仕事やめて音楽祭してベトナム行った

って書いたらこの三つに因果関係が匂うけどそんな事はない。色々変わった事もあるし、思考の整理も兼ねて。

仕事はなんとなくやめた。嫌なことがあったわけでもない、他にやりたいことが具体的にあったわけでもない。でも、だからこそ、自由意思が際立つってワケ。

そもそも「ぜんぶ芸の肥やし」みたいなメンタルで就職したし、「キャピタリズムを味見したれ」みたいな心境を30ヶ月間つとめて持っていたつもり。今となっては手段だったと言えないくらいの経験と友人が出来て、その作用っていうのは包摂や順応なんて机上で片付けて頂きたくはない、僕だけの何か。ともかく、「見てやめた」ってのは大きい。『普通の皆様』がコンプレックスにならない。ちゃんと一周回ってやめた感。会社員の生き方にも奥深いものがあるけれど。

最終出社日の五日後に、シェアハウス『珍黒砂荘』で音楽会をした。僕が練習した成果をお披露目したいというところから始まって、色んな人に出てもらった方が楽しいに決まってるってなって、みんな案外ノリノリで(※)数曲準備して演奏してもらったりして、蓋を開けてみると、初期衝動が形になっただけではたどり着けなかった多幸感のある一日となりました。
※そうなんですか?

自分のセットリストはこんな感じ
Opening. The Entertainer(→Pia-no-jaC←)
1. 花の歌(ランゲ)
2. 浅草キッド(ビートたけし)
3. オリオンビール(the moonymans)
4. Michelle(The Beatles)
5. Pianoman(Billy Joel)
Encore. 少年の歌(the moonymans)

分かりきっていた事だけど、人前で何かするの好きだな、好きだし得意だなって思った。音楽も好き。ピアノもギターも歌も芝居も、自分より上手な人はたくさん知っているけど、そんなの気にならないくらい好きな気持ちに自信がある。そう気付いたとき、小3の頃に女子に『ピアノ下手やな』と言われて以来勝手に囚われていた劣等感から勝手に解き放たれた。フハハハハ。

あと長姉が来た。幼少期の絶対的存在だった。僕がドハマりしていた「国名しりとり」では、『セネガル』で満足する僕に、『セントヴィンセント及びグレナディーン諸島』を繰り出し、『北朝鮮』では戦えない僕に、『朝鮮民主主義人民共和国』を授けた。学校で『イギリスの正式名称を知ってる人はいるか』と問う教師に『グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国!』で応えた教室の少年ヒーローのフィクサー。『たっくん歌下手やなあ』と言われたことは忘れない。そして今回『歌上手なったなあ』と言われたことも忘れない。なんだかんだ生涯かなわない。

GWは九日間ベトナムへ。東南アジアは過去二回セブに行ったくらいだったから何もかも新鮮だった。ハノイの交差点。600円の宿の洗面台が詰まってて使えなかったこと。ダナンの波の高さ。ホイアンで誰かが歌っていたシャンパンスーパーノヴァ。異音が鳴り響く電車。Lat Mat 6: Tm Ve Dinh Menh。案外英語喋れた。『誰か英語しゃべれる人はおらんのか!?』って言うとは思わなかった。フエでの原付の運転は久しぶりの臨死体験だったが、左折と直進のカオスの中でついにベトナムの一部になれた気がした。
これまでの海外経験は、常に楽しいよりも不安・不快が強く、『お金を払って何故これを?』とさえ感じていたけど、今回初めて心から海外が楽しかった。日本での生活が物足りなくなるほどに。新しいものにワクワクできる好奇心がまだ自分の中に残っていました。

そして今ニート生活。何でも出来る気がする、と、何にも出来ない気がする、の二極を自尊心が反復横飛びしているとでも言いましょうか。今自分にあるものに価値を見出だせない。甲子園を鳴らした怪物ルーキーがポテンシャルを発揮せず二軍で消えていくような進路をイメージするなどして。そもそも原動力が恨み、怒り、妬みとかしかない。簡単なこの文章ですら何度劣等感に言及するつもりなのか。『アイツを見返したい』と漠然と考えるが肝心のアイツがいない。まったく保守的で閉鎖的で他人の物差しでばかり価値を測る。怠け者で視野狭窄、短気で意志薄弱。強欲で尊大不遜。それを覆い隠す術にばかり真面目に取り組む。いずれ全て白日となって全てを喪って破滅、破滅という言葉がおこがましい、僕にお似合いのちっぽけな信用失墜を恐れる。
まあそういう思考に飲み込まれているのが今。とりあえずもう少しこの時間を。毎日決まった時間に起きるくらいから始めましょう。

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