求」が満たされていないスタッフへのモチベーションに対応できたと考えられます。時給がアップすれば収入が増加し、そのことは会社から必要とされ、認められた結果と解釈できるためです。

  • 20:00以降の店舗運営に関する権限を与えることにより、「4.承認の欲求」「5.自己実現の欲求」が満たされていないスタッフへのモチベーションに対応できたと考えられます。会社から自身が認められたからこそ、店舗運営の権限を与えられたと解釈できるからです。また、正社員に頼らず自分の力で店舗運営をすることで、自身の成長を実感することにもつながっていくためです。

6.まとめ

 以上のように、ガソリンスタンドのアルバイトスタッフに乙種第4類危険物取扱者資格の取得を奨励することは、彼らのモチベーションを高めるだけでなく、店舗の運営効率や安全性を向上させる効果があります。

 マズローの欲求5段階説に基づいた動機付け施策を導入することで、スタッフは自己実現やキャリアアップの機会を得られると同時に、会社全体としても信頼性や経済的な利益が向上するでしょう。このような相互利益を意識した取り組みが、持続可能なビジネス環境を構築する鍵となります。

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