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深層からの回帰


■天上天下唯我独尊、エデンの園(胎児の状態)
・母と子に存在する自然な共生関係。
・何物にも邪魔されない子宮内での生活は、胎児にとって理想に近い状態。
・酸素と栄養は胎盤を通じて供給され、老廃物もそれによって処理される。
・羊水によって騒音や衝撃から保護され、子宮内の温度は一定に保たれる。
・安心感や保護されている感覚が存在し、あらゆる欲求は努力なしに即座に 満たされる。

われわれが良い子宮の内部で体験する平和、静寂、平穏、歓喜、至福などといった体験と密接に関係している。日常的な時間と空間の感覚が消え去り、われわれは「純粋な存在」になるのだ。言葉ではこの状態の本質を伝えることはできない。ほとんどの場合、「筆舌に尽くし難い」とか、「言葉で言い表わせない」としか言いようがなくなってしまうのである。

また、「自我がない」という感じを抱くと同時に、意識が拡大して全宇宙を包含していると感じる場合もある。 われわれは自分自身の無意味さに打ちひしがれ、畏怖の念を感じると同時に、時には、神と一体になったと思われるほど、大きな達成感と尊厳を感じることもある。他にも、自分自身が存在すると同時に存在しないと感じたり、すべての物体が空虚であって、しかも空虚さ自体がいろいろな形態に満たされているように見える場合もある。
➡ スタニスラフ・グロフ「深層からの回帰」

■はじめての境界(誕生)
・子宮内の生活の終わりと子宮の収縮との遭遇。
・最初に子宮内の化学的変化に支配され、後に力学的な変化に支配される。
・周期的な収縮運動に伴い、胎児を守っていた世界全体が凝縮して胎児を押しつぶし、不安と身体的不快感を生み出す。
・収縮が子宮の動脈を圧迫し、胎児との間の血流を妨げる。(死の恐怖)

小説で読んだことのある別のイメージが頭に浮かんだ。フランク・バウムの 『オズの魔法使い』の中で、ドロシーをカンサスの単調な生活からさらい、不思議な冒険の旅へ送り出した旋風のイメージであった。彼は自分の経験が、『不思議の国のアリス』のウサギの穴に入っていくシーンと何かしら関係があることを疑わなかった。そして、鏡の反対側にどんな世界があるのか恐怖におののきながら待っていた。全宇宙が縮まって自分に覆い被ってくるような気がしたが、その破滅を予感させる吸引を止める術はなかった。

本当にはっきり産道が見えたわけではなかったが、彼は頭部と体中に圧倒的な産道の圧力を感じ、自分が出生プロセスに巻き込まれていることを体の全細胞で知った。人間には不可能だと思われる次元まで緊張が高まった。鋼鉄製の万力のあごに捕えられたかのように、額、こめかみ、そして後頭部に容赦ない圧力を感じた。身体の緊張は無慈悲な機械的性質も持っていた。 巨大なミート・グラインダーか、歯車とシリンダーがたくさん付いた巨大な圧搾機を通り抜けているような気がした。映画『モダン・タイムス』の中でテクノロジー世界の犠牲になるチャーリー・チャップリンのイメージが、脳裏をよぎった。信じられない量のエネ ルギ ーが全身を貫いて流れ、凝縮しては、爆発的に解き放たれているかのようだった。
➡ スタニスラフ・グロフ「深層からの回帰」

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